タクロウジャシン

「移行のお知らせ」2009年5月1日

 

7年間ご愛顧いただいた独特な中央寄せの日記からブログへ移行しました

あたらしい日記は今後こちら↓で展開します

 

「タクロウジャシン(ブログ)」

http://takuja.blog78.fc2.com/

 

飽きたり融通がきかなかったら旧体制に戻ります

 

「退社」2009年4月28日-30日

 

 

4年間の思い出や書類や特殊アプリがつまったパソコンに黒いCD-Rを飲み込ませて

ハードディスク内のデータを全て破壊するこの作業が、4年間を締めくくる最後の業務

味気ない黒画面に装飾のない英数字が表示される

手順に従って最後に『Y』を選択すると

CDドライブ低く唸り、ガリガリッガリガリッと音を立てて処理が開始される

機会で屠殺される草食動物を目の前で見る気持ち

メッセンジャーでやりとりしたログや、画像や、書類や、ブックマークがこの世から消えて行く

仕事をしやすいように俺なりにカスタマイズしたパソコンが無に帰る

 

パソコンを初期化することがこんなにも寂しいなんて思ってもいなかった

職場のパソコンは俺の相棒だったんだって初期化して始めて気づいた。退職の日。

結果的にこのパソコン初期化作業がこの日一番のセンチメンタルタイム。

 

パソコンのを初期化して、タイムカードを押して、IDカードを返却して

タバコを2箱買って、ウコンを飲んで、いざ送別会、俺の送別会inお茶の水

前に辞めた人も来てくれた、選別にワンピースグッズ(PSPケース/マグカップ)を頂いた

お世話になった人達にちゃんと挨拶をして、そしてめちゃめちゃ飲んだ

そこそこ笑いの取れるスピーチをして、一次会と二次会の胡乱な狭間で一悶着あって

飽きずに飲んで、飲んで、飲んで、終電に飛び乗って、遠藤さん宅で飲んでつぶれて朝を迎えた

 

新緑まぶしいベランダで酷い二日酔いの俺はだまってタバコを吸う

空は間抜けなほど青い、よい天気だ

昨晩は俺にふさわしい送別会だったと思う

そしてあそこでやるべきことは全て終わったんだなとようやく実感してきた

あの人達とあの場所で仕事をすることはもうない

自分が望んで行動した結果こうなったんだから寂しいとか辛いとかは言わないけれど

なんて言うか、虚無感みたいなもんは心にあるのね、虚無感

まあこれも一時的なことでしょう、今はこの感傷を受け入れよう

 

いれたてコーヒーを飲み、2008年にイタリアで開催された自転車レースのDVDを見た後

お世話になりました。また飲もう。つって遠藤さん宅を後にする、正午。

家をでる前、駅への道順を丁寧に教えてもらったけどいきなりに逆へ行く

理由は2つ、天気がいいからってのと虚無感を確かめるため

 

あてどなくふらふら歩いていると猿田彦の神社があるのでお参りをする

なんか見慣れた神社だな、それにしてもじいさんとかばあさんがやけに多いな

ここはどこだ? 王子駅はどこだ? と彷徨っていると、目の前に大門

タイトルは『巣鴨地蔵通り商店街』

巣鴨かぁ、ずっと前にアキコとオガクズ風呂に入ったのも巣鴨だな

懐かしいな、アレ以来だな巣鴨

これも何かの縁だつって商店街に入り、とげ抜き地蔵を参拝し

ゆらゆらと昼の巣鴨地蔵通り商店街をゆく

赤いパンツと赤い股引と赤いシャツ、塩大福に塩みつまめに塩せんべい

ご老体は赤い衣類と塩味の菓子が好きなんだね

JR巣鴨駅を見つけたので高円寺へ帰る、それが29日

 

