「あてのない1日が静かに消える」 2008年1月13日

【 お飾り 】
寒い冬は永く辛く、できることなら温まりたい、ほっこりしたい、ゆったりしたい
はやく春になって欲しい、身体も心も春の訪れを切望する歓迎する
ポカポカと陽光を浴び、心は福福と幸福に満ちあふれ、草木芽吹く春、桜舞う舞う春
そんな春を心から歓迎いたいします、必要あらば心を折って迎合だっていたします、来れ春!迎春!
といった気持ちを込めた「迎春」正月しめ縄飾りをドアから外し、鞄にこれを詰め込んで、
寒風吹き荒む底冷えの日、寒い寒いと嘆きながら善福寺川を沿って進んで、八幡八幡宮に参る
紅白だんだら幕に囲われた境内の或1箇所で、正月飾りを分解して燃える縄だけ納めます。


【 ちりとり鍋とモツ鍋 】
宵は高円寺のモツ屋でユウコさんとモツを食う
新年会、兼、慰労会
味噌味のちりとり鍋、チゲモツ鍋、それぞれにふんだんにぷりぷりモツ
上等な和牛A4A5のモツのみを使用しているだけあってすこぶる旨い
ひさびさにお店で旨いもん喰った
ひさびさの舌鼓連打
ポンポンポンポンポンポンポンポン

【 ギャラリ 】
帰り際、高円寺に昨年オープンしたギャラリーに寄る
洒落たこじんまりとしたギャラリー
軽く個展するには立地的にも好都合だけど
中で酒を飲めないっぽいので二の足を踏む
毎晩どんちゃん騒ぎができないっぽいので二の足を踏む

【 閑人 】
ユウコさんと別れ、夜深くなっていよいよ寒い街を疾駆中
そういやバータンが暇を持て余していると言ってた事を思いだす
電話をすると中野佐世保バーガー2階で、コウジと共に暇を持て余しているという
かく言う自分も暇を持て余している、このままお家に帰ってユウコさんから借りた逆転裁判をやるのもいいが
それはそれで空しいし、どうせなら人にあうべきだと思い
環七沿いを北上する、ミッシェルのガールフレンドを3回聴く、夜によくあう音楽だ。
佐世保2階、コーヒー一杯で3時間粘る
女の話、漫画(ワンピース、ナルト、ジョジョ)の話、ゲームの話をうだうだする
周りの女性客から「この非生産種族のクソおたく野郎共め!滅亡せよ!」といったオーラをばしばし感じつつも
そんなん気にしていたら物語の本当の本当には辿り着かないと己を奮い立たせ
それぞれの作品の今後の展開などを議論した
こういう話をしている時に「ところでダダンの存在をあなたはどう解釈する?」とか
「革命家ドラゴンが、今後、どのようにしてこの物語に絡んでくるか」とか
「自分にスタンド能力があるとしたらどんなスタンドがいい?私はねぇ・・・」なんて切り出しながら
俺らのこの漫画夜話にずかずかと土足で入り込んで来る素敵な女性はいないものだろうか?
いつもそんなことを思うけど、決してだれも入ってこない
みんな優しいのに間口はひろいはずなのに誰もこない
ずかずかと来て目をしびれるような新説を唱えられたら
少なくとも俺とバータンはその女性に惚れてしまう、そんな気さえする。
深夜0時を回りクニオが来て、コウジは帰るも話をうだうだ続ける
俺はワンダと巨像のゲームシステムについて熱く説明する
笑うほどでかい巨像について熱弁するけどわかってもらえなかった
そうやって閉店深夜2時まで粘る

【 カエル公園 】
ぽつぽつ小学生の頃のことをバータンと話しながら
何年ぶりにカエル公園を横切って、天祖神社の裏道を行くと
7年前の成人式の晩に乱痴気騒いだ友人の家が見え
「奇しくも今日は成人式だね」つって、2人、空しく笑った。
寒い寒い未だ冬、深夜3時前をぽつぽつ帰る
あてのない1日が静かに消える。
「響きわたるオペラ、きっと名曲。」 2008年1月11日

