四国八十八ヶ所おへんろ旅
2003.3.18〜2003.3.27

二十三士温泉の朝食(二日目)
二十三士温泉の朝食(二日目)

四国八十八ヶ所おへんろ旅・高知編
第二十四話「遍路のタブー」

 3月24日(月)。4時起床。出発の準備をアレコレとしている内に7時。朝食を取りに行く。今朝は朝食券を出してから5分程度で朝食が出てきた。やはり昨日の出来事はよほどの手違いがあったということだろう。今朝は美味しく味わって食べていると、店員の女性がまた「お昼に食べてください」と昨日とそっくりなおにぎりのパックを持ってきた。ふうむ。もしかしてこれは宿泊した遍路に対する日常的なお接待なのだろうか?それとも昨日のお詫びに今日もまた・・・という行動なのだろうか?お接待に対して疑念を抱くのは無礼であるとは思うのだが、一瞬その背後にある気持ちの部分に思いを巡らせてしまった私であった。

 7:30にチェックアウトして送迎バスに乗り込む。送迎バスのおじさんは「どうせなら安芸駅まで送ってあげるよ」と言ってくださった。結構距離があるのに悪いなぁと思いつつ、その申し出に甘える。思い返せば二十三士温泉の従業員の方々はみな非常に親切であった。昨日の朝の出来事は残念ではあったが、おそらくまたこの地に来ることがあれば私はこの宿に泊まるに違いないと確信する。7:50、安芸駅近くの安芸市役所の前で送迎バスを降りた。ここまでは昨日歩いている。送迎バスのおじさんに感謝を述べて歩き出す。右足はまだ調子が悪いが、前傾姿勢を取ると少し楽な気もした。

 海岸沿いに入り、延々と堤防を横に歩いていく。所々にベンチが設置されていたので、何度も休息を取りつつマイペースで進んでいった。今日は曇り空で空気が肌寒い。安芸休憩所の所でトイレ休憩をしていると、自転車に乗って日本一周に挑戦しているという中年のおじさんと出会った。

自転車のおじさん「若いのに歩き遍路しているなんて信仰心が厚いんだね〜。」
私「いえ、信仰心はあまり関係ないです。歩いて四国を一周してみたいだけですね。歩きの旅というものに興味があったので・・・。」

 自転車日本一周おじさんは私の答えに「ふう〜ん」とあいまいな返事をし、「じゃあね」と言って去っていった。基本的にお遍路さんに対して『どうしてお遍路をしているのか?』という質問はタブーに属する。私のように暢気なにわか遍路も最近は多いと思うが、人には言えない業を背負って歩いている人も少なからずいる。おそらく遍路の半数は「誰かの供養のため」だ。その点がただの観光旅行と遍路という旅の大きな違いである。だから遍路同士の間ではその話題にふれないことが礼儀となっている。実は私は根がおしゃべりなので、聞かれたら素直に答えてしまうし、ついうっかり相手にも聞いてしまったことが何度かあった。ほとんどの人が「健康のため」とか「山登りが好きだから」と軽く受け流してくれたが、徳島の太龍寺の直前に出会ったある男性遍路は急にまじめな顔をして、「そのことは話題に出さない方がよい」と戒めてくれたのではっとした。以後、自分のことは話しても相手のことは聞かなくなった。聞くのは専ら昨日の宿の話題と今日の宿の話題と明日の宿の話題である。

山かけうどんの昼食
山かけうどんの昼食



無人島長平の像
無人島長平の像

四国八十八ヶ所おへんろ旅・高知編
第二十五話「雨の中を歩く」

 12時直前になって雨がぽつぽつと降り始めた。カッパを出して着込む。しばらくして自転車に乗ったおばあさんとすれ違うが、そのおばあさんに「えらいえらい」とたいそう誉めていただいた。うれしい気分になって足取りが軽くなる。人間は叩かれるよりも誉められる方が成長すると私は思っている。誉めてくれるからこそ頑張れる。「豚もおだてりゃ木にのぼる」という言葉があるが、人間の本質は結局のところ「誉められたい生き物」なのだと思う。

 雨がひどい降りになってきたので、昼食休憩もかねてうどん屋さんに入った。二十三士温泉でお接待していただいたおにぎりはあったが、体が冷えたので暖かいものが食べたかったのである。山かけうどんを食す。うどんは手打ちではなかったのでコシが全くなかったが、暖かい物を食べられたのでそれなりに満足であった。30分ほど店内で粘ってから雨の降りしきる外に出る。午前中に比べてスピードも落ち、足の痛みもぶり返してきた。しかしそれ以上に雨がやっかいであった。手結山トンネルを過ぎた頃には全身ずぶぬれ状態になっていた。靴の中もびしょびしょで、裸足で歩いても同じというぐらい靴の役目が無くなっていた。

 夜須駅を過ぎた辺りから国道が危険になった。雨で視界も悪いので、注意深くルートを選んで進んでいく。香我美町に入ったところから地図のルートは住宅街の中の道に向かっていたのだが、しばらく歩いても遍路シールはさっぱり見あたらない。歩いている人も全くいないので道の確認に苦慮したあげく、2キロ先で歩きルートと国道が合流していることに気づいて国道沿いに進むことにした。

 この国道沿いで「無人島長平の像」に出会った。野村長平という人が1785年(天明5)に手結山沖で漂流し、無人島に流れ着いて、1798年にやっと流木で舟を造りあげて奇跡的に生還したと説明板に書いてあった。確かに13年も無人島生活をして、かつ自力で脱出してきたというのはすごいと思った。思わぬ物を見られて国道ルートも悪くはなかったが、降りしきる雨はますます激しくなっていった。数日前にも雨にあったが、今日のずぶぬれ具合はそれ以上に感じる。ズボンのすそはもはや泥だらけである。最後にはもうあきらめの心境でひたすら宿を目指していた。

 旅館かとりを過ぎてしばらく進むと大きな100円ショップを発見。絆創膏と靴の中敷きを購入。そこから歩いてすぐの大きな橋のたもとに、本日の宿「黒潮温泉ホテル」があった。最近できたばかりの綺麗なビジネスホテルであった。早速チェックインをして部屋で一息を入れる。浴衣に着替えてまずは洗濯。ここのホテルのコインランドリーはやたら高かった。洗濯のみ500円、洗濯+乾燥1000円。しかたなく洗濯のみをしておいて、あとは部屋の暖房で乾かすこととする。ユニットバスが部屋についてはいたが、すぐ隣の「黒潮温泉・龍馬の湯」という温泉浴場に入りに行った。ここの泉質はアルカリ性のくせにぬるぬる感は全くなかったが、柔らかい肌触りの良い湯であった。風呂に入った後は夕食。素泊まりで頼んでいたので一階のレストランに入ったのだが、今日はなんだか食欲がわかない。しかたなくそこではケーキセット(652円)を頼み、廊下に設置してあったラーメンの自動販売機で200円のラーメンを買ったのだが、いつの間にやら爆睡してしまったためにラーメンは半分以上残してしまっていた。

本日の歩いた距離 21.6キロ
本日の万歩計 39492

続く→

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