30日の今日は有休消化で仕事休み、明日より新職場ヘノブファクトリーで仕事が始まる

つっても明日仕事行けばすぐゴールデンウィークだし

初日はだいたいパソコンのセットアップや、細々した説明で終わって

仕事らしい仕事はしないってのが定説だから、さらっと終わると高を括っていたんですが

先ほどこはるちゃんよりメール受信

内容は「明日は自社運営サイトに載せるための写真撮影をお願いします」とのこと

初日からがっつり仕事、しかも撮影、あはは

どうやらのんびりできそうにもありません

こはるちゃんに「わかった。まかせて。」と返信した後

ワンピースマグカップとルフィフィギュアとPSPが入った鞄に

充電した電池を8本とUSBケーブルを追加する。明日からだ。

 

 

 

 

 

「退社イブ」2009年4月27日

 

 

退社イブ、明日で派遣社員として4年4ヶ月勤めた仕事もおしまい

1年以上、ひとところで仕事したのはここが始めてだったし

ちゃんとした「社会」もここが始めてだったし

ここで得た金で生活を成り立たせたのも始めてだ

そういう意味じゃすごく有り難い、アディオスアクセス

でも今思えば、絹さんがいた前半2年が一番俺この職場で輝いていたと思う、と同時に

やはりあの時、二年前に辞めておくべきだったとも思う

辞め時を逸した、それが若干の後悔

後半の2年はこれといって特に何もなく、ただただ惰性で勤めていた

おかげといってはなんだけど、繰り返すその惰性の日々で離婚の傷はだいぶ癒えたと思う

癒えたね。うん。

4年4ヶ月、すこし名残り惜しいと感じる部分もありますが

かといってここでもう1年働こうという気にはなれん!

この先には何もない! 休み疲れた!

いまは今週金曜日からはじまるヘノブ一味での生活

そこでの俺の活躍っぷりにわくわくする、と同時に、

期待に応えられるか。うまくやれるか。緊張と不安からひとくちゲロを吐きそうになる

ああ、ああ、ちゃんとやれるかなぁ、わからない、わからないから刺激的だ

 

ともあれ明日は最後の労働をバシッと決めて

お昼休みに激昂ラージャンの角を折り

夜、ウコンを飲み、お茶の水へ行き

「さよなら林田さん大会」にてはっちゃけて来ます

胃に腫瘍できちゃうくらい飲み、区切りをつけてくる。

 

 

 

 

「汚れの本質」2009年4月26日

 

【 春の雲 】

 

 

 

雑巾臭い生乾きのタオルは『粉末界の生き字引"ミョウバン"』を溶かした水に漬け込む

皮脂汚れがついたTシャツや衣類の染み抜きには『粉末界の期待の新星"セスキ炭酸ソーダ"』を溶かした水に漬け込む

シンクの水アカ/トイレの黄ばみには『粉末界のファッションリーダー"クエン酸"』を溶かした水を吹きかける

ゴミ箱の脱臭/ガス台の油汚れ等には『粉末界のカリスマ"重曹"』を溶かした水を吹きかける

さすればタオルは生き返り、シミは抜け、水回りは清潔になり、ガス台も油でねとねとしない

これら粉末があれば、大体の汚れ/臭いを取り除ける!

汚れのペーハー見極めてアルカリ/酸を使い分ける生活術! かっこいい。

自分は、この「汚れのペーハー見極める」ってあたりにですね、心をこう、がっちり鷲掴みされて

爾来、こつこつ粉末集めてようやくコンプリート。

まさかセスキ炭酸ソーダが100均に売ってるなんて夢にも思っていませんでしたよ。おほほほほ。

その辺の新米主婦よか「汚れの本質」を心得ている29歳男子

鍋を振るい晩飯を拵えていると、ふと、このままでいいのか?とたまに不安になります

一人暮らしが板につきすぎてはがれない、女人いらず日曜日

まだみぬ新しい粉末はないかと近所のドラッグストアへ出向き

財布を忘れたことに気づいておずおず帰る。野良猫は追いかけない。

 

 

 

 

 

「にくさい」2009年4月25日

 

 