【 名曲喫茶ネルケン 】
高円寺の繁華から路地1本はずれた裏びれた通りにある名曲喫茶ネルケン
名曲喫茶という言葉だけで、心のそこがふるふるとわななく、旧き良き昭和時代の匂いがしてたまらない。
名曲喫茶ときて、そしてネルケン! ネルケンの意味はわからないけど、イメージ的にドイツっぽさを感じる
ダンケシェーンみたいな、ハイネケンみたいな感じからジャーマンスピリットを感じる
もうちょい広範囲にとらえればヨーロピアンも感じとれるし、ルネッサンスを彷佛とさせる。
白い電光看板に黒字で「名曲」改行そして片仮名で「ネルケン」そのフォントっぷりもたまらない。
そんな名曲喫茶ネルケンの軒先きで、ふるふると佇む自分
この良い意味で醸している店に、格式高そうな店に、未知の名曲喫茶に
入ろうか入らまいかめちゃめちゃ躊躇する自分、夕刻19時、仕事帰り。
とりあえずお外から店内の具合を伺うけれど、
入り口および窓には濃緑色のツタが繁栄していて絡まって覆われているせいで上手に様子が伺えない
ああ どうすっか、いつまでも入り渋っててもしようがない
この場合の選択肢は4つ
「1 諦めて帰る」「2 ひとまず高円寺を一周してその間に心の準備を整える」「3 ツタを刈る」「4 入店する」
結局自分は「4 入店する」をチョイス
1と2はかつて実行したし(ネルケンの前で躊躇する歴5回)
3は人に叱られそうなので、意を決して4入店
ガラスがはめ込まれた木製ドアを静かに開けると、すぐ目の前に人影があって
うぎゃぁ、もう店員がおる!困った!どうしよう!ってあぐあぐとしていると
その人影は大きな木彫りの彫刻であって、自分は情けない人間だなと改めて感じつつも
そんな表情は露ともださず、てくてくと店内をまい進して、店の一番隅っこに着席
コートを脱いで、荷をほどき、入店したことにほっとして辺りを見回す。
区切られた独り掛けの席、赤いビロードのソファにビロードのカーテン
古びたテーブルには生花が花瓶に活けてある
電気スタンド、電気傘もいちいち素敵
店内を包む静寂、そこに響きわたるオペラ、きっと名曲
想像以上にネルケンだった、一瞬で気に入った、しかも全席喫煙可能
他にもお客さんは数人いたが、全員1人客、本を読む人、モノを書く人、黙々と全員だんまり
ここは音楽を楽しむと同時に自分に没頭する場所でもあるのだな、と、改めて実感した。
「よし、では小生も没頭するぞ!」って
ニンテンドーDS文学全集から読みかけの「蒲団」を開いてこれを読む、その刹那
か細い声で「いらっしゃいまし」つってお水と灰皿とメニューを持ってきてくれた店員さん
いや、店員というか、なんというか、きっと店主のおばあちゃん
でもおばあちゃんなんだけどね、物凄い気品があるの、上品オーラがどしどし溢れているおばあちゃん
うまく説明できないので、御得意のジブリ作品で例えるなら
ナウシカに登場する目の見えないオオババ様風のばあちゃんではなく
ましてやトトロのばぁちゃんではなく
魔女の宅急便に登場する、ニシンのパイを孫のために作ったばあちゃん風のばあちゃん
ね? 上品でしょ? なかなか的をえていると思いますよ
そんなわけで、上品な人との交流が皆無の自分は、この気品オーラに圧倒され
本能が粗相をするなと忠告してきて、自分は客なのにもかかわらず、
両膝をぴっちり合わせてきちっと固く緊張して座り、コーヒーをお願いしようとしたけど
それじゃ野暮ったいし、何のための名曲喫茶かわからないので、ブランデーコーヒーをお願いした。
そして、ブランデーコーヒーを飲みながら、初耳の名曲オペラを聴き、タバコを吸い、蒲団を読む
ひどく優雅で有意義な平日の宵
ここには頻繁に来ようと決意した。
「ヌメヌメバンビの足腰」 2008年1月10日

