「いつものように幕が開く」 2008年2月2日

【 安宿 】
車窓からの景色がだんだんと田舎の風景に変わっていくと
取り留めのない気持ちになります
ここにも人の生活があるのだなと考えると目眩がします
一瞬だけ目に写った道、川、フェンス、牛舎にも
きっと誰かの思い出が染込んでいるのだ
自分の知らない所でも平然と時間は進み生活は受け継がれていくのだ
そんな当り前なことを、車窓からの景色は思いださせる
そんな当り前なことを、思いだすきっかけが日常にはない
旅目線での弱非日常がそれを気づかせてくれて
ちっぽけな自分がいよいよちっぽけに思えてきて目眩がするんです
畑、たんぼ、林、薮、時期が時期だけに総てが土色黄土色
畑の中の一角にある墓石
点々とまばらに建つ家家
まっすぐなあぜ道には誰もいない
目にうつる風景の中には人がいない
この列車の行く末を少し案じる。
・
車内で酒盛りするおっさん団体客、そのせいで2号車は烏賊と酒の匂いが充満している
もう呆然と車窓なんてみていらんねぇ、畜生、俺にもビールを呉れろ
ぐはぐは笑いながら真っ赤な顔して酒を飲む
口からちろりと顔を出しているのは勿論スルメ烏賊
そうやって三時間かかって鬼怒川温泉駅に到着、鬼怒川はうすら寒い
駅周辺は旅行客と思わしきカップル風情でごったがえし
「とりあえず何処いく?」
「とりあえずホテル行こうか」
「とりあえずお土産みない?」
「それよりも、とりあえずコンビニ行かない?」
ってとりあえずとりあえず………
とりあえずで牽制しまくりじゃん、希望はないのか? 願望はないのか? あー煮えきらねぇカップルだこと!
けど、晩にはぜってぇーセックスするんだよな!
むかつくな、けど、セックスも「とりあえず」でするんだろ!?
俺みたいに風向きとか湿度や気温を視野にいれるようなセックスではなく
「とりあえず」でセックスか!! 長者気取りですか!? 飽食の時代ですか!?
こちとら良いエロ本を持って来るのは忘れて気がたってんだ
とりあえずつき合って、とりあえず旅行して、とりあえず思い出つくって、とりあえずセックスでもしてろぃ
…
ある程度覚悟はしてたけど、初っ端から心が折れた
1人旅行とはかくも人を卑しくさせるのか
駅前でのひどいひがみっぷり、妬みっぷり、自分はこんな人間ではないはずなのに
何かが、何かが狂ってきている
孤独感がめちゃめちゃにあぶり出される、あっち側の人間とこっち側の人間の色が全然違う
日常生活では感じないのに… 旅先だから? 旅先だからか?
1人きりの孤独より、多数の中の孤独の方が×人数分きつい
とりあえずとりあえずとぶつぶつ唱えながら早足にその場を立ち去る
…
一刻もはやく温泉につかり、湯治をせねば
妬みそねみを浄化して健全を取り戻そう
今の自分に必要なのは休息と暖かい湯
とりあえずチェックインするためホテルを目指して道を行く
その前にとりあえず酒屋で酒と飯を買っておこうと思い
酒屋は、確か、この道沿いにあったよな・・・ おお あったあった!
確かに「酒屋」はあった
んでも、あれ? あれ? ”旅先で酒屋の場所を知っている自分”
なんなんだこれ、なんで知っているんだ? デジャブーか
それとも、えっ!? ついにスタンド的な力が芽生えたのか? 鬼怒川で?
まぁええわい、とりあえず歌舞伎揚げとカップ麺と日本酒を購入して店をでて
ぽつぽつと道を行く、で、みっともないことに天下の往来で叫ぶ
不意に目に飛び込んだ景色に思わず「クワッ」と短い叫び声をあげた
いやいやそんなはずはない!と目の前の景色を否定するため
慌てて後ろを振り返って酒屋を中心に街並を凝視する
もう一度前を向き、凝視、再び後ろを振り返えって、凝視
旅先で酒屋の場所を知っていた理由が判明した
俺、かつて此処に来た事がある
そして完全に思いだした、思いだしてしまった
「道端でクワッと声をあげ、酒瓶をぶら下げたまま前後を振り返る今の自分」
この映像に数年前の秋の映像をトレースすると
今の自分の脇を、お揃いの浴衣着て、下駄をカラカラ鳴らせながら
「楽しそうに酒屋へ向かう俺とアキコ」が通り過ぎる
過去の自分が「なんだこの男? まさか1人旅行者か? 恥ずかしいヤツめ!」と罵る
今の自分が「ただセックスしたいだけだろ! 恥ずかしいヤツめ!」と妬む
まさかと思ったが、まさかではなかった、完璧に失念していた
目の前に佇むホテル、数年前の秋にアキコと泊まったホテルだ
なんなんだこれは、どこまでもしがらみか!
しかも御丁寧なことに、今宵の宿はその過去ホテルの隣ときてらい!
湯治旅行のはずが、傷心旅行に切り替わった
しばらくそこから動けなかった。
…
・・・っつーわけで鬼怒川着いたよ、そしたらさぁ、前にお前と泊まったホテルの横でやんの
道理で見覚えある街並だなーと思ってたんだけど、そういやぁここ来たよな
うん、そう、トンボに追い掛けられて、滝を見に行ったじゃん? ウエスタン村とか、うん、日記にも書いた書いた
折角の湯治旅行が傷心だよ、もういたたまれねぇからさ、こらぁひとつアキコに電話しようと思って、話さなければんらん、で、まぁ少しは楽になったよ
あん、オキナワね、でもそれまだ先、4月でしょ、屋久島とか? どうなんだろ
部屋? ああ、うん、なんかね、めちゃめちゃ広いんよ、和室8畳で洋室8畳、しかもシングルベットが2つ、ひゃひゃひゃ
いらねーっつーの! 持て余すっつーの! 折角この日の為に買っておいたエロ本忘れたから、なおさらだっつーの
俺、ぜってぇあとでエロ本買いにいくわ、ここまできたら意地だ
ところで、はぐは? 何してんの? もしもーし、はぐー? どう? あれ? もしもーし、アキコ? はぐなんかぐずぐずしてね?
あんま叱ってやんなよ、ちょっとはぐと替わってくんない? え? 怒られるからイヤだって? 怒らないっつーの
俺そういうふうな感じなの? 怒るばかりの人? ああーいまアキコが怒ったから、で、俺にも怒られるだろうと・・・ なーるほどねー
ああそうなんか、昼寝してねぇんだ、じゃぁぐずぐずするだろうな、ちょっとまって日本酒を飲む、あえて湯呑みで飲むこの勇ましさ、どう?
丹前姿で湯呑み酒だぜ! 眼下には鬼怒川が流れてる、旅! どお? あっ今オッパッピーつった? はぐ? でしょ?