4月25日、今日で、俺29歳になりました

「29歳 29歳 29歳 29歳 29歳 29歳…」

「29歳」を声に発して連続して言うとだんだん

にじゅうの"じゅう"の部分、きゅうさいの"きゅう"の部分がめんどうになり

"にじゅうきゅう" をいずれ "にく" と略して "にくさい にくさい…"と連呼するうち

気管支におかきの破片が引っかかっていったん息詰まって "にくさい" が "にくくさい"となります

"にじゅうきゅうさい にじゅうきゅうさい にくさい にくさい にくっくさい にくくさい"

にくくさいにじゅうきゅうさい、肉臭い29歳

そろそろ耳の裏、首筋うなじより発せらるるであろう甘苦く肉臭い加齢臭にも気をつかうお年頃

あれよあれよと20代最後の年を迎える

来年は30だ。人生は上々か?

この年をひとつ重ねた晴れの日にも関わらずおんもはしとしとと陰気な雨、鈍色曇天

過日購入した空色の腕時計をこの日はじめて装着して、かるく心弾んでも

本来なら今日共にケーキを食ったり、肉臭をかがせて苦笑いしてもらおうとしていた

アキコはぐペアは、2人同時に高熱ノックダウンでお家にこれない。

 

すこぶるざんない

お腹が空いたよ

雨の中、近所のコンビニへカップ麺を買いに行こう

いや、誕生日だから奮発して弁当にしよう。今日は。今日の日は。

 

 

 

「緊張の上塗り恥の上塗り」2009年4月20日

 


例えば合コンとか、スーツ着ている人との会食とか、職場での飲み会

或いは初めてお会いする大人の方々との酒を挟んでの交流の場では俺

一見へらへらぼっちゃん決め込んで愉快にお酒を飲んでいるように見えても

その実、自分でも気づかない深層心理の奥底では、どこか緊張感を漲らせて酒を飲んでいるわけで

緊張感をみなぎらせているから心が開かずノンスロットル

つまらないえあけじゃない、楽しいのは多いに楽しいのだけれども、飲めども飲めども酔わん

こういう「どんなに飲んでも酔えない空間」ではまず酩酊はしない、泥酔もしない

そういうわびさびを意識しながら酒を飲むから結句酔わない、酩酊しない、泥酔しない。

当たり障りのないことを言ってその場を和やかに慎ましく楽しむ

間違っても後先考えず大見得は切らない、大風呂敷を広げることもないはず、だのに、だったのに…

 

来週からお世話になるニュー職場ことヘノブファクトリー様より「歓迎会にこないかい?」メール受信

いや君の歓迎会じゃないよ。君はまだ入社すらしていないじゃないか。

そうそうこはるちゃんの、こはるちゃんの歓迎会があるからこないかい?とお誘いを受け超行くと回答

約束の日、平日、夜、渋谷へとヨタヨタ出向き

お野菜をメーンに扱う小洒落た居酒屋の小洒落た一角で小汚い自分は

和気あいあいと有機野菜をあてにビールを飲み飲み飲み飲み飲み飲みまあ飲むわ

ノンピロリだもの心置きなく、ご先祖のため、業がゆえに麦酒飲みのみ

目の前にある酒は余さず飲んで飲んで、結句、飲まれる

といってもね、これは職場の飲み会、高円寺の飲み会じゃないよ、場はわきまえている

ましてや現時点で未入社会社飲み会、大義名分はこはるちゃんの歓迎会、俺のじゃない

この要素だけでも充分深層心理緊張みなぎらしには事足りているけど

そこへさしてゲストとしてweb業界の貴公子ことボトラ兄さんが出席している手前

男性苦手意識の癖が見え隠れする自分には緊張の上塗り、恥の上塗り

ほらこれこそ件の「どんなに飲んでも酔えない空間」であることは確かだし

出だし緊張感を漲らせて酒を飲んで話していたはずだったのに

なんでかな、居心地が良いのかな、居心地がいいんだな、居場所やもしれんわぃこかぁ唸って

わしゃしゃしゃ飲んでいるとそこへサプライズでケーキが運ばれてきた

誕生日おめでとうつってプレゼント(チョッパーのジグソー)まで頂いた

まじでか!? うわっみんな笑っている。なにこれ、未入社俺に対するこの愛

俺すごく愛されているんじゃないの、いや愛されているの、ありがとう

でも「こういう時どういう顔すればいいのかわからない」俺のコールに

「笑えばいいと思うよ」と的確なアベさんのレスポンス

 

