空色



心が文字を写すから
文字が心を見せるから
あの人がくれた空色の手紙は
ちょっと明るい文字だった
心の影を薄くしていた

どうしても書きたかったという
その説明は
私の心にもズシンと来て
一瞬文字に飲み込まれそうだった

あの人の心は
空色の紙に隠されていて
私はちょっと
ため息をついた





通り過ぎた風
あの人の元へ
飛べない私が頼んだ
想いの宅配便



”言わなくちゃ”



見えない光が
この体を
見えない力で
つらぬいた
見えない気持ちが
生まれてきて
見えない私を
そっと包んだ

貴方がそこにいるから
そうなった
貴方がいなくなる前に
そう言わなくちゃ



叫んでいる



いつのまにか 愛していたよ
朝起きたら 涙止まらなくなっていたよ
ソバニイテ・・・ ズットイテ・・・
布団に落ちる 雫の1粒1粒が
そう 叫んでいる



待ち合わせ



いるくらいなら いないほうがいい
そう思っても 足が動く
嫌だな 本当に
目が人並を 縫っていく
”待ち人来たらず” そんな言葉が
頭の中に 浮かんで消える
来なくていいよ でも来て欲しい
矛盾している 頭を抱え
いつのまにか 目が止まる
あぁあ 今日も出会ったんだね


far



遠く離れているのは
体・・・じゃなくて心ですか?
時間という波が
想い 連れ去ってしまったのですか?