【 仁王門 】
お気付きの方もいらっしゃると思いますが改めて
昨日、はれて、約10ヵ月ぶりにタクロウジャシン掲示板が復活しました!!
復活の理由は「年が開けた」「交流が欲しい」「寂しい」などいろいあるけれど、
第一の復活の理由は「心に力が戻ってきた」からです
でも注意してください、戻ってはいません、戻り途中です、生まれたてです。
生まれたてのヌメヌメバンビみたいに足腰に儚さがあるので
強く言われるとすぐにへこたれます、断言します、へこたれます!
そして容赦なく膝から崩れ落ちて半月板をやっちゃいます、複雑に、骨折します!
基本つかず離れずのいつもの距離感で生暖かく見守って下さい、よろしくお願いします。
忌憚なき意見、或いは、厳しい御意見はメールでおしらせください
或いは、心の内に秘めてください。それでも伝わります。
どこまでも弱気です、なぜなら病み上がりだからです。そうそう、病み上がりなんです。
どうも居心地がいいようで、昨年のクリスマスイブ以降からべったりつかず離れず
体内に居座った風邪菌もようやっと消えてくれそうな気配を感じております
それもこれも「ビタミンをとりなせい、兎にも角にも、風邪にはベタミンスィーだっせ」という東方からの金言のおかげさまだ
そうだ!風邪にはビタミンC群の摂取が必要だったのだ!と気づいた自分は薬局に走り
ビタミンC錠剤を購入、多めにめりめり飲んで、寝て、起きたら、はたと風は止んでいだ
思い返してみれば今年に入ってから生野菜を食べていなかった
動物のキモも発酵食品も果物も食べていない、あきらかなビタミン不足
それどころか、おじや、饂飩、ラーメン、パスタ、肉ばかりを好んで食していた、あからさまな偏食傾向
しかるに、彼の金言により目覚めた自分はビタミンをとり健康をとりもどしている
永い永い屈折期間を経て、心に力を取りもどしてきている
これでようやっと、ようやっと、まっとうに2008年を始められそうです。幸あれ。
「夜か夜明け前か」 2008年1月8日

【 病床 】
夢を見すぎたせいで物凄く頭が痛い、くらくらする
さっきまで見ていた夢と、現実のこの真っ暗な部屋で自分は
上半身を起こして床に座った状態のまま、夢うつつ間を呆然と漂う。
真っ赤な蛇がいた、遊園地で順番待ちをした、プールサイド、飛行機の乗り物
夢を反すうするたびに、夢はぼろぼろと記憶から削れていく
言い様のない絶望を感じる
ただでさえ今日は、病床に伏していたのだからなおさら切ない
冷たく乾燥した部屋で病気、夢も希望も愛情もなんもねぇ!
ゴホゴホゴホ、まだ咳がでやがる、口の中がカラカラに乾燥していやがる
ふと見た窓の外は闇だった
しかしこれは明け方の闇なのか、それとも夜の闇なのかわからない
携帯電話で時刻を確認すると5時47分
5時47分つわれてもなおさら夜か夜明け前かわからない
むんずと体を起こし、ふらふら歩きテレビのスイッチを入れる
テレビから夕方のニュースが流れ出した、夕方だった、直に18時だった
昨晩は22時に眠った、そして目を覚ますと18時、20時間睡眠
ちょっとした赤子さんよか眠っている、そりゃ頭も痛いわけだ
でも20時間も眠った割に体調は回復していない
いまだって咳はでるし、鼻水もでる、報われない。
袋ラーメンを2つ茹でたのを食う、コンビニで内服液を買う
米を研ぐ、風呂を洗う、燃えるゴミをまとめる、部屋を片付ける、いつまでも冬だ。
俺に春は来るのか? そもそも春は存在するのか? それすら疑わしい。
研いだ米をジャーにセットして予約ボタンを押す
使用済の食器を洗って乾燥棚にしまう、指先が荒れている。心も荒んでる。
げほげほ咳が止まらねぇ、げほげほ、げほげほ、目に涙が滲む、負けてたまるか。
薬を規定量の倍飲み込んで、ごろりと孤独に背を向けてふて寝する。
「冷たい床に伏す」 2008年1月7日

