日曜10時の独り言

― 近頃・・・・・・・近頃、ボーっとしてることが多い。
・・・え? それはいつもだろう、って? ま、そうだけどさ・・・・。でもなんか違うんだ、いつ もとは。
こう、世界が透明で、自分だけ不透明な存在でさ、なんか浮いちゃってるっていうか・・・ ・・そんな感じ。ん・・・・・逆でもイイや。とにかく、なんか が違うのよ、周りとあたしと。

 今、外は雨が降ってる。窓に様々な流紋を残しながら、雨粒が落ちていく。あたしは、 白いシルクのパジャマ着て、窓際に腰掛けてる。ちょっといい感じの出窓があるのよ、う ちに。で、いつもはアンセリウムなんておいて、ハートの影が床に映るのを楽しんでたり するんだけど、雨の日は鉢の代わりにあたしが座るの。カーテンもおしゃれにしたんだか ら。淡いピンクのレース、なんてちょっとロマンチックじゃない? ガラでもないけどさ。
― ・・・あっと、なんの話してたんだっけ。・・・そうそう、違和感があるって事よね。

   こんな雨の日は、窓際に座って色々考えちゃうのよ。だって・・・ヒマじゃない。ショッピン グだって行けないし、洗濯物だって干せないし。だから、10時くらいにゆっくり起きて、猫 の柄のマグカップに熱いココア1杯入れて、窓際に行っちゃうの。冬だってするわよ。寒く なったらココアすすればいいんだから。

― あーもーうるさいなぁ。私の話しろって言いたいんでしょ、分かってるわよ。今、心境 整理してるんだから、もうちょっとボーっとさせてよ。

 雨足が速まってきた。やっぱこうでなくっちゃ。しょぼしょぼ降ってるのなんて大っ嫌い。 だって、濡れようと思って外飛び出しても、思うように濡れないんだもん。そういう時はあ たし、白い木綿の服着てでてくの。裸足がいいんだけど、硝子刺しちゃたことがあって、 それからは白いスニーカーを裸足に突っかけることにしてる。すっごく気持ちいいわよ。
なんか、このまま自分が溶けてっちゃうみたいでさ。だから、本気で濡れないとダメ。髪も 服もべったりくっつくくらいじゃないと、そういう感覚味わえないの。あ、結構いい感じに降 ってるな。考え終わったらまたやろうかな。

― だからね。あたし、あいつと別れたんだ。上手くいってるつもりだったのにね。なんか ダメだったみたい。・・もちろん、こっちから振った訳じゃないわよ。だって、あいつ本当に お人好しでいい奴で・・・・結構気に入ってたんだから。

 あ、チャイムが鳴ってる。集金か何かかな。面倒くさいや、出ないことにしよっと。こんだ けひっそりとしてれば、人がいるなんて思わないわよね。・・・・ああもう、何回も鳴らさな いでよ。出ないことにしたんだから。あ・・・・今日の朝刊取ってきてないや。ドアのところ にささったまんまだ。あとで、訪問者が去ったらこっそり取りにいこっと。でも、こういう日 の新聞って嫌い。ビニールにくるまれてて、ちょっと湿ってて・・・・。なんか、最初の10分 くらい触る気がしないのよね・・・・。

― んー、だけどあいつの方でなんか気に入らなかったみたい。ま、仕方ないかななんて 思うけど・・結構好き勝手やらせてもらってたし。でも・・驚いたわよ、そりゃ。いつも通りに ちょっと遅刻していったら、なんか気むずかしい顔して待っててさ、珍しく怒ってんのかな って思ってたら“別れよう”ってさ・・・・・。顔には出さなかったけど・・・・それなりに予想外 だった。

 あー・・・ココアがおいしい。ココアってさ、簡単に見えるけど、結構難しいのよね。市販 の奴でも、砂糖入ってるのと入ってないのとあるじゃない? そういうの間違えると最悪 だし・・・難しいのはお湯入れる時よね。固まりになって、あとでスプーンでかき回したらど ろっとした固まりがのっかっちゃったり。あと、入れすぎて味が薄いのなんて使いものに ならないわ。濃けりゃクロワッサンに浸けて食べればそれはそれで美味しいけどさ。それ が嫌な人は、鍋で煮るみたいね。ご苦労様、ってかんじ。凝っちゃうと、砂糖入ってない の買ってきて、色々ブレンドしてみたりするって聞いたわ。美味しそうだけど、そこまで根 性ないなぁ・・・・。外国製のマシュマロ入ってる奴は、この前友達に勧められて飲んだけ ど、結構いい味してたな。

― もちろん、そんなことだけじゃあ、こんなに悩まないわよ。落ち込んでないもの。付き 合うって事はいつか別れるって事もあるんだし・・・・。あたしってちょっとドライなのよね。 なんか、なったらなったでしがみつかないタイプ。

 ああ・・・電話が鳴ってる。こんな時間にかけてくるなんて誰よ。サークルの先輩かなぁ ・・・彼女いなくてヒマだっていってたし。あっと、そんなこと言ったら、あたしの悪友のほと んどは彼氏がいなかったんだった。あいつらのうちの誰かかな・・・・・。でも、普通夜かけ てくるわよね、こんな真っ昼間なんてもっと別の事してるはず・・・。・・・・10回。親だった らどうしよう。仕送りの中身減ってたな。信用されなくなってきたかな? ま、信用されるよ うな事してないってのも、事実だけどさ・・・・。でも、家には帰りたくないな。せっかく東京 出てきたんだもん、あんな田舎ごめんよ。・・・・20回。・・・あいつ・・かな。かけてくるはず ないか。それに、あいつ短気だからもっと早くに切るわよね。・・・・30回。いつまで鳴らす つもりかな。・・・あ、切れた。

― ・・・・泣けなかったのよ、あたし。一滴も、涙なんかでやしなかったわ。それなりにショ ックだったはずなのに・・・・・あんなに好きだったのに・・・・。
いざこうなってみても、なんか受けとめられちゃったの、イヤなくらいにすんなりと。なんか さ・・・自分に驚いちゃった。で、笑いたくなっちゃったのよね。バカらしくって。泣けないあ たしが、とことんピエロに思えて・・・さ。感情無いのよ、あたしきっと。だから、今もこんな に無表情なんだわ。

 雨が降り続けてる。そろそろ夕飯作ろかっな。今日はビーフシチュー作るんだ、ことこと 煮込んで。だから今から作んなきゃ。猫のカップも空っぽになっちゃったし、ちょっと寒く なったし。ひとつ背伸びして立ち上がって、私の物思いの時間は終わる。また明日から の日常にとけ込むための儀式。今日はちょっと時間がかかっちゃったな。さてと・・・新聞 とってこよう。パジャマの上からエプロン着ちゃえ。なぜか雨の方に残してあった視線を 無理矢理キッチンに向けて、あたしは窓際を離れた。もう2度と窓の方を見ないようにう つむいて、小走りにキッチンに向かって。

― ありがとう、雨。泣けないあたしの代わりに泣いてくれて・・・・・

*終わり*

いかがでしょう?(^^;;) ちょっと今まで書いたことのない形式にチャレンジしてみました。
頭の中では結構案があったんですけど、今まで実行に移してませんでした。
自分的には気に入ってます。終わり方に悩んでしまったけど(苦笑)
これは是非是非感想欲しいなぁ・・なんて(笑)
ま、気が向いたら伝言板に書いてやって下さい(^^)

台本版を読む index