 二十三士温泉の朝食(二日目)
| 四国八十八ヶ所おへんろ旅・高知編
第二十四話「遍路のタブー」
3月24日(月)。4時起床。出発の準備をアレコレとしている内に7時。朝食を取りに行く。今朝は朝食券を出してから5分程度で朝食が出てきた。やはり昨日の出来事はよほどの手違いがあったということだろう。今朝は美味しく味わって食べていると、店員の女性がまた「お昼に食べてください」と昨日とそっくりなおにぎりのパックを持ってきた。ふうむ。もしかしてこれは宿泊した遍路に対する日常的なお接待なのだろうか?それとも昨日のお詫びに今日もまた・・・という行動なのだろうか?お接待に対して疑念を抱くのは無礼であるとは思うのだが、一瞬その背後にある気持ちの部分に思いを巡らせてしまった私であった。
7:30にチェックアウトして送迎バスに乗り込む。送迎バスのおじさんは「どうせなら安芸駅まで送ってあげるよ」と言ってくださった。結構距離があるのに悪いなぁと思いつつ、その申し出に甘える。思い返せば二十三士温泉の従業員の方々はみな非常に親切であった。昨日の朝の出来事は残念ではあったが、おそらくまたこの地に来ることがあれば私はこの宿に泊まるに違いないと確信する。7:50、安芸駅近くの安芸市役所の前で送迎バスを降りた。ここまでは昨日歩いている。送迎バスのおじさんに感謝を述べて歩き出す。右足はまだ調子が悪いが、前傾姿勢を取ると少し楽な気もした。
海岸沿いに入り、延々と堤防を横に歩いていく。所々にベンチが設置されていたので、何度も休息を取りつつマイペースで進んでいった。今日は曇り空で空気が肌寒い。安芸休憩所の所でトイレ休憩をしていると、自転車に乗って日本一周に挑戦しているという中年のおじさんと出会った。
自転車のおじさん「若いのに歩き遍路しているなんて信仰心が厚いんだね〜。」
私「いえ、信仰心はあまり関係ないです。歩いて四国を一周してみたいだけですね。歩きの旅というものに興味があったので・・・。」
自転車日本一周おじさんは私の答えに「ふう〜ん」とあいまいな返事をし、「じゃあね」と言って去っていった。基本的にお遍路さんに対して『どうしてお遍路をしているのか?』という質問はタブーに属する。私のように暢気なにわか遍路も最近は多いと思うが、人には言えない業を背負って歩いている人も少なからずいる。おそらく遍路の半数は「誰かの供養のため」だ。その点がただの観光旅行と遍路という旅の大きな違いである。だから遍路同士の間ではその話題にふれないことが礼儀となっている。実は私は根がおしゃべりなので、聞かれたら素直に答えてしまうし、ついうっかり相手にも聞いてしまったことが何度かあった。ほとんどの人が「健康のため」とか「山登りが好きだから」と軽く受け流してくれたが、徳島の太龍寺の直前に出会ったある男性遍路は急にまじめな顔をして、「そのことは話題に出さない方がよい」と戒めてくれたのではっとした。以後、自分のことは話しても相手のことは聞かなくなった。聞くのは専ら昨日の宿の話題と今日の宿の話題と明日の宿の話題である。
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