【 病 】
病を患ってしまったからいけなかったのか?
消化の良いオジヤばかりを食べてしまったからいけなかったのか?
人に期待してしまったからいけなかったのか?
どうしてか、猛烈に虚しく感じるのはなぜなのだ!
風邪がどんどん悪化していって気持ちまで弱くなっている
全然回復せん! そういうムードも兆しも気配もない!
この調子だと、明日、仕事にいく気力さえ維持できない
このまま悪化し続けたら、ようやく灯った俺の目の輝きも再び腐った魚の鉛色になってしまう
部屋が散らかっている、ゴミが纏まっていない、流し台には食器が溜まり、カゴには洗濯物が溜まっている
漂白した風呂場のタイルにうっすらと黒カビ、畳にはタバコの灰と毛髪
1人の部屋がどんどん汚染されていく、悪いオーラで充満していく。
ともかく、薬を飲んでさっさと寝てしまおうと思う
今できるのはそれくらいしかない
宙空におやすみなさいと吐いて、冷たい床に伏す。
俺は顔のない女性に看病される夢を見る。
「答えは今日もみつからない。」 2008年1月6日

【 自問壁の猿 】
タバコを吸っても、米を食べても、ミルクティを飲んでも、飴を舐めても
何も感じない、味はするけど香りがない
口に入ったそれをただただ空しく飲み込むばかり、風味絶命。
苦虫噛みしめても、人生を舐めても、辛酸すすっても、口に残るのは鋭い刺激痛ばかり
それ以外は何も感じない、舌は痺れるだけで香りがない
口に飛び込んだそれをただただ空しく飲み込むばかり、風味絶命。
9連休も今日で最後、明日からお仕事が始まるってのに、また面倒なことになってしまった
微熱、鼻水、咳、そして喉が傷む
また風邪をこじらせてしまった、いや、ずっと風邪を引いていたけどここにきてまたぶり返した。
昨晩の高円寺飲み会で記憶を飛ばして前後不覚になるまで飲んでしまったからか
おまけに薄着ではっちゃけてしまったからか、騒ぎ過ぎて喉はガラガラ、ここにきてまたぶり返した。
おかげで何を食べてもろくに味を感じない、五感のうちのひとつ、嗅覚が死んでしまった。
おまけに精力も減退、意欲も減退、人を好きになるプロセスも曖昧に蕩けてゆく
それでも何かをしようと、行動をおこそうと、厚着して、三脚を抱えて夜の河原へいってシャシンに納めた
河のにおいも、枯葉のにおいも、木々のにおいも、土のにおいもしない
月も見えない
それでも黙々と、ひたすらに、枯れ枝をぺきぺき踏み割りながら
静寂と冷気につつまれた真っ暗な木立の中、腐葉土と化した柔らかい土を踏んで歩く。
自問の壁の猿、答えは今日もみつからない。
「自分は反省することにした」 2008年1月4日

【 スロープの猫 】
贔屓にしている神社のスロープに猫が住んでいるという話しを聞いたので
贔屓にしている神社に行って、スロープを調査した。
スロープに囲まれた樹木の根元に、黄土毛と白毛地の二毛猫がいた、確かにいた、確認した。
いままで何度もこの神社には来ているが
ここに猫が住んでいることなんて知らなかった、自分はまだまだ甘いと思った
かといってそれほど反省するわけでもない、これは反省するようなことでもない
だけど、件の猫の存在を確認したとたん、やることがなくなってしまった虚無感満載の時間を何かで埋めるべく
自分は反省することにした
「猫がここに住んでいる事実を見逃していた己の怠慢」を反省、反省、反省。
むしろ反省するべきことは他にもっとずっといっぱいあるはずなのに
そういう重めな反省は先送りにして、猫反省をチョイス
重めな反省は気力を削るし、こじれると心に陰を落とす危険性も孕んでいるので
「正月から重めの反省をして憂鬱になるのはよくない」と悟り
実も利も害もない猫に対して反省をする、スロープで、木漏れ陽が気持ち良い、明日も晴れそうな気配がする。
あとで神社内を巡ろう、裏に植っている植物の調査をしよう、本堂で黄金如来を拝もう
反省した結果、この猫を「ニケ」と呼ぶことに決めました。
「正月2日目にしてもう手詰まり」 2008年1月2日

