/>
「あ・・・」
茜色の空が
藍のベールを纏う
貴方と2人で見上げる
暖かさ感じながら
並ぶ椅子の所々
2つの頭がくっついて
大きな影が生まれている
全てがあくびをし始める
蒼く染まった雲
朝日の通り道に座り込み
貴方と私
あと少しで別々になる
/>
タロット
少し静かな夜
無意識に手が動く
今日も貴方のことを思いながら
タロットカードに触れている
想いは虚ろいやすいから
今出た結果が変わってないか
もう1度、もう1度と
夜通しでも占ってしまいそう
”死神”で泣きそうになり
”恋人”で苦笑い
”運命の輪”が出れば変化におののき
”世界”を見つけて嬉しいため息
3回占うと不幸になる
そう分かっていてもやめられない
意志を持つカードたちに
今日も不安定な未来を求めている
/>
手紙
手紙を焼いた
それは確かに大切だったはず
けれど
涙一滴でやしなかった
ぱちぱちとはぜる炎
照らされる無表情な顔
紙が身をよじってもだえている
私はそこから動けなかった
いつからだろう
昔は大切だったもの
泣いてまで探したもの
この手紙のように
みんなお気に入りでなくなっていく
私の周りにはなにもない
/>
雪
白い結晶が降る
人々の吐き出す毒を
浄化してゆく
凍らせる
白い結晶が降る
私の涙を あの人の叫びを
天空(そら)から引き戻す
目の前に突きつける
微笑むべきか
苛立つべきか
泣き笑いの顔をして
白に埋もれた空を見上げる
/>
コーヒー
琥珀色の水滴1滴
スプーンからこぼれ落ちた
溶けきれない角砂糖
海に沈む島のよう
雨上がりの公園を
横目で見つめて取るカップ
少し甘めの液体が
けだるい僕のガソリンになる・・・
/>
アルバム
”あのころって何から逃げてたんだろ”
アルバムの片隅
かつての私の鋭い視線に射抜かれて
そんなこと 思ったり
綺麗な過去も
殺伐とした日々も
セピア色のフィルター付きでしか
もう 見られないね
少し・・・・悲しいかな
昔の自分見つけたって
もうそれは別人で
ただ 明日に向かう’私’の
起動力になっていくだけ・・・・・
/>
風
風が 生きている
私に 語りかける
ささやく言葉で くすぐっていく
目を凝らせば見える色
何色になるのか
少し楽しみで
少し・・・・怖いね
優しく
私を包んで
迸る想い
運んでいって
あの人に・・・届くように
/>
ため息
気のせいかな
ため息の数
だんだん増えてきてる
綺麗になってるね 自分
いいことばっかりあっても
ここまできっと
綺麗になれなかったはず
そう思って 今のため息
飲み込まずに吐き出してしまおう・・・
/>
花
花が
欲しいの
足を切られた
虚しい美が
ほんの一瞬
輝いている時を
“私にちょうだい”
貴方の心が
花とともに枯れても
笑って
握りつぶしてあげるから
花が・・・欲しいの
/>
緑
窓から流れる緑
ガラス越しの美しさは
私を
のけものにして成り立っている
張り付いた両手が
うんと冷えても
離れられないでいる
見続けている
涙を流すだけの
瞳
緑を見つめても
緑になれない
/>
囁き
夜空の下
石段に一人
腰を下ろしている
藍色の空と
灰色の道は溶け合い
視線が
水平線になる
時が過ぎれば
灰色になる自分
静寂の囁きが
もうすぐ聞こえる
/>
豪雨
雨の中
能を舞うように
一人坂を登っている
頭の中
流れていく邦楽は
貴方の声で出来ている
こんなにも
俯きたくなること
思いもよらなくて
くっと口をつり上げる
空 見上げれば
わんわん泣き出す雨
私はわざと
唇をかみしめた
/>
絶対温度
霧雨に打たれる
冷たい無数の針が
私を覚醒させる
暖かい声のよう
1人 所在なく
夜の街を彷徨っている
身震いする
暑い梅雨時だというのに
どこかで狂ってしまった
私の温度感覚
きっと私は自分の狂気を
温度のせいにしている
“熱がある”と言ったら
あの人 笑ってこう言った
“絶対温度で考えてみな”って
(ああ そう言うことか・・・)
今なら思える
どこかで狂ってしまった
私の身体 すべて
今日も凍った瞳をしながら
絶対温度を探している
/>
宇宙(そら)の彼方
僕は
君の宝石を
宇宙の彼方に置いてきてしまいました
僕の宝石は
この惑星(ほし)にあるのに
僕の入れ物だけ
宇宙の彼方へ投げ捨てて
君は
君の宝石が
宇宙の彼方で僕のそれと
響きあっていると思うのだろうか
僕は
君の宝石を
宇宙の彼方に置いてきた
僕はきっと 後悔なんてしていない
/>
夕立ち
なんの足音かと思ったら
夕暮れ雨粒が
急ぎ足で帰るところだった
“早く土にもぐれますように