この辺からだいぶおかしくなってきたな、もしくはとっくの前から可笑しかったのかもしれんけど

これは大丈夫だな、自分を解放しても大丈夫そうだ、つってフルスロットル

 

渋谷に差し込む朝日と始発に乗り込むサラリーマン

意識諾々、神経衰弱

山手線で寝落ち、総武線で寝落ち、今自分がどこにいるのかもわからねぇ

わからねぇけど、車窓から差し込む陽の光は強さを増している、眩しいな

ぐでぐでの頭で記憶を遡り、恥をみつけて、穴を探した

 

「絶対やれるよ!ってぇかやってやるよ!というよりもやれる気ぃしかしない!」

ヘノブ社長を前にして。やり手の営業マンを前にして。web業界の貴公子を前にして。フルスロットル。

間違った方向にエンジン全開フルスロットル

ああ… なんて大見得を切たんだろう、そして俺はまた醜態を… 穴があったら入りたい

 

入社前からハードルが上昇、跳ばないで下をくぐった方が楽なんじゃん?っつわれるくらい上昇

「期待されてんのかな、俺。期待されてんだろうな、俺。どっちゃにせよ義をなそう。」

まあ言ったことに後悔はしていないからいいけど、それで誰かを傷つけたとしたら辛いな。

 

といった感じで、ここは酔えない空間ではありませんでしたけど次回からは自重します体でやっていくとしても

新しい職場での生活はおそらく、予想よりも厳しく、予想よりも充実したものになるであろうと予想をする。楽しみだ。

 

 

 

「鼻で2度笑われる」2009年4月15日

 

プシュ

がふふ

プシュ

がふふ

プシュ

げふげふげふ

 

「大丈夫ですか?」

「らいじょううえす」

「ではもう一回いきますね〜」

と馴れた調子で看護婦さんは俺の鼻の穴に細い鉄の管を突っ込み

なんやしらん薬剤を"プシュ"っと噴射するたび

俺、いちいち"がふふ"と咽せて軽く涙目。

左右1セット都合3セット噴射。

 

「はいおしまい」

「ごふごふごふ、ありがとうございます。ところでこれ何薬ですか」

「これは鼻腔を広げる薬です、次第に効いてくると思うのでちょっと待っていてくださいね」

そう言い残して「健康的なYOUみたい」な看護婦さんは奥へとひっこみ

「きっと定価で買ったら何千万もするんだろうな」と思わせる医療マッシーン搭載のベッドの上で俺は

とめどなくあてどないことを考えていたら「看護婦」「医療マッシーン」のキーワードとこのシチュエーションが単純に結合して

極当たり前の流れでエロ妄想に到着してしまい、午前10時、お日様も高い時刻だってぇのに

何千万もするであろう医療マッシーン搭載のベッドの上で、俺、軽く勃起

医学用語では「甘勃起」と呼ぶこの現象に見舞われてしまい

あわてて心の中で般若心境を唱えました

だがしかし、困ったことに般若心境の心得のない自分は

心の中であろうが井戸の中であろうが般若心境を唱えられるはずもなく

そうこうするうちに勃起がぐいぐいいきそうなので、色即是空

色即是空、色即是空、色即是空、色即是空、色即是空、色即是空と

ぎりぎり知っている般若心境の一節をヘビローテーションで唱えまくり、どうにかことなきをえました

 