【 2日目 】
正月2日目にしてもう手詰まり
昨日、初日の出を見た、ってことが唯一の正月イベントであって
他はなぁんにもない、びっくりするほどからっぽ虚無太郎
無論、御節なんて食べていない、食べていないどころか見てもいない
小生は、風情も風流のカケラもないレトルトハヤシライスをもりもり食べる。
まぁ、流石にね、一人暮らしで御節はないけど
お雑煮もお神酒も獅子舞だって見ていないのはどうなん?
ってか、本日誰とも話していないってのは、正月云々さておいても空しい限りです
しようがないのでテレビを見るも、心トキメク番組もなく
高円寺に出るも暇を持て余したカップルが徘徊していて腹立たしく
先週が合併号であったためジャンプは発売されておらず
八方ふさがりになった自分は、中古漫画・ゲームショップで漫画を売って、売った金でゲームを買う
テレビに向かって4時間かけて巨像を8体撃破した
ワンダと巨像がなかなかおもしろいことが、変に、この、空しさを駆り立てる小道具になっていることに気づいて
それに気づくと急激に脱力感にみまわれ、セーブしてゲームを止める
取り合えず日記を書こうと思う、でも、どうせ誰もみていないと思うとむなしくなる
なかなかの手詰まりっぷり、これから飲みにいこーよ!って誘いが来る夢を思い描く、でも来ない
誘えばいいと思うけど、どうせ誘うのは昨日日の出を見たメンバーであって
連日俺と顔を合わさすのも心苦しいので却下、どんだけ友達いねぇんだよ!と思われると苦々しいので却下
ってなると自然と独り酒、畜生、べらんめぇ、酒や酒っ! 酒のんだらい! と半ば自棄になり
いいちこをお茶で割ったやつを飲む、飲みだすとアテが欲しくなって
寝巻きにドテラを羽織って深夜コンビニへ、そこで焼き鳥串と辛子タラバ蒲鉾を購入
家路に向かう道すがら、ひどく冷たい空気と、静寂さと、いつもより星が綺麗に見えることとが今日と交じりあう
君と別れて 僕は石ころになって 蹴っ飛ばされて 転がって疲れた
出会えた喜びは いつも一瞬なのに どうして別れの悲しみは永遠なの
思わず口ずさんだ銀杏BOYZの「東京」が身に染みた。
「ナイス御来光」 2008年1月1日