そういう恥ずかしい笑いはなるべく避けて下さい、ムリかー、今度家きた時には、はぐにラーメンズを見せようと思う。
ぺらぺらぺら べらべらべら・・・
およそ90分話して、電話を切る、電話をきったあとの静寂と、「ふー」っつーため息は嫌いだけど
電話している最中も、歌舞伎揚げをつまみに、昔話を肴に、どしどしお酒を召し上がって
けっこうくらくらに酔ってしまって、終話の静寂も「ふー」の空しさも忘れ
じゃぁ湯治しまっかい、タオルと手ぬぐいを首からさげ、ぺたぺたと階下の大浴場へ向かう
微妙に硫黄の香りがする湯、こんなに薄いんじゃぁ温泉の効能はあるのだろうか?と訝しがるけど
酔っているので気にならない、露天風呂と呼ばれるそれが、お慰み程度のリトル露天であっても気にしない
大事なのは24時間は入れるってところ
あいにく今は17時過ぎ、数人のお客がいるからアレだけど
深夜になれば、そう、きっと大浴場一人占めのチャンスがきっとある
その機を掴んだら、
湯舟に飛び込み、端から端まで潜水して壁際トビウオターンをくり出してやる
客の顔を見回し、心の中で「皆様方よ、今に見ておれでございますよ!」と唱え
布でチンコを隠しながら、不敵な笑みを浮かべて湯場をでる
…
むちゃくちゃに酔った、したら陽も暮れた。
だってのに俺はなんだ、いくら湯治といえでもかかる僻地まで来たのにもかかわらず
自室にこもり、酒とテレビに現をぬかす、旅先で引きこもる。
こりゃぁ少し塩っぱすぎる、情けなすぎる
ここはひとつ気持ちをいれかえて表に出よう、エロ本を買いに表にでしょう、ついでにシャシンも撮ろう、つって
浴衣を雑に脱いで外着に替え、三脚担いで陽暮れた鬼怒川に立ち、ぽちぽちシャシンを撮る
けどもう飽き飽きだ、場所が変われば気持ちも変わるかなと期待してたけど
風景なんてもう飽き飽きだ、人を撮りたい
試したい構図がある、もうファインダーの中に景色しかない無機質さに飽き飽きだ
と憤慨しながらヤマザキデイリーストア風の個人経営ストアでエロ本を吟味していると
なんと今週号のジャンプがもう発売されていて、一気に沸騰した自分は
わなわなと戦慄きつつも、しっかりとジャンプを掴んで店員に差し出す
エロ本? んなもんいらねぇ!
♪ジャンプ ♪ワンピ ♪ジャンプ ♪ワンピ
予期せぬハッピーサプライズに足取り軽く宿にもどり
敷き蒲団を敷いてその上にゴロリ腹這いになってジャンプを読む
お腹が空いたので蕎麦屋にカツ丼を依頼する
ジャンプ読む、カツ丼を食う、急激に眠くなる、ベットで眠る、怠惰が極まった
寒さで目をさます、時刻は23時過ぎ
とりあえずひとっ風呂浴びに浴場へ、そろそろ俺だけの浴場になっているのでは?とわくわくしたが
残念なことに痩せ男が1人浸かってた
0時前だってのに奇特なヤツめ!と思いながら、シャワーを浴びヒゲをそる
その所作の最中も背中から「はよ帰れオーラ」をどしどしとだしていると
けっこうあっさり先客痩せ男は湯からあがり、重いガラス扉をスライドさせて脱衣所へ行った
よーしよしよしよしよし、ついに俺1人、俺浴場、大欲情
しかし、はやるな、はやるではないぞ
ここは息をひそめて機を伺え、野郎が脱衣所にいったからつって安心すんな
もしかしたらヒゲ剃りを取りに一旦脱衣所へいっただけかもしれない
すぐ戻って来ることも考え得る
でも焦って「第1のコース 林田くん」つって浴場のへりで飛び込みスタイルのまま神妙な面持ちで硬直している、ところを
俺のお菊さんがばっちり御開帳しているところを見られたらことだ、恥だ、気まずい
だから「第1のコース」はすぐやらない、これが大人のマナー
少なくとも2分は待機する
よし1分経った
よし戻ってこない、よし帰っただろう、よし飛び込もう、よし待切れん
すぐさま「第1のコース 林田くん」つって浴場のへりからザッパーン
ズズズーと潜水して、壁際トビウオターン、バシャン、あははは、あはは、おもしろい
よし、もっかい、って、ざぶざぶお湯をかき分けて、スタートのへりに立って驚愕した
スタートのへりからガラス扉越しにわずかに脱衣所が見える、
てっきり帰ったと思っていたあの痩せ男が、のんきにドライアーで髪を乾かしていた
幸いな事にこちらに一瞥もくれていないが、さすがにあの派手なザッパーンは聞かれているはず
何しろ飛び込みの際、腹打ちしてちょっと胸の辺りがひりひりと傷むくらいの飛び込みだもの
しかもこちとら大人だぜ、大人の腹打ちザッパーンはなかなか聴きごたえがあるサウンド
お前さぁ、髪なんか乾かさずにちゃっちゃと帰れよ
ってか、男なのに髪を乾かすってどういうことなの? 普通なの?
俺にとっちゃぁ、男子トイレの前に男子化粧室って書いた札があるくらい不自然だぞ
むしろ髪の毛どころか、体も拭かないよ、もっと急げよ、もっと生き急ごうよ
あと1分耐えときゃよかった、でも後の祭り
畜生、恥ずかしい、俺が痩せ男なら笑ってしまう
だって脱衣所に行って、1分後くらいに浴場からザッパーンだぜ?
で、あはははは、って高笑いが反響して聞こえるんだぜ?