「俺はなにをやっているんだ」

自分のアホらしさと空しさに心も体も浸して、ため息でも吐こうと鼻から息を吸い込んではっと気づいた

めちゃめちゃ呼吸しやすい、なんでだ? ああそうか、鼻腔薬が効いているのだ!と妙に幸福だったのを憶えています。

 

*看護婦さん上手(かみて)から登場

 

「どうですか? 効いてきました?」

「はい、効いてきました」

「では麻酔薬を鼻腔に流しますね」

と言って、透明なゲル状の薬が充填された針のついていないプラスチック製の注射式を鼻の中に突っ込まれ

「少し気持ち悪いかもしれませんが我慢してくださいね」というセリフを最後に

ぐにゅぅぅぅぅとゲルが鼻の中に押し込まれる、げふげふげふ、なんか苦甘い

「はいおしまい。大丈夫でしたか?」

「大丈夫です。なんか梅みたいな味がする」

「梅?」

「梅ミンツみたいな味がする。舌に触れていないのに、なんだこの感覚」

「はいじゃぁもういちど仰向けになってください」

「まだなんかあるの?」

「これです」

と言って看護婦さんがみせてくれたのは、なんだ? なんて言うか… 細長くて透明なプラスチック

そのまわりにも透明ゲル薬がべとべとに塗り付けられてある

「これを鼻に詰めます」

で、言われるままプラスチックの棒を鼻に詰め込まれる

詰め込まれたまま1分ほど放置、こみ上げてくる笑い

「うひゃひゃひゃ」

「どうしました?」

「鼻に棒を突き刺してのが可笑しくなってきた」

「鏡みますか?」

「やめて。こんな間抜けな姿みたくないっす」

「写真撮りましょうか?」

「勘弁してください。」

「でももう一本ありますからね」

「もうなんでもいいです」

「次はもう少し太いの入れて馴れさせます」

「あーなるほど、拡張っすね」

 

予告されたように、一本目を抜き、二本目を差し込む、麻酔薬が効いているので痛みはなし。

 

*看護婦さん上手(かみて)へはける

*医者、上手(かみて)から登場

*続いて看護婦さん上手(かみて)から登場

*証明OFF

 

 

「では今から胃カメラいくので」

「よろしくおねがいします」

「鼻からだからそんなに苦しくないけど、苦しくなったら言ってね」

「ほい」

「モニタ見える?」

「見えます」

「これ見ながら説明していくから」

「あ 俺見てもいいんですね」

「もちろん。では行きます」

 

HBのエンピツ、もしくは2Bのエンピツ…まぁ色の濃さはこの際関係ないな

つまり標準的なエンピツくらいの太さのカメラが鼻の穴を大写しにしたのも束の間

なんの躊躇も恥じらいもなく、くいくいと体内に押し込まれていく

モニタにはもちろん俺の体内の映像

詰め込まれたカメラが喉を圧迫しているので、今見ているこの映像は食道付近だろうなぁって思う

そこそこ痛いけど、我慢できないほどの痛みじゃない

口から入れるタイプの胃カメラならこんな悠長な感じじゃなかったんだろうな

 

そうこうするうちカメラは食道の最下部にある弁を突破

弁を越えたその先にはピンク色の丸い空間が広がっていた

 

「はい、ここが胃です」

「やっぱそうですか、けっこう綺麗なもんですね」

「んー、でもね、ほら、歳のわりに胃が荒れているよ」

「そうなんすか?」

「んー 荒れてるね、胃炎だね」

「胃炎ですか。これって十二指腸も見れるんですか?」

「もちろん見るよ」

「へぇすげぇな」

などと感心する反面、自分の体内の様子を見ていると

今まで味わったことない感覚がじわじわと押し寄せてきた

俺の体のなかってこんなんになっているのか

食道も胃袋もがんばって活動しているから俺は笑ったり遊んだりできているのね

俺は単一で生きているのではない、各種内臓に生かされている

そんな努力を知らず欲望のまま食い、欲望のまま酒を飲み、不摂生な生活を重ねている

いまこうしている間にも胃袋も心臓も肺も腸も活動している

その様をカメラを通して映像として見ている

この活動が止まったら「死」

この映像の中のモノ、つまり俺の中のモノが止まったら「死」

そう思うと見ていられない、けど見なきゃだめだ

これからはもう少し内臓を労ろうと思う。

 

