2008年ハリケーン・アイク (Hurricane Ike)

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ハリケーン・アイクは19009月のハリケーンに続いてテキサス州ガルベストンを高潮によりノックアウトしたハリケーンになりました。9130CDT3.6mの高潮がガルベストンで観測されました。風の強度による分類ではカテゴリー2(43-49 m/s)でしたが直径が大きいため被害が大きくなったという意見があります。91302:10AMにガルベストンに上陸、クリアレイク地区の直上を同日に通過し、クリアレイク湖沿岸に水害、地区全体に風による停電と倒木の被害を引き起こしました。ガルベストンを含むヒューストン地区の死者は36名以上。 アイクのプロフィル  ニュース集積   気象データ経過  NOAAによるIke報告書

気象用語は入り組んでいます。国際分類では1分間最大風速が64ノット (32.9m/s) 以上の熱帯低気圧をサイクロンとし、地域別にハリケーン、タイフーンを分けています。日本では10分間平均最大風速が34ノット (17.5 m/s) 以上の熱帯低気圧を台風としています。10分間平均だと20-30%程度少ない風速になります。米国のカテゴリー2だと10分間平均最大風速が30m/s台なので日本分類では普通の強さの台風です。ヒューストンの今回の風の被害が大きかったのは日本での風の被害に比べて施設の強度が弱いためというのが実感です。規制の違いのせいか日本で強風の際によくある「看板が飛んで当たった」というのを聞きませんがChase銀行の窓が殆ど風で割れたというのは日本だったら大騒ぎになるものと想像されます。

ヒューストンでは避難勧告地区をzip codeで限ったため20059月のハリケーン・リタの前のような極端な避難渋滞は生じませんでした(zip zone Bまでの指定だったようです)。リタでは風雨による被害はほとんどなかったので、アイクはヒューストンでは20016月に雨による洪水をもたらした熱帯性低気圧Allison以来の激しい暴風雨ということになります。ヒューストンの洪水予測地図Allisonの被害を契機に作られた、降雨による川からの洪水対策のもので、海水の吹き寄せ・潮汐・低気圧吸い上げで発生する高潮(surge)による海からの水害予測はNOAAがハリケーン毎に作るものを参照しなければなりません。郡では高潮対策の際の避難地区割りをしています。 ローカルの浸水予測地図

避難勧告が出たガルベストンからI-45を北上する車両による渋滞が1日間ほどありましたが、フリーウェイの全車線の一方通行は施行されませんでした(帰宅方向の車両も通すため)。避難指定地区では夜間外出禁止令が出されました。ハリケーンが過ぎた後も被害の大きかった地区の入り口では盗難防止のため警官が入る車のチェックをしていました。ガルベストンの夜間外出禁止は長く続きました。風雨の直前直後の警官による質問は頻繁に行われ、避難先のホテルの駐車場を歩いているだけで警官が来たほどです。

9/11 10:30AM

9月15日の交通状況。システムダウン部分あり。→

一部に停電しなかった住宅もありましたが、全域地下埋設電線地区の数軒の範囲でも停電したりしなかったりで何が差を決めたのかは分からずじまいです。電気会社は多数ありますが、小売機能jだけでなく設備を実際に持っているのはCenterPoint Energy社だけのようです。一時テキサス州内の店頭から発動発電機が消え去ったというラジオの報道でしたが翌週には供給されました。慣れない機械なので室内で運転し、一酸化炭素中毒で子供が1名死亡したそうです。 停電復旧サイト  一応の説明図(pdf)

ガス供給が殆どの家で絶たれなかったのには驚きました。地震とは大違いです。ガス管内に水が浸入しないよう、非難時にはガスのメーターの元栓は閉めず、閉めるのはガス機器側にするようにとの話です。

NASAジョンソン宇宙センターは建物に若干の被害があり設備点検などのため911日から21日まで閉鎖されました。学校は28日から登校再開しましたが水辺の学校で損傷を受けた所があり影響は甚大です。クリアレイク水辺のヒルトンホテルは浸水した上に外壁に損傷を受けました。住宅は水辺では床上浸水多数。Seabrook, El Lago, Nassau Bayなどで建て替えを余儀なくされた住宅も多いのですが道を挟んだ住宅は無傷だったりと複雑な被害分布です。ヒューストンは人口あたり全米で一番ボートの所有数が多いそうですが、クリアレイクに舫ってある無数のボートの多数が浮かび出て離れたところに乗り上げたり水中に没したりしました。ガソリン費高騰でボートは使用が減っていたようですがとどめを刺された感じです。 