あいつめちゃめちゃ開放してるな、温泉を満喫しているな、阿呆だな、って笑ってしまう
ああ恥ずかしい、けど、ここで引いたらもっと恥ずかしい
こういう同世代もいるってことをこの際だ、知らしめてやる
へりからザッパーン、ドルフィンターン、バシャン、あははは、ターンの後のバシャンがお気に入り
一通りやって、露天に移る、星が瞬いている。
…
眠れないからテレビを見る、テレビをみるから視神経が興奮して眠れない
携帯大喜利、やりすぎコージーと笑いながら見て
キリンジが唄う「喝采」を聴いて鳥肌がたった
キリンジがどうこうじゃなく、「喝采」の歌詞に鳥肌がたった
余韻、間、人間、物語りが
特別短い歌詞に詰まっている、ギリギリ少ない言葉で受け取る人間に深い想像力をあたえてくれる
良い映画を1本見たに値する満足感がある
ああいう言葉を書きたいな、どうせなら
でも俺の文章ががちゃがちゃしすぎなんだよ
テンポはいいかもしれないけど、しょせん話言葉で深みがない
ぺたぺたと足音をたたせて、肌寒い、薄暗い廊下を真直ぐいって温泉に向かう
午前5時、さすがに誰もいない
いつものように幕が開く
降りそそぐ ライトのその中
それでも私は
今日も恋の歌 うたってる
「喝采」を露天風呂で口ずさむ
気がつくと雪が降り始めていた
幸福だと思った
旅立ってよかったと思った
「郷愁」 2008年2月1日
カメラ
てぬぐい
三脚
充電池
充電器
乗り換え表
角質スクラッチ
i-pod
本
ニンテンドーDS
替え衣
良いエロ本
と、コンドーム
「コンドーム?」
「コンドーム」
「いや、いらんやろ?」
「いや、良いエロ本はいるって!」
「それじゃなくてコンドーム」
「いらない?」
「いらない」
「いらないかー」
「いらないよ」
「でも、もしもって時が…」
「ない」
「はからずとも!って時が…」
「ない」
「あわよくば!って時が…」
「ない」
「おりしも!」
「ない」
「奇しくも!」
「ねぇよ」
「吊り橋で知り合った傷心旅行中の行きずりの女性と…」
「ない」
「地元の酒屋の娘と意気投合して…」
「ない」
「手違いで女体盛りが俺の部屋に…」
「ない」
「仲良しOL三人組」
「ない」
「三姉妹パターン」
「ないパターン」
「湯煙殺人事件、被害者の嫁、もはや未亡人」
「ない」
「東照宮の巫女」
「ない」
「生き別れた妹」
「いない」
「深夜、宿の女将が俺の部屋にこっそり入って来て…」
「ない」
「露天風呂に壇れい的な…」
「ない」
「水遁の術で水中に潜む女将が…」
「ない」
「お湯がだんだんと女体にトランスフォームしてきて…」
「ねぇよ」
「部屋に戻って蒲団をめくると女将」
「いねぇよ!」
「その一部始終を目撃する家政婦」
「いねぇよ!」
「あれ!? モトコさん?」
「うっそ!? タクロウくん?」
「うわっ すげー! やっぱそうだ! モトコさんじゃん! 久しぶりだな!」
「えぇーっ なんでこんな所で会うの!?」
「知らねぇよ! あひゃひゃひゃひゃ」
「ホント久しぶりね、でも、タクロウくんはあんまり変わってないね(笑)」
「そう? まぁいろいろあったけど、ベースは変わらん」
「ほんと笑い方とか、喋り方とか高校生のころのまんま(笑)」
「そっかぁ、高校生かぁ、そんな前以来か」
「あっ いまでもカメラ持ってるんだ」
「あったりまえじゃないっすか、なぁんもうだつ上がってないけど」
「じゃぁ撮影しに来たの?」
「うん、あと、温泉と東照宮目当て、モトコさんは? 鬼怒川に住んでるの?」
「私も旅行よ、温泉目当て」
「福岡から来たん?」
「いいえ、今は東京に住んでるの。高円寺ってとこ、知ってる?」
「まじで!? 高円寺!? 俺も高円寺に住んどーよ!」
「うそ!?」
「ほんとだって! うわぁー こりゃ凄ぇぞ、寄寓で済まされん」
「ふふ」
「でもこうしてわざわざ知らぬ土地で再会するってのも乙やんね
やっぱすげぇな、奇跡だな、鬼怒川に行こうか行くまいか渋ってたけど、来て大正解
まさか、ここでモトコさんが登場するとわっ、なかなかやりよる運命だ! うはは」
「………」
「どうしたん?」
「………」
「何故に泣く?」
「………わかんない。けど、なんか声聞いてたら安心してきて…」
「傷心か? 甘いもの食べる? 生茶飲む?」
「ううん、大丈夫。ゴメンね」
「そうには見えん、出すもん出しとき、話せる事があったらなんでも話しな」
「…でも、いらないよ」
「何が? 生茶?」
「違う、コンドーム」
「いらないかー」
「いらないよー」
「こういう10年振りに出会うシーンが鬼怒川に…」
「ない」
「ないよなー」
「そもそもモトコって誰だよ」
「架空の人物」
「へー」
「へー じゃねぇよ、お前けっこうノリノリだったじゃん」
「まぁね」
「で、最後のあれ、泣いてるくだり、実は笑いこらえてたでしょ?」
「ばれてた?」
「ばれてた。でも、実際、あのシーンで女性がホントに泣いてたらいけそうな気するけど」
「はいでた! 勘違い〜」
「まじで?」
「はい、まじです」
「男の前で泣いてるのにか?」
「言っとくけどモトコ、お前を男性として見てないよ」
「ああー」
「何その「ああー」は? 心当たり…」
「あるねー。おおいにあるねー。じゃぁモトコの涙の理由は?」
「郷愁」
「郷愁かぁ、じゃぁしょうがないな」
「しょうがない」
・・・
「じゃぁそろそろ寝ます、明日は朝から鬼怒川だ」
「がんばれよ!」
「がんばるよ!」
「「ザリガニ」だった場合」 2008年1月31日

【 羅生門 】
”酒池肉林で女性のおっぱいを枕にしてうたた寝する”
人間の三大欲求「性欲」「食欲」「睡眠欲」を一度に叶えるとそういう図になる
これ以上ない幸福を感じる
あわよくば、その園で残りの生涯を送りたいとすら思える
そりゃそうだ、それは人としてあたりまえの感情だ
だって木には「比内産地鶏」はじめ、「イベリコ豚」「フォアグラ」「神戸牛」の切り身がぶら下がり
池からは芋焼酎の首領「森伊蔵」はじめ、「黒龍」「久保田」「越乃寒梅 」がどしどし溢れる
そんな美食の園で、とびっきりのブロンド巨乳美人と、壇れいの胸を枕に
ぽかぽか陽気の下、ふわふわの芝生の上でうたた寝する。甘い夢を見る、笑いながら目を覚ます。
そんならばテコでもここを動かない、まさに楽園、堕落の園。
ね? どう? だろ? たまらないでげしょ?