 

「ああ」

「どうしたんですか?」

「いやね、この先に十二指腸があるんだけど邪魔されて…」

「邪魔? 邪魔とは?」

「んー 大丈夫だよ。ちょっと伸縮しててね」

なんのことかさっぱりわからず、モニタを見ていると胃袋が波うっている

日本海に打ち寄せる波の如く、ピンク色の胃袋がうねうねうねとこちらに向かって打ち寄せる肉の波

「なんすか?先生これ!?」

「これ胃の蠕動運動。」

「これが蠕動運動ですか、見応えありますね」

「このせいで先に進めなくてね」

「あー なんかすいません」

「止んだ」

俺の胃袋が他人の進行にご迷惑かける貴重な体験

 

胃カメラ、胃袋から十二指腸へ

十二指腸を一通り眺めて、再び本拠地胃袋へ戻る

すると今まで動きのなかった看護婦さんが動きだし

なんかワイヤーみたいなものを医者に手渡すと

胃カメラコードの中にワイヤーをしゅっこしゅっこ滑り込ませている

なんぞや?と脇目でその行動を見ているとみょんって出てきた

モニタの下、おそらくはカメラの下にあるであろう穴からそのワイヤーが飛び出して来た

って、ワイヤーワイヤー言ってるけどただのワイヤーではない

先っちょに洗濯バサミみたいな器具が取り付けられたワイヤーであって

医者が手元で操作するとワイヤーの先のバサミが開閉する

イメージとしてはキングギドラを銀色にして首2本なくしてすっげぇ小さくした感じ

ミニドラゴン、ミニドラ、それがカメラを伝って胃袋に登場

なにすんのかなあと見ていると、ミニドラ、胃袋に噛み付いて肉片を加えたまま引っこ抜かれる

多分俺の細胞を採集しているのだろう

それを数度繰り返し、じゃぁ帰るかみたいな感じでカメラは胃袋をあとにして

食道を駆け上り、鼻の穴から現実世界に戻ってきた。

 

 

「もしもし?」

「どうだった?」

「なんでもなかった」

「は?」

「潰瘍はみつからなかった」

「じゃぁなんだったの?」

「胃炎」

「言ってよ」

「だから"胃炎"だって」

「ああ胃炎ね」

「歳の割に胃炎がひどいね。って言われた」

「じゃぁ結局胃潰瘍じゃなかったのね」

「うん」

「わざわざ胃カメラ飲んだのに?」

「そうなんだよ、どうしよう俺、ほうぼうで『医者に胃潰瘍或わ十二指腸潰瘍の疑いがあるって言われている』って言いふらしちゃった」

「ははは」

「でもまあ胃潰瘍じゃないにこしたことはないか」

「そうだね、よかったじゃん」

「だよな、結果オーライだな」

「今日はどうするの?」

「それなんだけどさー、本来は、今日は仕事休もうとおもってたんだけど」

「うん」

「診察料がすげーの」

「いくら?」

「8400円!」

「高ーい!」

「だろ? 高いよなコレ!!」

「ちょっと高過ぎ!」

「『お会計8400円です』っつわれて、ショックで胃に穴空いちゃうと思ったもん」

「ふっ」

「アキコ、お前、鼻で笑うなよ」

「じゃぁこれから仕事行くんだ?」

「行くさ、働いて取り返してくるよ」

「薬は?」

「薬? でたけどいらねぇ。漢方薬だし、これ以上の出費は抑えたい」

「まぁね。でもまだ痛いんじゃないの?」

「それなんだけどさ、不思議なことに「潰瘍じゃない」と診断された途端もうなにも痛くない」

「ふっ」

「お前はまた鼻でか!?