早く空へ昇れますように”
そんな囁きを聞きながら
私はゆっくり鞄を背負う
帰るところも見つけられずに
/>
アスファルト
真夜中のアスファルトは
転がった私を背中から
ひんやり冷たく
冷ましてくれる
いままで
心から立ち上っていた水蒸気
ふっと
目からの涙に変わる
この大地に
抱かれているのに
何を欲して
私は泣くのだろう
冷たいアスファルトは
その答えを知っている
私は耳を澄まして
その囁きを待っている
/>
私の言葉
こだわりが とれたのだろう
最近キレイになったねと
言われて微笑む
私と言葉
昔より 景色は
涙を流した分だけ鮮明に
笑った分だけ柔らかに
この眼に映る
私を包む
世界と私は
今急速に近づいているから
私の言葉は
きっと世界を描いていける
/>
のどあめ
1粒口に入れたときの
あの苦甘さは
くすぶった魂を
きっちり片付けてゆく
なめる前より
鮮やかに見える景色の中
私の体は
まだ灰色をしているけれど
吹き荒れる風の欠片
口の中に放り込めば
やっと私が透明に
なっていく瞬間
秋の日
仲いい友達と
私と二人
長いベンチに腰掛けて
うなだれた頭
秋の光がそれを
そっと撫でていた
泣きそうな目をしながら
互いに笑いあって
紡ぎ出す重い言葉は きっと
秋風が天(そら)に運んでくれるから
光と風の唱和は いつだって
私たちを包んで揺らめくけれど
秋はとくべつ
私に優しい
落ちない銀杏
銀杏の葉はためらい
吹きすさぶ前の夏の風
忘れてしまったまま
冬を迎えようとしている
子供達は地に落ちて
時に拾われ
時に地に潜った
木だけがまだ
時代の交換を認めていない
あんなにも生い茂った葉に
雪はどれだけ重いだろう
ちっぽけな私が考えても
わかるはずも
ない
ただ
あの金色の葉が
早く地を暖めてくれること
それだけを願っている
ちっぽけ
蒼く染まりかけた空に
鉋屑のような
月が乗っていた
あんまりにも薄いから
バラバラと
飛んでいるヘリコプター
性格の悪そうな音を立てて
突き破りそうだった
その曲がり具合が何とも言えないから
飛行機に乗って
ふわりと飛び降りれば
昼寝をするのに丁度いいかもしれない
とてもか弱そうだから
私たちの方が
うんとうんと
ちっぽけだということ
地学の勉強で知っていても
やっぱり信じられない
月よりずっと
ちっぽけな私たち
生み出す空想は
月さえも越える
月
ときどき月に
片思いをする
月は
ただ静かに
僕の告白を聞く
何も言わずに
微笑する
見つめていると
月の中で
胎児に還る
僕の心
まだ白い部分の
足の冷たさが
僕の心を引き戻して
僕は
現実を愛する努力をする
また
月に片思いするまで
そして言葉は
そしてどうして言葉は
唄い始めるのだろう
昼休み
ファイル片手に語り合う
若い会社員たち
低いトーン
波
平日に
公園のベンチで
一組の恋人
さえずり
高く上って散る
それらを
私はアスファルトにとまった梟のように
見続ける
見開いた両目には
この世のものと
絡み合って踊る
言葉達
そして言葉は
とにかく唄い始めるのだ
3月
ため息ついてたら
いつのまにか
温かくなっていた
白く凍らなくなった吐息は
少し
楽しく宙を舞う
風は今
切り裂く楽しさから
撫でる喜びを
覚えたようで
拍手の代わりに
鞄を振り回してみる
厚ぼったいコートも
ぬくぬく手袋も
私を覆っていた殻も
脱ぎ捨てる時期
曲がり角
信号が変わり
うきうきと歩き出す日
遠くから聞こえる
クラクション
空気を
私を
震わせる
出会うことは
いつでも意外だから
この角曲がれば
君の家でも
チャイム押す前に
会ってしまいたい
君のクラクションには
耳を閉じて
どんな顔しようかと
頬だけ
ゆっくりほぐして歩く
風乗り
ごぉぉと
風が吹いてる
お天気の日
雨傘持って
探検に行こう
いいとこ
野原を見付けたら
おもむろに傘を開く
桜の花びらの
中に1枚
黒いひらひらで
飛んでゆくのだ
吊り橋
野原の真ん中に
吊り橋があった
ちょっとした冒険心を満たすための
粋な小道具
渡って降りたところでは
怖がって歩こうとしないお母さんを
お父さんは仕方なさそうに見つめ
踏み出した足を
登るときと同じ調子で
下げていた
まだ
足もかけていない家族は
どうでもいいらしい
軽いため息と共に
くるりと
野道に方向転換する
何も分かってないチビだけが
“コワイ コワイ”と
楽しげに走り回っていた
5/5
いたずらな風が
昨日までの黒雲を蹴っ飛ばしていったので
今日は朝から
紫外線浴びに
歩いている
ここは大きな街で