うへへへへ
うへへへへ
うへ………
……でもさ、これは、残念ながらこの想像は誤っているのです
「性欲」「食欲」「睡眠欲」を一度に叶えてはいる部分は正しいけど
ディティールが誤っている、誤っていると言うか都合良く肉付けられている
誰も肉が特上だなんていっていない、酒が最高級なんて言っていない
”酒池肉林で女性のおっぱいを枕にしてうたた寝する”図
方向性はひとつだけじゃない
可能性はひとつだけじゃない
つまり、自分が、何を言いたいのかというと
酒池肉林の肉が「ザリガニ」だった場合の可能性を唱えたいのです
〜 酒池肉林の肉が「ザリガニ」だった場合 〜
銀蠅がけたたましい羽音をたてて周回している薄暗い林には「ザリガニ」「田螺」「金魚」「カチカチ牛筋」肉がぶらさがり
池からは悪酔いする質の低いインチキ合成酒、メチルアルコール、消毒液、みりんがボコボコと沸く
芥川龍之介著「羅生門」に登場する亡者の髪を引きちぎるでお馴染みの老婆と、漫画太郎が描いたような老婆
その老婆のしわしわずぶずぶおっぱいを枕にして
汚水でじめじめした陽の当たらないコケの上で、うたた寝なんぞしてしまったら最後
脂汗を流すような悪夢にうなされ、目を覚ますと眼前に俺を凝視する老婆の顔ふたつ
羅生門の口から生臭いザリガニ臭、画太郎からもザリガニ臭
血がべっとりついた高いコンクリの壁に閉ざされたこの園からは逃れられない、まさに無限地獄、生き地獄。
「三大欲求を叶えたのに、一度に叶えたのに…」と後悔しても遅く、いずれ気狂って死ぬ。
そう、可能性は1つじゃない
”酒池肉林で女性のおっぱいを枕にしてうたた寝する”なんて魅惑の裏にも地獄がある
言葉に惑わされてはいけない、人に期待してはいけない、堅実に生きようと思う
「ケンタッキーフライドチキン」「レバー」「鶏皮」「ぼんじり」「まるちょう」がぶらさがる林
「いいちこ」「白波」「二階堂」が沸く池
ケラケラとよく笑い、俺の知らない知識を持つ女性に腕枕して
寒い六畳間の畳の上、羽毛→毛布→綿布団の順番で身をくるみ、福福眠る
目をさまし、もう一度眠る
ドア一枚で世間と隔たりを持つ高円寺のアパート、出るも入るも自由です。
これが堅実、現段階で堅実な三大欲。
「御予約人数の欄に「1名」」 2008年1月30日

【 2度 】
できるかぎり今年は、有言実行を実現しようと思う。
「やる」か「やらないか」で迷った場合、意識して「やる」を選びとろうと思う。
考え過ぎていつも、最終的には物事のマイナス面ばかりに心捕われてしまい
そのせいで出足が鈍って、鈍して貧す
風が吹いても動かず此処に居続けた、それじゃ何も変わりはしない。
そういう自分の底にへばりついた汚泥を、ヘドロを、アオミドロをいっぺん流す
慣例を、風習を、癖をいっぺんリセット。しようと考えます。難しいです。
要するに問題なのは考え過ぎてしまうこと
「考えて出る」答えと「考えても出ない」答えの、後者を真剣に考えてしまう
そして自分の経験を踏まえて答えを出して結句動かずじまい
さしたる経験なんぞしていないくせに、それを基準に物事を考えるブタ松親方
だから、行こうか行くまいか随分迷ってたけど、もう、考えるのはよした
「こういう些細な歯車から変調が生まれるのだよ」と自分に言い聞かしながら
御予約人数の欄に「1名」
インターネット上で鬼怒川の安宿に予約をいれる
これでもう後戻りはできない、後戻りするとキャンセル料が発生する
キャンセル料ほど無為な支出はない。
当初は男友達でも誘おう考えてたけど
野郎と2人温泉旅行なんて末代までの恥となるのでやめる
かといって一緒に1泊旅行するほど深い仲の女性もおらぬ。
まぁいい、それでいい。
そんなことよりも、予約を送信した瞬間、少し自分に打ち勝ったと思った
「へへ、それしきのことで大仰な。おばさん、めざし頂戴!」と嗤う人もあると思うが
それはそれ、これはこれ、自分には確かな一歩、こっちには軟骨こりこり揚げをください
1人で喫茶店に入れなかった昨年の自分には確かな一歩
1人で飯店に入れなかった一昨年の自分には確かな一歩
一歩一歩有言実行を重ねていく、経験値を溜めていく
このスキルを拾得すれば”言った端から事実に変わる”
猫型ロボットが不可解ポケットから取り出す「もしもボックス」の力を得ると同義
というわけで行ってきます、ぶらりひとりぷかり湯煙旅行
メインは24時間露天風呂と日光東照宮
露天風呂には朝な夕なつかり、東照宮では豆をひろう
「温泉」と「仏閣」、自分が大好きな3大ベスト・プレイスがふたつ!!
あとは君さえいてくれれば、君が俺に胸を開け放ってさえくれれば3大樹立
あとは、もう何もいらん。何も思いつかん。やや右斜前向きに、一月。終。
「鍋に水、そこに醤油」 2008年1月29日

【 ひとつぶ 】
人に会えば、いちいち悪態つきたくなる
人に頼まれれば、いちいち難癖つけたくなる
不満、不満、不満を吐露、毒をトロロ
・
とりわけ"何か"があったわけでもない
日記の裏側で"何か"があったわけでもない
至って普通、朝起きて、晩寝る
それだのにブレる荒む平穏な魂
ああ 皮膚が燃えるように傷むのだ
・
またしてもビタミンが欠乏しているのだろうか?
そう思って、あわててビタミン剤を頬張る自分の顔
黒く堕ち窪んだ目の下、亡者のような顔が鏡にうつっています
・
これじゃぁやれん、やっとれん、このまま職場に居たって同僚の方々にも迷惑なので
早々に帰宅し、勢い良く自宅のドアーを開け放つ
鬱憤が溜まっている、体の節々が傷む、上手に笑えない
ストレスを解消せねば、ねば、ねば、里芋。
・
鍋に水、そこに醤油、みりん、顆粒出汁、粗目砂糖をくわえ火にかける
ひと煮立ちしたころ、冷凍里芋2袋を鍋にあけて、アルミホイルで拵えた落とし蓋をお落としいれ
鬱憤溜まった己自信も鍋の底に陥れ、これを煮る、中火でぐつぐつ煮る
だんだん部屋中に甘塩っぱい香りが広がっていく
家庭の香りがひろがっていく、ふと、核家族だったころを思いだします
…どうせなら、イカとかゆで卵とかも一緒に煮れば良かったなとも思う
次回は是非それも一緒に煮詰めよう
煮汁がとろとろに煮詰った頃、いろいろ煮詰った自分も若干薄まった
煮らるる芋、染込む煮汁、それを眺めてどうにか落ち着く、ストレスが少し解消。
あとは喰うだけ
熱々の里芋の煮っころがしに和辛子乗せて、ハフハフいわしてこれを喰う
久しぶりの煮物、なかなか旨くできた、濃い味なので芋焼酎によく合います。
箸が止まらない、酒も止まらない
明日の晩飯用に半分残そうと思っていたけど、どうやらそれは叶いません。
・
年が明けて安堵した気の弛みが仇となって鬱憤が大挙する
2時間、3時間待ちはあたりまえ、スプラッシュマウンテン並みに長蛇の列
それらをいちいち捌かなければならないから… くぅ、しんど
ただでさえお仕事忙しいのに、そこへ長蛇捌きに、シャシン、文章、ぬははは
こらあかんな、あきまへんな、煮ッころがし程度じゃ埒があかん
しかるべき他所へ赴き、湯治せなおさまりまへん!