 

 

 

 

 

【 結果オーライ 】

 

 

という訳で、ピロってなかったです

ノンピロリでフィニッシュでした。

 

 

 

 

 

 

 

「手を振るエキゾ」2009年4月14日

 

21時以降は絶食だってのにもはや20時半、まだ高円寺駅についたばかりであって

これから東急や西武やなんかいって食材を購入

鍋を振るい湯を沸かし、しこうしてお菜を拵えて白米の上に乗せて食う

なんてな段取りをしていたんじゃぁとっくに21時を回ってまう

明日はカメラを飲み込むのだ、胃に内容物があったのでは病院の人が困る

なんとしても21時以前に飯をくわねば、こういう時きゃぁ総菜だな

コロッケやタラの芽の天婦羅かなんかを買って家でちょちょいと食ったろかしらん思って

ぷらぷら自転車を漕いでいると突然の強い雨に見舞われて、びしょびしょで、ぐずぐずで

水に濡れただけなのに小豆入りのパンの人よろしく、やる気や意欲や力がふねふね消沈し

結句、某牛丼屋にて米肉野菜と豚汁を胃袋に納める作業、店員さんがインド人、エキゾチック。

ほどよく胃袋を満たして、カウンターで一息つく

空になった大振りのお椀に目を落として、改めて思う、豚汁って、旨いな。

なんなんだろうこの独特な風味? 豚のエキスだけじゃこの旨さはだせないよ

やっぱり決めては根菜だな、里芋、大根、人参…いろいろ入ってるけど

なかでもゴボウの風味が群を抜いている、豚汁は豚とゴボウでなる、これを一家言として納めよう

思いのほか旨かった、充実感が体の芯を温める

芋煮会への憧れがまたひとつ高まった、高円寺芋煮会、語呂もいい

エキゾチックインド女性に「ごちそーさん」言って弱雨になった外にでる

止めておいた自転車にまたがりさぁ家に急ごう思った矢先

雨の中、件のエキゾチックが店を飛び出して来て俺に手を振る

まじか!?と思った

ほれたのか!?と思った

国際結婚かよ、まじでかー、俺インド語ナマステーしか知らんぞ、無理無理無理

いくらカレーが好きだとしても俺が好きなのはニッポンのカレーだし

それにインド風の結納とかも知らん、ってかそれ以前にエキゾチックの名前すら知らぬのだよ

あはは、まいったな、異国の女性は押しが強いな

「恋はいつでもハリケーン」って東の海に伝わる言葉があるけど

これか? これのことか? まさしくハリケーン。

なんてなことを一瞬で考えるも現実はとてつもなくつまらなく、間抜けだ

エキゾチックは俺に向かって手を振ったのではなく

まぁ結果として手を振ったのだけど真意はそこじゃない

エキゾは手に持ったぴらぴらの紙を俺にみせるため結果的に手を振った

ぴらぴらの紙、っつーか、レシートね。それも未払いのレシートね。

そこに愛情もハリケーンも結納もないよ

彼女の心の中にあるとすればファッキンジャップってスラングぐらい

 

合点承知した自分は慌てて自転車から飛び降りて、小雨の中ちょかちょかと小走りで店に入り

「スマン!完璧に忘れてた!」とエキゾに言うも、飽きれたはてたエキゾは愛想笑いひとつなく

抑揚のない声で「お会計、510円になります」とだけ言う。

 

510円を支払って雨の中にでた自分は自転車にまたがって家路につく

後ろを振り向こうともせず、まっすぐ帰る。

筋肉がまだ痛い、胃袋が痛い、なんかいろいろな所が疲れている。

 

「21時以降は絶食」と言われると無闇に腹が空いてきて困る

こんな日は、さっさと寝てしまおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

Copyright - © 2001.3.13-2008 takuroujasin All Rights Reserved-ver.17