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一日 10+8鳥

【 落陽 】
一日が始まって、一日が終りました。
繰り返すは日々。
その中で生きているだけ。
肉体と精神と感情と時間と記憶と欲と変化の一固体。俺。
−総べては繋がっている−
鳥も空も海も空気も花も、夕陽も、総べては繋がっている。俺と境目なくひとつである
そう思える時もある、でも思わない時の方が多い。
思おうとさせしない。繋がっていないのかも知れない。
繰り返す日々。 日々、也。
秋の夜長 10+5+6+7秋

【 ピーマンに畜肉つめる 】
お金/貧窮/夢/現実/将来/人生/恋人/今年/来年/うだつ/秋。もう、秋。
自分を取り巻く環境は一向に好転せぬまま、世間の空気は乾き、冷たい風が肌を擦り、あちこちでキンモクセイの匂いがする。
俺は時間の流れにあがなうことなど出来ない上、その限られた時間の中で何かを成し遂げることも出来ず日々悶々とくらし
上に羅列した語句が輪となり反時計回りにぐるぐると、ぐるぐると頭の中を駆け巡り、這いずって、安心できない。電車の中で檸檬。
著:梶井基次郎の檸檬を読んでも、漢字ばかりで頑で、それでいて複雑な言い回しに集中することなど出来なく、
目で字を追って、追うだけで頭の中まで言葉が届かない。隅っこに座れない。隅っこに座りたい。鉄パイプにひじを乗せて安定したい。
向かい座席、右斜め前、右端から3番目に座る女性がとても美人で、ニ度目が合う。
俺、慌てて、が、慌てている様を察しられぬように、不自然な動作をさも自然であると欺いて目を背ける。
生きづらい、向かいに美人、一向に文章が頭に入らない。
午後4時を少し回っただけなのに、車窓からの風景はすでに夕。
日没が速い、秋なのね、秋なのだ。そう実感すると寂しくなる。今年も終る。
錦糸町で乗車してきて隣に座ったスーツ姿の40代のおっさん俺の陣地に侵入してくるので、
負けじと俺は肘膝の角をたたせて譲らずに頑張る。向いの美人とはあれっきり目も合わない。
何もかもを忘れて本に没頭したかった、いや、むしろ、心のわだかまりを一瞬でも亡くしたかった。
知らない街で降りることにした。
そこからアキコの街まで歩いていこうと決めた。下車。げしゃげしゃ。
勝手知らぬ街。妙に古本屋が多い。薄暮の中を自転車に乗った女子高生が俺の横を過ぎ去る。ずっと昔に付き合った彼女と同じ匂いがした。
同じ匂いがした、同じ匂いがした気がした、同じ匂いがした気がしただけで、その匂いをはっきりとは憶えてはいない、ニュアンス的に同じ風。
何かにすがりたいだけだと思う。それが過去の女でも今の女でも。キンモクセイでも。
大きな手のひらで、俺の水分を一滴残らず掬いとって欲しい。そこでじっとしたい。そう思う。
何件かあるうちの一件の古本屋に入って読みたい本を捜す、お目当ての本はどうやらない。店を出る。夜。
夜は好きだから寂しくはない、余計な物が闇に隠れて見えないぶん気兼ねなく歩ける。
祭囃子が聞こえる。閑散とした商店街のあちこちから祭囃子が聞こえる。
民家の前で女の子がひとり、流れる祭囃子に合わせて独自の踊りを踊っている。
この子にも聴こえてる、俺にも聴こえてる、俺だけが聴こえているわけじゃなさそうだ。
暗い路地、法被をきた老人とすれ違う、汗とアルコールの匂いがする。祭囃子が聞こえない。
暗い路地を歩きおえると大通りにでて、信号の向こうにちいさな神社があってオレンジ色に光っている。
ここでお祭りをしているようで、いくつも提灯がぶらさがっている。
石の階段を昇るとあたりは同じ法被をきた人ばかりで、まん中に置いてある神輿のぐるりに集まって談笑している。
俺はそれを遠目で見て、露店があるのでアキコに食べ物でもお土産に買おうかと思い近付いてみると、
お土産に相応しい物を扱っている露店はなく、どれも射的だとか輪投げだとか宝くじばかりで食べ物が売っていない
じゃぁ射的でもしようかと思ったが、子供ばかりいて入る隙なんてなく、切り株の上に立ち呆然と子供を見ていると
どうやら一般客的な人間は俺だけであると気付き、気付くと妙に視線を感じて、とても居づらくなってきて、射的もせぬままいそいそと神社を後にする。
気がつくと自分は何処を歩いているのか皆目見当がつかなくなって、曲がるより真直ぐ歩く方が安全だと思い道なりに歩いていると橋にさしかかる。
目の前の暗闇の奥に河らしき黒い液体の流れが見えて、土手の上をひたすら歩く。
土手の上は何もなく真っ暗、左を走る車のヘッドライトと、車道に等間隔で設置された外灯だけが唯一の光源。
外灯の光は土手の上からみると光の粒で、その光の粒が右に緩やかなカーブを描いて遥か彼方まで続いている。
点、点、点、と、とても綺麗だ。
土手を降りて、河岸、芝生が一面に生えた埋め立て地。
どうやらここはタマガワだってことに気付いたのは半分くらい歩いた時で、心の隅で幽かに期待していたナナボシ説は儚く消えた。
ナナボシ、ナナボシ、ナナボシ、三度口にだして言う
土手の上は暗闇だし人も居ないので恥ずかしがらずに言う
かれこれ2年以上行ってないな、と思い、今度アキコと行こうと思った。
時刻は午後七時少し前。少し肌寒く、風は冷たい。
こんな日に長袖の服を着て来た自分が、少し誇らしく思えた。
メルアド 10+4糞