鬱憤大挙の長蛇とともに、鬼怒川辺りで一糸纏わぬ裸になって
天を露にした湯につかっていろいろ折り合いつけましょうおず
体の洗浄、心の洗濯、東照宮のいろんな猿
今週末は、よし、湯治しに鬼怒川へ。おひとりで。
「俺の席の例のアレ。まだだぜ!」 2008年1月27日

【 さよなら、みなさん 】
「無意識のうちに飲み干したのか?」
高円寺庚申通り2階にある喫茶店
ステンドガラスの小窓、タイル細工が施されたテーブル、丸フラスコのコーヒーメーカー
木彫りの象さんの洋服掛(鼻の部分がにょきっと上向きで、そこに服をかける仕様)
そんなモダンな、ブラウンを基調にしたモダンな店内、とは裏腹に、
店内の一角にあるテーブルには「どうぞ御自由に御覧ください」的に積み上げられた
ニッカンスポーツ、漫画ゴラク、鬼平犯課帳が投げ捨てられたように置いてある
モダンがゴラクに蝕まれる、なんかこの辺が高円寺だよな、落ち着くわ。
開店当初はきっとマスターも、子洒落た、モダンな、気品のある店を目指したのだろうけど
気づいたら漫画サンデーだもの、そして競馬雑誌だもの、じわじわ高円寺住民の庶民派生活臭に蝕まれた。
と、まぁ、そんな喫茶店に入店し
ちょうど窓際の席が空いていたので窓を背にそこに落ち着く
陽も随分と高い、光が差し込んで来る
ひとなめ辺りを見回すと、客層はおっさんとおばはん
スポーツ新聞をちまちま読んでいるおっさん
ごてごてした服着た有閑マダム2人組
あと胡散臭い男がぺらぺらペらと向いに座るおばはんに向かって土地転がしの話をしている
言葉の合間合間に「金」「請求書」「土地証明書」がちらほら、如何わしい
それとテーブルいっぱいに書物・ノートを広げ、ぽつぽつと文字を書くおっさん
後ろの席の有閑マダムの笑い声とぺちゃくちゃ話しにフルフルと怒っている
2度、マダムの肘がぶつかって、2度目に「いいかげんにしてくんねぇかな!」と怒鳴ってた
俺はケーキが食べたいなと思ってた、メニューにケーキはなかった。
席に座り、プフーとタバコを吸うとチョッキを着たあからさまにマスターが水を運んできた
おっ さすがマスター、チョッキを着ていらっしゃる、まごうことなきマスターやんか
自分はそのチョッキに喫茶マスター魂を垣間見た
いくらマンガ雑誌が置かれようとも、土地転がしの話しをされようとも
この喫茶チョッキだけはゆずれねぇぜっていう心意気
じゃぁその心意気を買って、ちょっと高いアイスカフェオレを注文
冬場にアイスカフェオレは不釣り合いだけど、室内はぼんやりと暖かい
おまけに窓際だ、陽光がさしててぽかぽかと心地よい、総合的に考えてここはアイスだろう。
冬の慣例にのっとってブレンドとかアメリカンとかのホット類にいくと
ゆくゆくはなんか暑くだるくなってしまう、それは嫌だ。
ところで、ブレンドは濃い、アメリカンは薄いじゃん?
でも同じ値段同じ量なのよね、なら損じゃね?アメリカン
貧乏性な自分はいつもそう思う、なら濃いほうで、ブレンドで!みたいな
でも家で飲むインスタント珈琲はアメリカン!みたいな
しっかりと貧乏性が板についてきた、良く言えば庶民派生活臭。
一度でいいから生活感を感じさせない男になりたい、生活臭のない男に憧れる。
でも駄目だろうなー「今一番何が欲しい?」って問われても
フェラガモの靴とか真顔で言えないもの
フェラガモって俺の中じゃただのエロワードのひとつだし、靴はなるべき履きたくありません
そんな自分だ「今一番何が欲しい?」って問われたら一もニも無く圧力鍋!!
圧力鍋が超欲しい、それも6リットルのな!
圧力鍋あればなぁ…鶏ガラから出汁とれる、煮込み時間大幅削減
圧力鍋があれば生活変わんぞ! 欲しい、でも高価だ。
なんてなことを考えながらタバコを2本吸う
案の定、室温は高くてはじめに運ばれた水は飲み干してしまった
マンガコーナーから借りたスピリッツを読み終えて、三本目のタバコを灰皿にねじ込んで一息
とある疑問が頭に浮かぶ
「無意識のうちに飲み干したのか?」
いや、そんなはずはない、飲み干したにしてもグラスは残っているはずだろう
でもグラスはない
では、グラスが片付けられたのか?
いや、そうだとしてもストローの紙袋はテーブルの隅にあるはず、それもない
マスターを見る、カウンター越しに常連客と談笑している
もしかしたらまだ作り途中なのか? 1滴1滴抽出しているのかもしれない、だから時間がかかるのだ
ましてや現在冬、冬にアイスを頼まれるなんて想定範囲外であり
いつもなら確保しているアイスコーヒーを、冬だから確保していなかった、と考えればつじつまが合う
いままさに俺が飲まんとするアイスコーヒーは丁寧に丁寧に1滴1滴抽出である
しかぁし、にしても時間かかりすぎだろ? 20.30分経ってんぞ、飛ばし読みとはいえスピリッツ読み切っちゃたよ!
「まさか」まさかとは思うが、いやーないだろう、いくら店内が高円寺臭に蝕まれても
マスターのマスター魂は健在のはず、彼の胸の奥でゆらゆら燃えているはず
じゃなきゃ喫茶チョッキなんて着るわけがない
喫茶チョッキを着ているのにも関わらず、常連客とお喋りしててアイスカフェオレ作るの忘れてた
ってなことはない、ハズ。ないと信じたい。
けど、あっあっ、マスターなんか、それ、え? あきらかに俺より後に店に入った人の珈琲持っててるよ
しようがねぇな、つって立ち上がり、スピリッツをテーブルに戻しついでに
「マスター」つって、右手でグーをつくり親指だけを突き立てたgoodの状態で、親指先を背後の自分席を刺し示して2、3度振ってみせる
意味合いとしては「俺の席の例のアレ。まだだぜ!」
ちょっとわかりづらいかなぁと思ったけど、そこは、さすがマスター!ばっちり伝わった!