【 御来光 】
「あっ 今日は天気ええなぁ。雲ひとつないやん。」なんてなことくらいは思ってたと思う
かといって、別にね、天気が良いくらいよくあることだし、己にとっちゃ特別でもなんでもないし
別段力まずいつもの調子でペコーと東の空から顔を出すと
皆がこっちを見ている、日本列島に住まう人々が一様にこっちを、否、俺を見ている。
「何これ? 何? ドッキリ?」
なんで俺を見ているの? なんで俺の出待ちをしているの? 恐いんやけど・・
そして笑っている、なんや知らんけど白い歯をちらつかせて笑っている人がいる
ビデオ、カメラ、携帯電話付属カメラで俺を撮る人もいる
うわうわ恐い、すげー恐い、半端ない人数が俺を見て笑ってる、撮っている
そして、より不可思議なことに、こいつら笑って撮ったあと、不意に神妙な顔つきに変貌するや
背筋をピンと伸ばし、両掌を合わせての合掌、祈願、祈念。俺に?
って俺にだよな、後ろ振り返っても誰もいないし、皆の目線はばっちし俺をロックオン!
えぇー やっぱ俺やんか。
って戸惑ってると、その人々の思念がどしどし俺に来る
彼氏ができますように、良縁に恵まれますように、家内安全、世界和平、大学に受かりますように
今年も1年健康に暮らせますように、万馬券が当たりますように、無事下山出来ますように・・・・
そんな見ず知らずの人らからどしどし念、目眩がする
急にこんな大量の欲を祈願されても、自分はいち太陽ですし「そうか。んまぁ、ガンバ!」としか言えん
「彼氏欲しいなら、まず好きな人をつくることが先決じゃん?」とか
「大学受かりたいんなら、勉強しろ、過去問をとけばいいんじゃん?」とか
「健康を維持したいなら、紅茶キノコ的なやつを飲めばいいんじゃん?」とか、ぐらいの、普通の、助言しか言えん
皆の欲望を叶えるミラクルパワーなんて俺にはない、むしろ俺が欲しい、もっと熱くなりたい!
よって俺には叶えられん、すまん。祈願損ですまん。
ここは、まぁひとつ、お互い伸ばしあいまひょ。
あんたはあんたの目標に向かって努力、俺はもっと熱くなるよう努力するから。よし!ふー。
でもなんなんだろ? なんでなんだろう?
今日に限ってなんでこんなにいっぱい願いを承るのだろうか?
よくよく意味がわからん
でも、正直悪い気はしないね、この頼られている感はけっこう好きだよ
そういやずっと前も、確か350回位昇り降りした時も、同じようなことあった
ってか、よくよく考えれば、350回位昇り降りするごとに、この島国の人々は俺の出待ちをする・・
なんでだろ? 俺への感謝か? にしては己の欲望だしすぎじゃね?
まぁいいか 皆が喜んでくれるならそれで良い
よーし、張り切ってどしどし昇るぞ! ってっっっおーーーい!
って っっっおーーーい!(2回目)
地上から顔を出して、まだ数分しか経っておらんのに、もう誰も俺を見ちゃいねぇぇぇぇぇ!
誰も祈願しちゃいねぇぇぇ!!!
「空が奇麗で気持ちよいね」ぢゃねぇよ! 知らねぇよ!
空なんかより俺を見ろ、率先して俺を見ろ! 空具合の感想より、俺の良い所を言え!
何それ? 何、その、持ち上げるだけ持ち上げるやつ?
もう飽きたん? 俺に飽きたん? 早くねぇ? なんか気悪くすること言った?
さっきまであれだけ俺を待望してたのに、羨望の眼差しだったのに、こいつら急激に冷めやがったな、ハラタツー
なんなんすか、俺の価値は輝きはその昇る一瞬だけですか? 太陽なのにぃ?
参拝を済まし、御神籤を引き、俺は、随分高く昇った太陽を眺めてそんなことを考えていた
もちろん太陽様には感謝の言葉はつきません
シャシンも太陽の光ありきで成り立つ部分、お世話になっている部分が多々あります
でもね、太陽様には悪いが、初日の出となるとやっぱ出落ち芸人扱いされても仕方ないかな・・とちょっと思っちゃうわけですよ
それは、もう、しようがないかな、と、思って頂くしかないっす
人間ってのは、ホント、勝手な生き物ですよね・・
でも、ナイス御来光でしたよ。いやいやいや、お世辞とかじゃないっす、ほんにナイス御来光。
明け方3時に温い家を出立して、暗闇の中、急な山道をてくてく登った苦労も
あんた様の御来光で一気にふっとんだ
正直言うと、あの山道、真っ暗やみで無言のまま何百人何千人が列をなして登る人の群れの中で
死者が閻魔堂へ向かうがごとくの人の群れの中で、自分は17回くらいは心折れました
「眠い」「きつい」「お風呂に入りたい」「セックスがしたい」「ももええやん初日の出は来年見ようぜ」と考えておりました
まぁ、幸い、スペアの心を20個持ってきておかげでどうにか御来光を拝むに至りましたが
そんなん全て、その苦痛苦行悲痛をまるまる差し引いても、初日の出を見る価値はありました
山頂から見る陽の光が、こんなにも温かく雄大で美しいものとは知りもしませんでした
自分はしばし、ふるふると感動に打ちひしがれました、ほんとうにナイス来光、御来光。
ともかく、無事、念願の「高尾山山頂から初日の出を拝み倒す」計画は大成功をおさめました
しかし、日頃の運動不足から疲労マックスの高円寺の面々
それでもケーブルカー、リフトには頼らず、自分の足で無事下山成就
帰りの電車で眠りにつき、心地よい疲労感に包まれて家路につく1月1日
自宅に戻った自分は、窓から刺し込む陽の光に顔をしかめながら、貪るように眠った。
今年も、タクロウジャシン共々をよろしくお願い申し上げます。
タクロウ