僕ら



海は 果てしなく
僕らは 何処へ流されてゆくのか

様々な海を
“自分”というたった1つの船で
自家発電頼りに 渡ってゆこう
ガソリンをくれるのは
なにも自分だけじゃない
貰った全てを使い切るよう
エンジンを燃やし続ける

−それが僕らの仕事だ。


世界



世界はきっと 繋がっている

言葉のように
すべての想いのように
きっと
世界は 繋がっている

だから 僕たちに果てはない
死とは ただ
僕たちが粒子になって生き続けることだと
今 そう思えるはず




水面震わす 1本の針
振動が 縁に駆け寄る
波紋は途切れ 繋がり
電気レベルで挨拶をする

この身体の
どこかに夢は埋もれていて
僅かな電流が
その瞼を優しくなぞる

起き抜けた夢に
居場所は数秒もなくて
すぐさま対流に乗って
世界へと放たれてゆく


繁殖



一過性の存在である言葉は
僕たちの心に浸食し
寄生して
ぬくぬくとその身の存続を保持している

初期の悪戦は過ぎ
免疫が作り出され
人は
その痛みを忘れる

そして
いつしか氾濫し尽くした言葉たちは
罪のない
免疫無き人を傷つけていく


2艘の小舟



一度は触れ合った君だから
故意に解けていく結び目
押さえるための手 伸ばしかけて
悪あがきをしてしまう

ただの知り合いなら
付いては離れる小舟と小舟
ため息1つで済む現代だけど
君とだけは許せない

君が荒波立てるから
凪を狙って漕ぎ出そうとする櫂
水に沈められないで居る
君が次第に陰となる

これから先 2艘の小舟すれ違っても
おそらく結び目出来ないだろう
麻紐はただ潮に濡れて
もう朽ち果ててしまうから




君と視線が合ったときに
僕たちは何ヘルツかの
電流を交わし合ったのだと
ただそれだけで
片付けられるのかもしれない

君と繋いだ手が
もの凄く温かく感じたのも
熱伝導率の差異が
皮膚の末端神経を
刺激したのかもしれない

ただ
君と離れたときの痛みや
君を想うときの温かさ
この感覚は
ずっと消えないだろう
記憶回路が壊れ始めても
何かの欠片が
きっと僕を君に繋いでくれる

そう信じられるこの気持ち
僕と君の見えない絆


浸透圧



ちょうど
高張液に浸けられたように
細胞が
きゅいと縮む

痺れは
電気信号となって
体中を駆けめぐり
安定をなくさせた

鼓膜を
ふるわせる音
波打ちながら
脳に届いた
ゆっくりと

等張にするため
流した存在は
音波に変えずに
こっそり認識している

気付かれないように
浸透圧は
保たれなければいけない


時間軸



時間軸に
寄りかかることが
僕たちの
生き方なのか

時間軸を
操ることは
なによりも
僕たちが
走り 休み 楽しむことでは
ないのだろうか

永遠を求めつつ
永遠を恐れ
有限を慈しみ
有限に囚われている
僕たちは
時間軸を信じながら
時間軸の中を走り抜けていく


織機



どうしてと
問うことの無意味さを
見付けられないまま
このレールは
すぐそこで曲がっていて
どうやら
その向こうにも分岐点があるようだ

二者択一の繰り返しは
複雑系を
編み込んでいく

僕たちの足跡
僕たちの軌跡
計算し尽くせない悲しみに
少し
ぼかされながら
繋がっている
飾られてゆく


lim



君をどこまでも微分して
得られるものは なんだろう

さらさらと
掌から落ちた 君の欠片
堆積していくよ
記憶と共に

全ての集合体が
対応してないなんてことは
とうに
分かっているはずだった
君だけの
君のための
一挙手一投足が
今も
極限へと導かれている


at a loss



迷い方もわからなくなって
ただ 突っ立っていた
時間が
流砂となって足元に堆積していた

なにもなかった
光の全てを通過させる
床のような
重力に逆らえる足場が
そこにはあるだけだった

砂は
時々 ごそっと崩れ落ちる
床に着く寸前
無かったかのように消え去る

倒れれば
自分も消えてしまえるだろうか
頭を最も重くなるように意識して
前方に少し弾みをつければ
床は
ぐんぐんと視界に近付いてくるのだった


閃光



青白い光が
夢幻空間の中で 明滅する

蝶のように
追いかけても追いかけても
揺れてすり抜けてしまうのは
僕の目眩のせいか

足音が
妙に固い
指先が冷気を 少し吸って

カツゥゥン…

それは 耳に反響する
青白い光が その度 揺らぐような気がする
消えてしまう
悪魔の息吹に晒されたように

カツゥゥン…

光は 収縮し
それから夢幻を染めるように膨張
そして
僕さえも飲み込まれていく圧力を感じた

閃光は それでも僕に 優しかった


空の遠さ



空が遠いのは
君のせいじゃない
ましてや
僕のせいでもない

手を伸ばしきれば
それだけで
偉いねがんばれたね
なんて とてもとても言えないけど

結局
たいして変わらない気がしてくる

空の遠さに比べれば


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