【 初號機 】
タイトル:『当選おめでとう!』
抽選であなたが選ばれました!500ポイント分を無料でプレゼントします〜
たくさんの女性があなたからのメールをお待ちしてます。まずはココをクリック!!
…
タイトル:『秋の夜長に…』
●都内在住の女子大生です☆ 割きりでおつき合い出来る方からのメール待ってま−す¥
●結婚して5年、最近夫は忙しくて相手してくれません…
…
タイトル:『アユミさんからです』
連絡がないとアユミさんからクレームのメッセージを頂きました
是非連絡して下さい ××@〜〜.ne.jp
だとか、クソっ!どクソっ!アホか!
なんで女ばっかり飢えとるんじゃ、男の方がかっつかつに飢えてるわい、やいわいわい。
それにちらちらメール打ち合うだけで、楽して女が手に入るかいドアホめ!じゃったらばこんなに苦労せんわい!
こんな楽して女が手に入る世間ならば今頃、俺は47人の裸体の女性が担ぐ神輿の上でへらへらふ菓子を頬張って、
山手線の駅長の名を渋谷から時計回り順に連呼しながら、
空から降ってくる小石大のマシュマロを橙色のプラスチックバットで打ち返しては、
3メートルおきに設置された鬼の人形の的にぶち当ててます! 百発百中です! ハーレムです! と
一日に20〜30も送りつけられてくる女も男もなめた腐った内容の迷惑メール(エロメール)に憤怒しながら
「これを送りつけてきた業者及び関係者各位に、目を覆いたくなるような災いが降りかかりますように」と念いを込めながら
甘殺意を背中に感じながら消去する
そして、このような日々が何ヵ月も続き
日々発信され続ける糞メールに耐えかねてメルアドを変更を決意
こっちがわざわざアドレスを変えることに憤りを感じたけど変えたった。
即座にぷっつりメールが切れた。良い気味だ。
もしも迷惑メールに喘いでいる方がいらしましたら即座にメルアドを変えるべき、変えるべきなんです。
神輿に。神輿に乗りたいんです。モテたいんです。
夕日 10+1+2+3宴