片付けには倒木の処理にエンジンチェーンソーをあちこちで使っていましたが一般の人の保護具の使用はまれで、おそらく多数の怪我人が出たことでしょう。太い枝は切る向きに気をつけないと枝に刃が噛みこまれて動かなくなってしまいます。

停電で出生数が増えたそうです。

9/13 15:00CDT

9/12 20:15CDT


9/25 Nassau Bay。床上1.5mの浸水の後片付け。左の家は壁が倒壊し建て直し予定。


停電以外に被害のなかった家でも樹木ゴミがごらんの通りで地域の処理能力を超えた。


写真リンク        地区別アルバム1    クリアレイク河畔の被害スライド(ボートが陸にあがる様子)  9/14 El Lagoの被害写真など(AFP)


ビデオリンク

警報  見回り警官のATVがサーファーに拾われる  クリアレイクでの風雨  ガルベストンの波  ガルベストン浸水  ガルベストン浸水空撮  ガルベストン被害空撮  ガルベストン被害写真  写真アルバム  写真アルバム2ブッシュ大統領被害視察


 

2008年ハリケーン Ike クリアレイク地区からの避難日記 (Gulfstream200811p.5)

 

Ø         9/10 水曜14:00          金曜のCCISD休校が学校でアナウンスされた。

Ø         9/10 16:30                  木曜のCCISD休校が近所との電話で判明。Webにも掲載あり。

Ø         9/10                            Galvestonの木曜07:00 mandatory evacuation広報。

Ø         9/10                            JSCメイルにてLevel 4、ハリケーン経路に注意との連絡。

Ø         9/11 木曜05:00          NOAA経路を見て自宅避難決定。

Ø         9/11 11:00              日本語補修校が木・金曜休校の電話網連絡。自宅は避難対象zip code地区になった。

Ø         9/11  15:00                 快晴。Marriott Houston North at GreenspointBelt8の東側の渋滞で3時間かかって到着。

Ø         9/12 金曜11:00      水はホテル最寄のWalmartで品切れとのこと。

Ø         9/12                        Chevronで水ボトル購入。近隣のKrogerに行ったら混雑。14:00閉店、日曜昼再開との掲示。

Ø         9/12                        fast foodは殆ど閉まっていて、東隣のHyatt南のMacのみ開店。Kroger南のモールのPanda中華レストランで昼食。

Ø         9/12                            ホテルより70~75mphの風になったら(結局ならなかったが)shelter-in-placeballroomへ行ってもらうとのPA連絡。指示のとおり浴槽に水を張る(断水時のトイレ用)。以降トイレの湿度高し。

Ø         9/12 18:00              自宅の留守番電話応答せず、停電中と判断。

Ø         9/12 23:00                  若干の風雨。8m/sくらい。

Ø         9/13土曜 00:47          Marriott電源落ち。水道OK。携帯は受信している。9/13 02:00前後    強い風雨。15m/sくらい? 自分の電池ラジオを聞く。

Ø         9/13                            日中3回、ホテルの自家発電故障。2階は暑いが7階は涼しいとのこと。

Ø         9/13 15:20                  ホテル近くのHomewood Suitesは断水とのこと。

Ø         9/13  16:00             日本語補修校隣のHampton Inn滞在者はホテルの断水で移動予定とのこと。

Ø         9/13 17:00                  ホテルでは以降停電中は食事を宿泊者に無料提供。ballroom20個ほど電源を提供。しばらくして皆が気づいてから携帯の充電合戦となる。

Ø         9/13 17:15                  ガレリアのCourtホテルで電気あり、ダウンタウンのHomewood Suitesでは断水で帰宅検討とのこと。

Ø         9/13 18:53                  Marriott前の駐車場の自宅車は無事だが木の枝は落ちている。

Ø         9/13 23:45                  火災警報にて起床、階段でロビーへ。50名ほど。24:00解除。階段で部屋に帰る。

Ø         9/14 日曜                  02:30-06:30            雷鳴、雨。駐車場の車の警報が鳴りうるさい。本日も部屋の掃除はなし。曇り。Marriottは停電、水は出る。

Ø         9/14 10:00                  Belt 8 & BellareHampton Innでは冷房も切れず通常営業とのこと。ガレリア近くでも停電したホテルもあるらしい?