今見てる貴方の横顔
まるで 知らない人のようです


ずっとずっと



いつまでも 続く

どこまでも 走る

広がる心
  離さないで

今でも君は
輝いているから


待ち合わせ



君に会いたいという
この気持ちだけを抱えて

走っている

待ち合わせ場所に
君がいることへの期待
君がいないことへの不安
かわりばんこに
踏んでゆく

流れる景色は
君ですべて終着するから
その1点を見つけに

走っている


貴方の名前



マニキュアを塗った爪に
貴方の名前
水性ペンで書いてみた

見つめていたら
なんだか虚しくなったから
親指でグッと消した

指に付いたインクの残骸
洗っても落ちなくて
何日も
握りこぶしを作っていた


口づけ



梅雨時の風は
私を包み
生温い口づけ1つ
残してゆく

他の男(ひと)では嫌だから
貴方の姿
私の横にふっと浮かせる
貴方のせいにする

半透明な貴方は
私に向かって微笑んでいる

不透明な貴方は
いま 何をしているのだろう


目眩



暑い夏の日
緩やかな風が吹けば
振り返った視線の先
君がいる

自分の隣の空白
埋めてくれる君
手を差し出せば
近くなる

照りつける日差しより
もっと熱い君の手が
いま
私に目眩を覚えさせる


指跡



君の夢に 指重ね
触れることが
時には大切になる

見失うのは以外と早い
見つけるのは
やっぱり困難だ
だから 捕まえておく
せめて印 残せるように

君の夢は どこまでも
飛んでいくだろう
押してあげよう
この指跡 残したまま
きっと君は 高い空に昇る


霧の夜



きっと君は忘れただろう
霧の夜に
つないだ手のこと

僕たちの手は
空間を抱いて
見えない提灯が
確かにそこに灯っていた

たった1つの道しるべを
ほどいたのは君で
僕は急に宇宙へと
突き飛ばされた気分になった

きっと君は知らないだろう
霧の夜に
途切れた想いのこと


記憶



君のこと
もう忘れましょうか
思い出す度
つまらない争いの
見てもいない君の顔
なぜだか 浮かんでくるので

言葉は
考えているうちに
流れていくし 相手は待たないし
難しいのはわかっているけど
それでも
もうちょっとだけ…話したかった

君のこと
今どうすればいいのですか
もういいよ、と言われても

首を傾げることしか出来ません


ファイル



ここから届くのは
きっと想いくらいなものだろうから
貴方に向かって手を差し出して
ガイドライン 形作る

これからも これまでも
まとめれば1つかもしれない
煌めくそれぞれ 忘れないために
2人で名札を付けていこう

側にいられなければ
“あ”の欄でも取り出して
1人にんまり笑えばいい
貴方がそこに蘇る

湧きあがった想いを
ガイドライン 走らせれば
今度は貴方のファイルの中に
“私”が1つ 貯まるはず


背中



視線巡らせれば
なぜか見つけてしまう
君の刈り込んだ髪
広めの背中

君が知るわけもないのに
一瞬でわかったこと
少し照れくさくて
そっと一息
深呼吸をする

呼んでしまえば
千切れてしまう緊張
そっと抱えたまま
君の背中まで
あと数歩




言い伝えを
信じているわけではありません
ただ
そういう感覚が溢れるのです

柔らかい声に触れるとき
その息づかいが伝わってくるように
少し自分の指先に
力を入れるのです
糸が
結ばれていると思うそこに

見えないのではなく
ちゃんと色づいているのですよ
いつでも貴方の色に
定まることなく
透けながら 変わりながら


走る



「ここからどこまで
 走るんだろうねぇ…」
長い道のりを前にして
君が呟いた言葉は
妙に心を締め付けました

僕は今まで
とてつもなく闇雲に
走ってきたのです
ここが
出発点ではないと
感じていました

君はこれから
ちゃんと新しいスタートを
切るのですね
僕のように
もう役にも立たない背中の荷物を
背負ったままにしないで

それでも
僕は共に走ります
この違いは
僕と君の明確な区別だから
それを乗り越えてでも
僕は君の横を
走ります


two



雲も心も
ほんのりバラ色に染まる
夕暮れ
風はきつく
私達をつねっていく

肩から腕へ
1本のラインで触れる
自分より暖かい


悲しみが
不意にこぼした涙のように
空は
蒼く染まってゆくから
心も
すこし闇を吸って
重い

重さ
交流させて
腕の繋がりのところから
闇に流してしまおう

そして明日も
2人が良いね




そうだね
君といるだけで

柔らかくなる

一瞬が
永遠に変わるように
惚けてるように見えても
実は
願っているんだよ

そう
君が側にいるから

柔らかくなるね


lovin' you



とうとう君は
すねて
頭から布団をかぶってしまった

どうしようもないまま
しばらく見ていると
微妙に上下する
布団の小山

あんまり見せて貰えない
君の寝顔を思い出して
いまここで布団を
ぱっと開けたら
奇術師のウサギのように
君が
消えてやしないかと
妙に不安になる

おそるおそる
布団の中に差し入れた指に
君の
あつく火照った手が触れて
起こさないように
そっと
握ってみたりする


君の欠片



ささいなことでも
ポップコーンのように
この心の中
弾けていくよ
君の名残を探しているから

ちょっとした
机のインクに
(君への手紙書いててこぼしてしまったンだっけ)
電子文字で記された言葉に
(やっぱりクセのある文だよね)
君の光る欠片
見付けて
喜び勇んで駆け寄るのに
光は
ふっと消えてしまって
僕は
君の欠片以外に何の興味も持てない空間に
ただ立ちつくすしかなくて

探しても
探しても
君の温もりは遠く
見付けても
満たされない心を知ったりもする


予感



風が騒ぐ
曇りかけの空が
あの人の予感を滴らせる

見上げる空は 繋がっている空
思いの沈殿した心を
浮かび上がらせもしない
呪文

かつり
敷き詰められたタイルに響く足音
振り返らずに
何も見ていない目で空の雲を見る

気配が
やって来て 過ぎ去れば
また空の青さを写し始める
私の目


sigh

990919

ため息は
君の寝ている間に
いっぱいいっぱい
外にむけて放っておこう

それから
枕を抱えて
君の寝顔だけをじっくり
5分が1時間に思えるくらいに
見つめるのだ

二人
接しているときより
今が一番幸せそうだよ、なんて
情けないことはきっとずっと言わないけれど
見ているだけで
細められる
少し哀しい自分の目だけは
否定できなくて

僕はまた
ため息をベットの外に落としていく


暑い夏

 991030

君を見失った
世界がハチミツ色に染まる
夏の夕暮れに

僕たちの心は空に溶けて
甘い甘い
マーマレードになる
信じても
手を繋いでないと
やっぱり君を束縛出来ないらしい

雑踏が
僕の周りを避けて流れて
少し酸欠になりながら渡る橋
川面の煌めきの間にさえ
君を捜して

君だけが
光って見えるはずの僕の瞳は
まだ
稼動できていない

たぶん心が
茹だってしまっていて


逢瀬

(991114)

交差させながら
繋ぐ手
夜風はふたりをひとかたまりに
避けていく

空がどんなに明るくても
埋めた顔の
温かい暗さが嬉しいのは
どうしてだろう
まるで
猫になったようで

時間が
停まっていく
音さえも ここからはかき消えて

ふたりの
息づかいと心臓の音だけ
体に染み込んでいく


辿り道

(991208)

潜んでいればいいんだ
そこに
君の死角に入って
笑っていればいいんだ

日はもう
暮れかけているよ
君は
ため息一つ付いて
二人の思い出を
一つ一つ 辿っていくしかない

雪の公園を
風の強い屋上を
空に抱かれた観覧車を

全て

そして
あまりにも近くて
あまりにも当たり前の

僕らのいつもの部屋で

君はやっと
僕を見付けるんだ

そして二人
また
微笑いあえるはずなんだ


sweet pain

(991210)

甘すぎたキャンディみたいな
夢を見ていた

君と二人
手をつないだ途端
アスファルトが雲のように思えて
うっとおしい曇天だって
悪くないって微笑えたっけ

煌いていた
太陽の光を浴びて
蓄積して
二人の間に
いつでも 交流電流

磁力があるみたいだった
片時も離れたくなくて
同じ人間なのだと
思いつつも思えないくらい
君が好きで

思い出のキャンディを
アルバムから写真が零れ落ちたときに舐めてみたら
舌が痺れるほど
甘くて
涙もこぼれ落ちていったっけ


踊り  2000.3.16.


かけ忘れた声を
背中に投影させたまま
貴方を
そっくりそのまま
私の瞼の裏へ 仕舞い込んだ

スローテンポのジャズに溺れながら
たゆたう脳裏では
貴方と踊る
私がいる

くるり くるり ふわり

永遠の回帰を
望むかのように

回る 円を 描く
いつか
私の中の貴方から
悲しげな背中の言葉が消えるときまで

踊る

いつも
いつまでも


白昼夢  2000.3.16.


透き通った 指先を
握る
君をもう 逃がしたくない

世界の狭間に
落ちてしまった君を
夕日の影が指す方へ
探し続けた

気付けば
菩提樹の下に 倒れていて
優しい指が
僕の瞳を閉ざした

逃がさないように
もう
離れないように
掴んだ 指は
微睡みが終わると
風に溶けて消えてしまう

だから
出来るだけ長く 長く
君と共に 微睡もう


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