【 一年四ヵ月 】
遠く遠く、遥か彼方、街の端が真っ赤に滲み溶けて燃えるような夕暮れ、
その赤を全身に浴びて夕焼けへ向かう自転車に二人乗ってアキコと俺。
出来るだけ速く速く夕日に向かって漕ぐが後輪は空気が抜けていてボフボフと頼り無く、
俺の漕ぐエネルギーが十分に伝わっていなくて思うように進まない。
それでも家まではあと少し、あの真っ赤な夕日を忘れるな−と唄歌い、
“泣くには若すぎるだろぉ”と二回目を掠れように叫んだ頃、ようやくアキコハウスに到着。
夕日はまだあの場所にある。午後五時十二分。
しかし、のんびりしている間は無い、刻一刻と時は過ぎ冷え固まっていく。
家の中に入ると、当初の計画通り、アキコはタクロウガーデンへ行き段ボールをひっくり返す、
そして、箸、皿、缶ビール、缶酎ハイ、ケーキ、パック寿司、コロちゃんコロッケ、サラダ、塩辛を簡易テーブル(段ボール)の上に並べ
タレと塩の味が混ざらぬように細心の注意を払って、皿にメインディッシュの焼き鳥各種を丁寧に並べる。
アキコがガーデンで作業をしている間、自分はアルミ箔で拵さえた鍋に豚や白菜、豆腐、ネギ、しめじ、キムチ等々が
ぎゅうぎゅうに詰め込まれた簡易チゲ鍋セット380円に火をかけ、さえ箸でぐちゃぐちゃ弄り、奉行的ポジションに従事する。
それから約五分後に、鍋はぐつぐつと煮え始め、豚肉がピンクから白色に変色したところを見計らって火から放し、
ディズニーアニメ「マ−メイド」に登場する黄色に青縞の魚を模した鍋掴みに手を差し込んで熱々の鍋を掴むと、
直ぐさま、チャリ−、ルーシー、サリー、ペパーミントパティ、シュローダ−が描かれた陶器製のスヌ−ピーの鍋敷きにこれを乗せ、ガーデンへ運ぶ。
万全つくした、手を合わせ心の奥底から感謝の意/敬意を払って『頂きます』と合唱
付け加えて、交際期間一年と四ヵ月を過ぎたことを祝い、カンパーイつってごくごく酒を飲む。夕日、マンションの陰にあって見えない。
そして、焼き立てで持ち帰った焼き鳥を一口、冷めぬようにこれだけ急いだのはコレの為で、
満を期して鳥もも(タレ)を齧る、そして沈黙。熱からず、冷たからず、温い。
確然としながらも口の中では鳥の脂とタレの甘さが広がる。
俺は多少温くても我慢しようと思った、まずくないし、むしろ旨いしね。それにコロッケも塩辛も鍋もある。
だがアキコは温い焼き鳥に妥協を許さず、キッチンへ行き、電子レンジでチン決行。
もわもわと湯気を上げ、端々がうっすら焦げ目でかりかり、芳醇な薫り漂い。喰う。旨し。
夜空の下、涼しげな風が吹く
段ボールの上の焼き鳥を喰い、バケツの上の鍋を摘む。秋。
食後、60円のデカイ指輪をアキコにプレゼントする
青林檎の味がして甘い。
空砲 9+30雲

【 木犀 】
朝、出勤するアキコを駅まで見送る。
空、空は雲ひとつなく真っ青で、のっぺりと地球を包んでいる
陽射しの端々には薄く黄色がかっていて、しゃりしゃりと刺す。
太陽は暖かいのに風は冷たい。
日だまりを選び選び歩いた。
見送られるのが嫌いなアキコが改札を通って柱の陰に消えたのを確認してから
振り返って家に帰る
向こうからスーツを着た紺や鼠色の集団が押し寄せてきて、俺に目もくれず同じ歩調で横を過ぎ去っていく
空は真っ青、キンモクセイの匂いがする。
「パンっ」「パンっ」「パンっ」何処で空砲が鳴る
浮かんだ丸い煙が流れるのを見た。
はずかしめ 9+29夕

【 あの真っ赤な夕日を忘れるな 】
風呂場で俺だけ裸になり、ひっくり返したバケツの上にだまって座る。
そんな俺を見下ろすカタチでバスタブの縁に腰掛けたアキコは、
右向いて、左向いて、動かないで、喋らないで、うっさいから喋らないで、きもい、などと俺をなじり、
俺も反発することなくいちいちその命令に準じて、
バケツの上を、俺、裸の俺、くるくる回る。
くるくる回りながらも、くるくる回っていると、まるで自分は操り人形よろしくMタイプの人間であると錯覚してきてしまい
ニュータイプの人間ではないのやも?とうすうす感じ始め
どこかやりきれず、こんなはずじゃなかった、と、ついつい漏らす。
敗北感を伴った後悔の念が風呂場の中を充満させるほどに渦巻いて、くるくる。バケツの上に鎮座。
自分はどうにか一矢報いたいと大和魂を持って立ち向かうが
アキコは刃物を持っている、取っ手がピンク色の鋏を持って、シャギシャギと軽快で歯切れの良い音を幽かに鳴らせながら開閉する
一方俺は裸でそのうえ無職だ、バケツの上だ。一矢報いる手駒がない。
力なく、ただ、ただ、「毛先は遊ぶ感じで‥」とただ、懇願するのみ。
それから、石のように沈黙してピクリとも動かず俯いていると
次第次第じっとり汗ばんできて、そこに切り落とされた漆黒の毛髪が付着して、やがて獣化する、。ちくちくと痛い。痒い。
だまって夕日の事を思い出す。
「 …あ゛っ…… あ〜〜 …まぁいいか……… ‥・」
背後でアキコが何か呟く。
三発
かんせい!! 9+27+28完

十六完成!!! 遅れてすんません。
おやすみ。