Ø         9/14 12:00                  先にクリアレイクに帰った人より自宅は木が折れているが家は壊れておらず、バックヤードの塀が半分倒れているとの連絡。

Ø         9/14 13:20                  Marriott電源回復す。エレベーター以外の機能回復。

Ø         9/14 13:45                  Ch2 NBCではCenterpointの停電は190万人から184万人になったとのこと。発電機は州内の店頭で売り切れとのこと。

Ø         9/14 17:00                  晴れ間。ロビーの掲示ではIAH空港が08:30に開くとのこと。レストランのキャノピーの一部が落ちていた。

Ø         9/14 17:20                  明日月曜はJSC休業とのこと(結局NASA11日間休業)。事務所ビル玄関は鎖で閉鎖中。Northforkに帰宅した家は15:00より電気ありとのこと。www.CCISD.netでは連絡あるまで休学とし、電話番号を掲げているのみ。Abc13.comで休校リストを出している。

Ø         9/14 22:00                  Countyのテレビ会見(FOX26)で明日ヒューストン市は稼動とのこと。信号はまだまだ回復作業中。17700 imperial valley dr.?, 2000 Bay Forest?など17箇所に物資トラックが配置される。食べ物、水、氷2袋を配る(なぜ氷の配布に力を注ぐのかは不明)。木の枝は切って置けば市が回収。葉は袋に入れれば回収。172万人が停電。38万軒は電気が戻ったが顧客の76%は停電。Centerpointは州内から3000名、他州から7000名を呼び寄せているところ。Cypressでは3時間待ちで発電機用のガソリン購入の列ができた。CCISD closed until further notice. 発発に慣れてないユーザーが家屋内で運転して子供が1人一酸化炭素中毒で死亡したとのこと。4kWの発発についてテレビで話していた。4kWだと車じゃないと運べないし(セダンだとトランク一杯か)騒音が大きいしガソリンも結構な量になるので時折別の用で運転している人じゃないと実際的ではないと思われる。ポピュラーな本田の300W発発じゃ冷蔵庫1台も運転できるかどうかなので事前に試さなきゃならないし複数必要になりそう。

Ø         9/15 月曜日               00:30 自宅留守番電話応答せず、まだ停電と判断。ホテルのテレビはNBC Ch2が大変画像が悪いのでFOX26しかローカル情報が得られない。9/15 01:40                  ふと思い出して外務省ANPIシステムを試してみた。システムがactivateされていた。番号1は866-903-2674.

Ø         9/15 10:00                  ホテルのコインランドリーで洗濯を始めた。洗剤が売り切れで知り合いに分けてもらう。

Ø         9/15 12:00                  帰宅者よりI-45は混んでいたとのこと。

Ø         9/15 12:44                  コインランドリーの乾燥機は順番待ち列が長いので洗濯だけして濡れものを持ってホテルを出発。Belt8E-Hwy59-I10-I610-I45-Clear Lake City Blvd経由で50分であっさり自宅到着。

Ø         9/15 15:30                  落ちた枝を2時間片付けて暗くなる前に寝る準備。CCISDは来週日曜まで休校との電話情報あり。

Ø         9/16 11:30                  自宅電源回復。

Ø         9/16 15:00                  自宅電源落ち。就寝準備に入る。ガスは使用可能。

Ø         9/16 17:00                  自宅電源再度回復。

Ø         9/17 火曜                   事務所ビルが開いたとの連絡。信号はEl DoradoBay Areaも消えている。

Ø         9/18                            事務所ビルに出勤。

Ø         9/20 - 9/24         シカゴに出張。シカゴは全く普通。出張の間に太い木は回収された。

Ø         9/24                            まだ信号がついていないところが多い。

Ø         9/25                             Nassau BayT氏の家の浸水片付けに参加。家は建て直し予定。

Ø         9/29                             CCISD登校開始。

Ø         10/1                             電気は98%回復したとのこと。信号もEl Doradoを除き回復しているところ多し。まだ木の枝の袋は回収されず。

Ø         10/2                            外務省ANPI電話にかけたところ平常時で利用できないとの録音応答。

Ø  10/11            黒いビニール袋に入れて家々の前に並んでいた落ち葉や小さな枝がようやく回収された。太い枝を切って積んであるものの再度の回収はまだ。


 

教訓

 

²        ホテルの発電設備調べはいざ予約しなければならない時では間に合わない。組織での対応が必要。ダウンタウン中心部は外部電源が落ちなかったのでどのホテルが自家発電で全装備を動かせるのかは不明に終わった。

²        自家発電設備が分からないという条件下ではMarriott Houston North at Greenspointは食事が出たし空いており、廊下は暗く懐中電灯が必要だったが(もちろんエアコンは停止)非常発電で水は出たので良い選択肢だった。また警官が数名常にいるため安心であった。警官は食事の配給も食べていた。最寄のモール内にヒューストン市の警察分署がありそこだけは車が停まっていた。地図上は標高が高くないが近辺では出水は少なかった(一箇所渡れない水溜りがあったとのこと)。近くでトラック配給の予定もあったようだ。

