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偽りの満月


    ある日の夜…。未だ満月が顔を覗かせていた。昨日も満月。今日も…

    いや…

    この月は…

    満月なんかじゃ…


    「満月なんかじゃ……ない…っ」
    窓から差し込む月明かりを不審に思った文はカーテンを開け放った。その歪んだ月光に文は胸に痛みを覚えた。これは……偽りの満月っ!?
    「確認に行くしかないっ。行って来ます!」
    家から飛び出す前にそう叫ぶ。いつもの週間とはこんな時にも行ってしまうのか。そんな思いすら沸く事はなくその偽りの満月へ向けて飛び出した。

    「行くアテがなくなりました……」
    そんな呟きを吐いた瞬間、猛スピードで流れる風景に人影を捕らえた。リグルだった。そのリグルに話を聞こうとして虫たちが大量に壁を作り上げた。
    「……どっちに行きましたか?」
    その気持ちを察した文はそれだけ言う。
     暫く無言の時が流れた。それは1時間にも感じられたし1分に満たなかったようにも感じられた。月の影響とはここまで来るモノなのだろうか……
    「あっちにいるって言ってる……どうしても行くの?」
    「ええ。私は真実を伝る義務がありますから。情報、有難う御座います」
    壁向こうのリグルの声は間違いなく

    泣いていた

    常に笑顔を振りまいている印象のあるリグルが……である。彼女を倒してまで行かなければならない程急いでいる……いや……寧ろ、焦っている?
    「必ず…伝えますから……」
    それだけ言うと文はその場を立ち去った。
    「ごめん……」
    背後から聞こえた小さな声に力強く頷くと再び夜空へと飛び立つ。

    「この先って……きゃぁっ」
    文は背中から飛んできた飛来物に接触され、可愛い(?)悲鳴と共に地面へと吸い込まれた。


    「いつつっミスティアさん……大丈夫ですか?」
    文はスカートの砂埃を掃いながら飛来物であったミスティアに声を掛ける…。やはり……その声は沈んでいた。間違いない、この月の影響だ…。力の低い妖怪は多大なる影響を受けている…。気分が上がらない……偽りの月光…。そういえば自分も身体に違和感がある…息苦しいというか……。この嫌な雰囲気…。
    「大丈夫だから…どっか行って……」
    その静かな言葉…躁鬱病と言いたいその落ち込みように文は足を止めた。
    「大丈夫に見えないから言ってるんです。いつもの元気は?歌は?」
    「どっか行きなさいよ!それとも何?貴方も私の事を嘲笑いに来たの!?」
    文は…踵を返そうとしてやめた。同じ鳥族(?)なのも有ったが、何より彼女は一人だ。こんな時に一人にしたら大変な事になりそうである。いや、なるだろう。
    「莫迦言わないで下さいっ。人の気持ちも知らないで!!」
    文は押し倒すように抱きつくと言葉を繋げる。貴女を必要とする人たちもいる、と。しかし結果は変わらず…
    「でも私なんて独り善がりで…」
    「違うっ……。貴女ほど素敵な妖怪もいません。よく周りを見渡して下さい…貴女を必要とする目に気が付けるのですからっ」
    文自信困惑していた。言葉が思い浮かばない…重い通りの言葉が口から出ない。言いたい事と違う言葉が喉から発せられる…こんな想いは…久しぶりだっ。
    「……」
    ミスティアは泣きながら彼女を振り払うが…
    「ミスティア……。人間にもお前を必要としてる輩は多い。お前は立った一回弾幕ごっこに負けたくらいで落ち込むタマじゃあるまい。歌って元気をとりもどせ。そして、帰って来い…」
    「慧音さん……そうか…。この偽りの満月では…」
    慧音と呼ばれた少女がミスティアの腕を引っ張る

    「ここは人里…?何を……」
    文の科白に慧音は笑みを零しながら
    「あのやぐらと提灯で思い浮かぶのは?」
    文は相槌を打った。

    盆踊り

    「季節的に早すぎるが、こんな晴れた夜だ。偶には、な」
    慧音は輪に入るが文は入らなかった。真実を伝えるために…。


    その美しい歌声は…

    悲しさの中に秘められた…

    喜びの歌声だった…

    夜雀歌声を背中に受けながら…

    事件の終息をこの目で見るため…

    事件の真実を伝えるため…

    今日も事件の中心へと向かう…


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