人々は皆通り過ぎるばかりだ
僕が今
こしかけている
デパートの植え込みは
足のつかなさが心地よくてどうしようもないのだが
あの内の何人が
そんなことを考えるだろう
目に活字が焼き付くように
日のもとで
薄っぺらな詩集を読みはしたけれど
風にむくれて
いやいやとページが騒ぐので
10分ねばったが
意見を受け容れることにした
うつむいて
ノートに黒鉛を埋め込んでいると
通り過ぎる人の足が見え
その足音と
時々見上げる青空が
妙にまた気持ちよく練られている
そんな一日だ
今日はこどもの日
美味しいかしわもちは残っているだろうかと
ふと
心配になったりもする
休日
深呼吸
あの丘に登ればきっと
一番大好きな君を
なくしてしまう
見下ろす街は
まだネオンもなく墓石のように整然としていて
白い雲の影を吸って
なんとなく
歪んでいる
丘の上の草のなかに
忘れ去られた
雨風に晒されてずいぶんと丸くなった岩のように
埋もれて
青い空に映るのは
やっぱり君の顔で
いつも見せてくれた笑顔
目をつぶって
また開いて
消えていればいいと思うのに
焼き付いた光景はまだ空に映され続ける
丘の上の草のように
大きく一つ深呼吸をして
私はまた
埋もれて日暮れを待つ
流れゆく雲を
子守歌にして
日差し
灰色の砂浜で
波が寄せては返している
僕が見るのは
煌めく君の後ろ姿ばかり
君は
長い髪を揺らして 振り返りもせずに
あの光の射さない岬の向こうへと
歩いていってしまう
追いかければいいのに
僕は足にかかる水の音ばかりを気にして
日差しに細めた目の奥で
緑に埋もれる君の笑顔を 視ていたりする
明日
自分をかきむしる
激しい音で目が覚めて
まだ
鳴るには3時間も早い目覚ましを
切って
クーラーを消さないまま
窓を開け
溶け始めた空気に
抱かれにいく
ふと見上げた東の空にも
爪痕が1つ
黄色く
無様に
唯一自分の砦とも言える
部屋に埋もれて
ベッドに座り
だんだん暑くなっていく部屋の空気と
明るくなっていく外を
眺めて
明日という時間が来る
わすれな草
風に吹かれて
貴方が笑う
わすれな草の
その向こう
遠い日差しは
木々をすり抜け
どこからともなくやって来た風と
手を
繋ぎはじめ
広がる緑に
嬉しくて
どうしてこんなに
時が過ぎるのだろう
儚い色と
微笑みの中
私はやっと
まどろみ始める
雨の夜
曇った窓ガラス
誰かのいたずら書き
雨模様に
踊っている
ぼやけたネオンは
頭の中にまで侵入し
にチカチカと
蛍が舞い降り続けている
タイヤの軽い振動と
連鎖して
麻薬のように作用する
カッチカッチ
左折サインの音
母なる心音のようで
頬杖ついたまま
瞼を下ろして
このまま
ゆらゆら 揺れていたい
昔に還るから
アナウンスは
耳に届かない
けれど
降りるべき停留所のそばに来た途端
意識は体へと
再び
束縛されてしまう
落日
あしたまたね、の声
夕暮れに溶けて
あの子の影も
もうずいぶん遠い
飛び火された木々
小声で そっと
夜風の来訪を 告げて
私は
また足早に歩き出す
コートの襟を少し立てながら
白月
南天の白い満月より
中空へ
冷気 冴え冴えと広がり
静寂の音のみ
街に響きわたる
見上げた瞳の黒ささえ
その神々しい光に
照らし出され
心は浄化され
闇を内包しない
純然たる黒へと変化する
白月
人々の汚し尽くした地上より
独り
離れて
永遠ともいえる長さを
照らし出す
白き聖なる光を与えられた
坂を登ったら
ゆっくりと
歩いていった坂道
登りつめた先に
沈む前の夕日が見えそうで
金色に光る木の葉が
静かに揺れていたよ
世界は大きく
眠たそうな息を吐いたよ
僕だけが
固く
わき目もふらずに
交互に出る足だけを意識して
坂道さえも
息づいていたよ
どこからともなく聞こえる鐘の音が
日暮れを伝えていて
坂道を登りきったその時に
夕日はもう無い
そんな思いさえ
頭をよぎって
それでも
僕は歩調を変えずに
坂を少しずつ進んでいった
坂の上に見える何かに
恋い焦がれさえして
水滴
微笑みの先に
少し
雨粒はひっかかり
どこまでも
重力に抵抗していた
見送ったのは
愛しい背中か
二人の季節か
風景を閉じこめて
記憶よりも早く
美しく
水滴は地に
こぼれ落ちていく
波打ち際にて
幸せが少し
波音を立てて
遠ざかってゆく
また戻る、
の言葉に
心預けられるわけもなく
浜辺で独り
膝を抱えるばかりで
アメノヒ
東京が
濡れている
人はみな
俯いて
やさしさが
頭上からすっぽり包み込む
温かさを
傘の下
電車の中
恋人のコートの内側で
静かに
待っている