²        懐中電灯は大活躍した。各自に必要。各自のものはポケットに入る小さなものが良いと思う。すべて首からかけられる紐が要る。

²        アマチュア無線設備も事前にフィールドで使っていないと持ち出せない。

²        携帯を乾電池から充電する装置があると良い。赤十字の手回し発電充電器があったのに電源プラグの形が不足した例あり。車載での充電もオプションだが自宅でないと車へのアクセスに難がある。

²        ハイブリッド車は1.5kW発動発電機の代わりに使えるので車の買い替え時に検討をしてはどうか。

²        自宅の電気供給状況がたまたま留守番電話でモニターできたのは良かった。

²        市域情報としては行政のプレスカンファレンスが一番正確で包括的なのでホテルの商用電源が落ちている間は乾電池ラジオでのモニターが役にたった。ただしテレビ局に比べるとプレスカンファレンス中継以外はKUHF 88.7MHzAM792kHzも取材力がないので有益な情報は少なかった。KUHFは一部Ch13の音声を流していたようである。

²        外務省ANPIシステムが使用可能になっていたが現在の運用方法では活用は難しい。事務所単位で使えないこともないがパスワードの周知が問題。生年月日使用必須は壁。passwordの使用・不使用を選べるなら今回も使えたのでは。普段はパスワードを必須にしておき災害時はパスワード使用・不使用を選べるくらいにして普段から使う練習ができないと普及は無理と思われる。今回何名の人が使ってみただろうか。

²         周囲でチェーンソーの使用が多かったが脚保護着はおろかゴーグルもしていない人が多い。プロは木の上での作業ではチェーンソーが落ちないように紐を付けて作業をしている。

²         他の人のチェーンソー使用で枝の切断中に噛みこんでしまったのをはずすのを手伝った。話に聞いたところでは近所の人の新品のチェーンソーが樹上で噛みこまれてしまい、助けに2階の屋根の高さまで木を登った日本人がいたとのこと。木登りの落下防止ロープも要る。

²         NASAでは各種のレッスンを書き込むデータベースが稼動していて、ハリケーンの公私のレッスンを書き込むよう毎日の回覧メイルで連絡が来た。さすが。  

²   2001年の熱帯性低気圧Allisonの雨のご近所の話では、家の周りに置いてあったビニールゴミ袋が流れて排水溝の穴をぴったり塞いでしまうので取るのが大変だったとのことで、家の周囲にある大きなビニール類は事前に除いておくのが良いそうです。


9/10 NASA photo 国際宇宙ステーションから撮影。アイク中心は北緯23.8度 西経85.3度。



 

停電マップ

 

どうしてこういう分布になったのかは全く不明です。停電復旧サイト

Houston – Sept. 23, 2008 – As of 8:36 p.m., CenterPoint Energy has restored electricity to 75 percent of those customers impacted by Hurricane Ike. Of the 2.15 million customers who lost power, the company has restored power to over 1.58 million in 10 days.

Houston – Oct. 2, 2008 – As of 9 p.m. last night, 18 days after Hurricane Ike passed through the area, CenterPoint Energy concluded its emergency operations plan, having restored power throughout its system, meeting the company’s initial projection to have service restored to its customers within two to three weeks. Restoration work continues for about 4,600 isolated cases including customers needing customer-owned equipment repairs. Many of the remaining outages involve customers unable to receive electric service due to damaged electrical equipment or flooding. 



   NASA JSC月刊ニュース紙200811Ike特集号 (pdf)

←スカウトの活動


NOAAIkeデータアーカイブ てんこもりの気象情報集積サイト。被害写真もあります。



Accuweatherのサマリー


Univ. of Wisconsinのアーカイブ (動かなければこちら

同大学ブログのアーカイブ (動画モンタージュ各種) ブログ動画アーカイブその2



UTMB病院は閉鎖されレジデントも他の病院に配置されましたが地域の中核として再稼動させたい意向のようです。

 


Citizen, 1/1/2009

 





NOAAによるIke報告書

 


 



200936

 

16万トンタンカーSKS Satillaと、Ikeにより185km漂流してきたオイルリグEnsco74が衝突。二重船底により油は流出しなかった。アイクではEnsco74を含む4つのオイルリグと52以上のオイルプラットフォームが被害を受けた。行方不明になっていたリグはEnsco74のみだったが衝突によりようやく発見されブイが打たれた。

 

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