そしてマスター、ばっちりカフェオレの存在を失念していた! 取り合えずチョッキを脱げ!と強く思う。
わずか40秒でアイスカフェオレ登場
早いのはいいことだけど、なんでかな、やっつけ仕事感が拭えない
けど旨いアイカを飲んで、漫画ゴラクをぺらぺらめくる。
めくるめくやることがない。なくなってしまった。
夕刻、神社で夜間シャシンを撮る
一通り撮り終えて、神社一角の休憩コーナーでホットココアを飲みながらタバコを吸う
ふと西の夜空を眺めるとUFOが飛んでいた。
「芽生えた俺のフェチズム」 2008年1月25日

【 カナリヤ 】
「休」と書かれた左足と「日」と書かれた右足で
「金曜日」という名の霜柱さっくさく踏み締める。
「自」と書かれた左翼と「由」と書かれた左翼が
踏み固めた凍土からバサムバサム生えてくる。
尖端がゼンマイのようにくるりと曲がってあって、濃い緑に朱色の筋
その翼の感じがなんだかえらく気色が悪いので早足にその場を立ち去ると
ぼろぼろ土を撒き散らし、凍土上空へ舞い上がるのを見た。感動は薄い。
朝日を背にする斜に削られた半壊の日本家屋
空の青と逆光の家屋黒が織り成すコントラストはなんとも寒々しい
寒々しくてしようがねぇから見てるこっちも底冷えしてきて
首をすくめ、足をすくめ、冷気まっただ中!みたいな朝をガクガク滑る
澄んだ空気のこの清々とした潔よさに、根拠のない希望を感じます
冬の空気のこの凛とした緊張感に、根拠のない希望を感じてしまいます
肺臓脾臓に自堕落をくんくんに詰め込んだ者とは思えない心変わりに
やや違和感を覚えながらも、無理せずひきいつった笑顔をみせる
毛糸の手袋を口にくわえて財布から100円玉を取り出す女子高生の足が太い
昨今、芽生えた俺のフェチズム、とてつもなく興味深い
その足で何を踏み締めるんだ、教えてくれまいか、俺に教えてくれまいか
今し方、今朝し方、霜柱を踏み締めたのは自分です
踏み付けたその一瞬は、一瞬だけは、何も感じませんでした
でも霜柱は確に潰れた、足裏で潰れる感触と潰れゆく幽かな音だけが体に残った…
なんてなことは統べて罰罰だ、過去のペケペケだ
誰かに踏まれた霜柱、剥き出しになった霜柱、朝日を浴びてキラキラ
愛おしげにそれを眺めていた、しゃがんでシャシンに納めたのが今朝の自分
躊躇して、立ち去った、そこに俺の足跡はない
降り注ぐ凍土は踏まない俺にだけ降る。目の前に休日。女子高生の足は太い。
浮かれ気味に縷々綿々。予定はまだない。
「雪が降ろうが降らまいが」 2008年1月22日
異常な寒さで目を覚ます、寒さで目を覚ますなんて朝から屈辱感でいっぱいだ
ふと壁掛け温度計をみると9℃、室温がふた桁をきっている
数値は説得力を帯び、より俺を屈辱的な気分に陥れた
夏は確か36℃まであがったよな… で、冬は9℃か… その差27℃
って温度差をはじき出したところで何にもならねぇ
ただただ夏は茹だるほど暑く、冬は凍えるほど寒い
今まで見合わせてきたけど、そろそろ真剣にガスストーブの購入を検討しようかしらん
冬は寒いものだと軽んじてきたけど、けっこう命に関わる問題やもしれん
ふぅー 室内なのに吐く息がホワイト。なんなんだ、この寒さは。
蒲団から体がはみだしているわけでもなく、窓が開け放たれているわけでもない
防寒もちゃんとしているつもりなんだが、まだ何か足りないのか?
しっかり蒲団にくるまっているし、寝巻きのうえにドテラを着て
そのうえから「毛布」→「綿布団」→「羽毛布団」の三枚がけミルフィーユ
これ以上どう策を講じればいいのだろうか、なんでこんなに寒いのだろうか
ふー 吐く息はホワイト、でもこれはタバコの煙り
座椅子に腰掛け、タバコをふかし、円柱型電気ストーブにぴったりと張りつきながら考える
しかし電気ストーブはしょせん電気ストーブ、熱面から1メートルくらいしか暖かくない
やはり空気そのものを暖めるガスストーブが必要なのか
この寒さがこれから毎日続くのかと思うとゾッとする
そんな中、この寒さの原因を知ったのは数分後
仕事に行きたくないワン、眠たいワンと現実に尻込み
已然として電気ストーブ前で張り詰めて、ぼんやりとデスフィッシュアイでつけっぱなしのテレビをみていると
画面に朝の情報番組で贔屓にしているお天気お姉さん登場
お姉さん寒空の下に立ち
「今朝の関東地方は広い範囲で雪が降っています、ここお台場も御覧の通り雪が…」
雪だ!!!
勢いよく立ち上がってベランダ前の吐き出し窓から空をみる、白いのがちらちら舞っている!
お台場だけじゃねぇ、高円寺も雪ではないか!
おおおおおお雪。白い。
ははは 雪かーい! そら寒いわ、どうりで寒いわけだ
なーるほどねー 雪か、なんだそうだったか
ああよかった、デフォルトでこの寒さだと思ってた
別に落ち込むことはないわな、雪だし、ってことでようやく活動を開始
歯を磨き、弁当を拵え、自転車にまたがって駅を目指す
降雪の中で自転車を漕ぐと無数の雪粒が俺に向かって飛んで来る
この感じ、なんかSFっぽい
雪を隕石に見立て、宇宙空間を飛び回るパイロットの気分
・
「雪」でテンションがあがってこの日は切り抜けたけど
冷静に考えると、恐ろしいことに何も前進していない
きっと明日の朝も極寒であろう、雪が降ろうが降らまいが、どうせ阿呆ほど寒いはず
その度、ぶるぶると凍え、朝の貴重な時間を無駄にしてしまう
結果遅刻しそうなので急いで駅に向かう最中、注意力散漫になっていたため車に跳ねられて死ぬ
これじゃ両親にも友人にも俺をはね飛ばした人の御家族にも申し訳がたたねぇ
このままじゃぁ駄目だ
知恵を振り絞って現状を打破しよう!と考えた結果、対抗策2つ
〜〜〜 対抗ワン・順番 〜〜〜
俺の蒲団順番を同僚に話したら完璧順番を誤っているとのこと
とくに三枚目の起用方法、そう、羽毛の起用を完璧間違ってた。
これまでは「敷き布団」→「俺」→「1.毛布」→「2.綿布団」→「3.羽毛布団」の順番でしたが
これでは折角の羽毛が生きてこない
冬睡眠のエキスパート羽毛様の凄い所はなんといっても体温をたくわえるところ
だのに、それを3番目、つまり1番上に持ってきてはその能力が存分に発揮されない
羽毛は体にもっとも近いイの一番に起用すべきだ!といわれ、オーダーは以下のように変更された
・
「敷き布団」→「俺」→「1.羽毛布団」→「2.毛布」→「3.綿布団」
・
1番羽毛が俺の体温をがっちり包み、2番毛布が温かさを演出し、3番綿布団が総てを包み込む
今日からはこのオーダーで乗り切ろう。
〜〜〜 対抗ツー・位置 〜〜〜
この部屋で一番寒い場所、それは、今朝室内から雪を見たベランダに通づる吐き出し窓周辺
この付近からは冷たい外気(通称:青の波動)が放射され
明け方なんて軽くヘコむくらい寒い
にもかかわらずこの青の波動影響範囲内に平行して蒲団を敷いている
寒いのは承知の上で好き好んでここに蒲団を敷く理由
それは、もう、風水しかないわけですよ
風水学的にこの場所で眠ると「精神が安定する」というから
わざわざ寒いところに蒲団を敷き、精神の安定を求めて
明け方、ぶるぶる身体を不安定に震わしながら眠るわけです。
しかし、精神の安定のため寒い位置で眠って、風邪をひいて、不健康になったんじゃ屁もでない
不健康になると心に隙が生じて、結句、精神が不安定になってしまったんじゃ元も子もないし
巡り巡って、不健康から体調不良、睡眠障害、睡眠不足、寝坊、遅刻、急いで駅に行かなければ、つって、
注意散漫のまま車道に飛び出して、車にはねられてしまう
いくら精神の安定を得られても、どうせ車にはねられてしまうっくらいなら
せめて温温眠りたい、なるべく寒くない所で眠りたいってのが人情で
風水に背いてずるずる蒲団の位置を変更する。
そもそも、その「精神が安定する」って位置で眠ったところで安定したかしねぇかいまいちピンとこねぇし
今の、この状態を「どっしりと安定している」ってんなら、あたしゃ風水なんて信じないよ
安定どころかめちゃめちゃ浮ついています、淫妄想を膨らましては夜な夜な悶々としております
寒さで目を覚まし、朝から屈辱感を感じるほうがよっぽど不健全、体にも心にも毒だ毒。
雪雪こんこんずんずん積れ。
明日からは、多少暖かく目覚めてみせます。

【 初雪 】
「卵心中相対死に。」 2008年1月21日

【 淡白 】
アスファルトに得体の知れぬ液体がこぼれている様は気色が悪い
しかし、その気色の悪さがたまらなく好きだ、目が離せない。
その液体が乳白色なら、乳製品ならよりいっそう気色悪く、いよいよ目が離せない。
牛乳、カフェオレ、ピルクル、マミー、ヤクルト、抹茶オレ
こぼれたそれがいくら絞りたての牛乳だろうと、時折無性に飲みたくなる甘甘マミーだろうとお構いなく
一度アスファルトに垂れれば毒、取り返しはつかぬ、乳白色盆にはかえらぬ
得体の知れない白濁汚水と成り下がって、どくどくとアスファルトの隙き間をだらしなく這っていく
じわじわと、よぼよぼと、単細胞の一生命体のように侵食していく。
.
高円寺のスーパー脇にある薄暗い路地にも汚す白
道行く人は嫌悪の眼差しを呉、すたすたと過ぎ去っていく
それを凝視する自分の脇も過ぎ去っていく、自分は、また、目を離せないでいる
足下に破裂したゲル物質、温泉卵
つややかな黄身飛散、透明と白の中間タンパク質飛散悲惨
卵なのに精液のような白身に包まれる黄身、気味悪い
落下の衝撃を残したままアスファルトで冷たくなる。卵心中相対死に。
.
落ちるその一瞬手前までは人の命つなぐ食料だったのに、価値のある存在だったはずなのに
ひとたび落ちてしまうとこの様だ、誰も見向きもしない、それどころか蔑まれる
自分もいつかこうなるのか? すでにこれなのか? それ以前に自分に価値はあるのだろうか?
そんなことを考え始めてしまうといよいよ目が離せない
納得いく答えを導きだすまで目が離せない、動けない。
でも俺は蔑まんぞ、地面に這いつくばってまでちゅるちゅる白身を啜りはせんが
堕ちた卵に俺は価値を見い出してやるのだ。
「背表紙から伝わります」 2008年1月21日

【 波チョイス 】
〜〜 波チョイス 〜〜
西洋骨董洋菓子店:よしながふみ
こいつら100%伝説:岡田あーみん
狂人関係:上村一夫
統べて未読の作品で、どういった内容か描かれているか皆目見当つきませんが
背表紙の書体/タイトル/配色を見るだけで、
びっちりくっきり露骨に三者三様っぷり、各々の交じらなさ、共通点のなさが伝わる
背表紙から伝わります。
よくぞこれだけ方向性の異なる、毛色の異なる作品をチョイスしたなぁ波さんよ
なんてつくづく感心しつつ、と同時に、自分の甘さを鑑みる
それに引き換え自分はなんだ!? 自分のチョイスは偏り気味ではないか
いくら松本大洋先生の本をリクエストされていたとしてもだ
もすこしキワ色を出していけば良かったと思う、今さら思う。
がんばってでも、相手の迷惑を省みなくとも、ワンピース(現状)全48冊持っていくべきだったのか…
〜〜 タクロウチョイス 〜〜
ピンポン:松本大洋
青い春:松本大洋
ギャグ漫画日和:増田こうすけ
明日の弱音:タイム涼介
きれぎれ(小説):町田康
うーん やっぱ甘いな、次回頑張ろう。
ってなわけで、波さんたる人物と昨日高円寺でお会いし
わぁきゃぁわぁきゃぁいいながら高円寺をぶらりと歩き
モス行っちゃぁ漫画とエロスと文学話
名曲喫茶ネルケン行っちゃぁ、小声で漫画とエロスと文学話
笑笑行っちゃぁ… って、結局、何処行っても漫画とエロスと文学話
笑笑じゃぁ大声でげらげら笑いながら漫画とエロスと文学話
いやぁ愉快愉快、欲しい知識がどんどん詰まっていくこの感覚、悦楽悦楽
あとタクロウジャシン日記風に喋っても引かれないこの心地よさよ、うはははは
しとどに飲んで、おおいに笑う
おすすめ漫画を各々持ち寄り合い
長野山奥にある保養所で漫画+合宿、いわゆる「マンガッシュク」を執り行う
なんてな企画が話しの流れで自然と生まれた。
結局、なんだ、22時、駅で別れるまでの10時間
飽きずに、詰まらずに、止まらずに漫画とエロスと文学話ばかりノンストップで話してた
これだけ喋れる人はそう滅多にいないな、やはり尊敬出来る人物でした
漫画や小説に人生を若干棒に振りつつある人とは、やっぱ、波長が合う。
「小鳥を飼いたい。」 2008年1月19日

【 コア 】
小鳥を飼いたい。
「小鳥を飼いたい」とだけ書いて5分間の沈黙
この文章のあとに飼いたい動機を書くべきか。小鳥の種類を書くべきか。
小鳥の配色を書くべきか。小鳥がもたらすであろう福音を書くべきか。
想像しうる小鳥との生活を書くべきか。生くるべきか死ぬべきか。
5分間、その1文に続く言葉を探す、幾つか思い浮かんぶけど、どれもおもしろくない
試しに書いてはみるけど報告文章無味無臭
どうしても浮かんでこない、具体的な文章と、転がる先の行く末が。
「小鳥を飼いたい」と書き出すのにも90分かかった
そう、90分かけた果て「小鳥を飼いたい」だ。
自分はもっと出来ると思ってた、今まで書くことが思いつかない日も書いてこれたのに
今日はなんなんだ? この体たらくはなんなんだ?
90分で小鳥1羽って… 全然できやしないじゃないか、お前の方がよっぽど小鳥だよ!この小鳥男め!
苦悶
苦悶
苦悶しかし
不思議なことにだんだんと「小鳥を飼いたい。」という文字のカタチに安らぎを覚えはじめる
小鳥を飼いたい。
ほら? ね? でしょ?
いっそのことこの1文だけで集結するのも面白いのではないか?
自分が好きな「実験」ではなかろうか? 画期的ではなかろうか? そう考えはじめる。
小鳥を飼いたい。
ああやっぱ良い字面だ。純粋で無垢な愛を感じられる。
小鳥を飼いたい。を連発してもしつこくない。
と連発しているのにも関わらず、現状は「飼う」にまで至らないでいる
話は急に現実的な小鳥飼う事情に遷移するが
率直に言うと、相手は小鳥だ。それは命だ。
そう、命を預かり育む覚悟が決らない。
小鳥にとってのやどり木になる自信もない。
ましてやこの季節、自分の家は逆に笑えるくらい寒いので
小鳥が死んでしまわないか不安でいっぱいだ。
それまでは、決意が固まるその日までは妄想小鳥を飛ばして遊ぶ
体は水色で頭は白色の小鳥
ガンダムから黄色と赤色を抜いた配色のセキセイインコを飛ばして遊ぶ。
「痛々しくも平穏な日々」 2008年1月18日

著しく陽気ってなわけでもないし、著しく陰気ってなわけでもない
ちょっとイライラして、ちょっと笑う、あとは無味
ここ数日、さして取り柄もないよな平穏がだだらに続く
長く、だらしなく、弛緩しっぱなしの平穏
畳に沿ってゆるゆると伸びる、しわしわサラシのような平穏が伸びる
そこに起伏はない、起伏なんて生まれない
雨に打たれて咽び泣くよなドラマティックな展開なんかもちろんない
それが止まらなくなって人に助けを乞うたり胸が苦しくなるなんてなこともない
或のは平穏、吉良某のように静かに暮らす
毎朝文句も言わず仕事に赴く、誰もいなくなった自宅に帰る
風呂場の曇った鏡に石鹸をぬりつけ曇り止めを施す
流し台にたまった食器を洗うのが面倒な時は、とりあえず食器を水につけ上から洗剤をまぶす
ティッシュを買わずトイレットペーパーで総てをまかなう
99ショップの冷凍ネギと冷凍エビは常に冷凍庫へストックする
こんなことになんの意味が有るのだろうか、痛々しくも平穏な日々
江戸小紋「釘抜き」柄のどてらを羽織り
四畳半の丸ちゃぶ台の前で芋焼酎を飲みながら水炊き鍋をつつくこの生活に起伏は生まれない
ポン酢が切れてしまったのでサンダルをつっかけて近所のコンビニへ赴く生活に起伏は生まれない
道すがら夜空を仰ぎ「カシオペア座が奇麗に見える、なぜなら空気が澄んでいるから」なんて嘯く生活に起伏は生まれない
必要なのは平穏じゃない、これだけは確かだ、だから、そう、うん、書くことが生まれないのだ
波瀾、狂乱、怒涛、初体験
なんでもいいから何かしらを起こさなくては、引き寄せなければ
結句うだつもあがらぬまま、この調子でゆるゆると平穏をこじらせて遁生に至る。独居で死ぬる。
「訂正」 2008年1月16日

【 ヨルヨル 】
訂正
掲示板復活は10ヵ月ぶりではなく、1年10ヵ月ぶりでした
あと、昨年はタクジャ5周年と銘打ちましたが、違ってました。
昨年はたぶん6周年か7周年、今年で7周年か8周年、ともにどちらか。
今年で7周年であるという情報が今のところ有力です。
周年の計り方がいまいち掴めない
「ウサギがウサギでなくなっていく」 2008年1月15日

【 流星 】
手のひらの表皮がどしどしめくれていく
・
たなごころの逆サイドに浮きでた白い薄皮の円
まるで月面のよう
クレーターのよう
努力すれば己の手のひらに月面ウサギを見出せるかも知れない
キネを担ぎ餅をつくウサギの姿
奇しくも今日は鏡割りの日なり奇しくない、こじつけだ。
・
その浮きでた円を拠点にどしどし表皮がめくれていく
ウサギがウサギでなくなっていく
もっと、こう凶悪な感じ、小動物から獣へ、草食から肉食へ変化
変化するごとにぼろぼろと汚らしくめくれていく
不思議なことに、今度はめくれていない部分が汚らしく見えてくる
・
ぼろぼろの手のひら、かさかさの手のひら
手荒れのメカニズム、そのからくり
冷たい水で米を研ぎ、乾燥した冬の空気にさらすから
急激に必要な水分まで失った手は荒れるのだろう。
化学洗剤をつかって食器を洗ったり、浴槽を洗うから
必要な油分まで失った手は荒れるのだろう。
何かを得るには何かを失わなければならない
手荒れに等価交換の本質をみる
せめて米は無洗米に変えよう
洗わなくて良い米「無洗米」
「洗って無い米」と書いて「無洗米」
むーしーろー「有洗米」だろうと! 洗って有る米だろうと!
私は言いたいわけですよ! 矛無!
・
そうやって、だだらに、ウサギだの、米だの、手荒れだのぽちぽち書いている最中も
むず痒さと、ひりひりとした痛さを感じながら
白色クレーターを中心にめくれていく。
いまいちど手のひらをみる
ああ 随分広がった、指の付根まで勢力を拡大している
この戦はいつまで続くのか、戦火の果てに平穏は訪れるのか
手のひらを戦国絵巻になぞって妄想遊びに耽っていると、ふと
ふと、こうやって手の皮がめくれることによって、手相は更新されていくのか?と考える
手相の変化、運勢の変化
こうやって運命は書き換えられていくのか?と考えると
ならば、せめて、良き線を刻み込んでいただきたい
そう願い、切々と願いを込め、両手をあわせる。