次の問題を考えてみよう。
問題1 2点A,Bで交わる2円がある。Aを通る直線とBを通る直線が図fig-38のように2円とP,QおよびS,Tで交わっているとき、PS//QTである。これを証明せよ。
fig-38
問題2 問題1でPQとSTが図fig-39のように引かれているときもPS//QTは成り立つか。
fig-39
Cabri を使って問題1の図を描くことは簡単である。さらにこの点Pを動かしてみることができる。そうすると、動かしている途中で問題2の図が表れる。上の2つの図は、一つの図を連続変形して出てくる同じことを問題としていることがわかる。
同じ図を連続変形してでてくるものとして、 さらに次のような異なる図がある。
問題3
PS//QTということは、Cabriでは連続変形して得られるただ一つの事実なのであるが、これを証明しようとすると上の7つの場合について別々の証明をしなければなりません。あるときは、円に内接する四角形の性質であり、あるときは円周角の定理であったり、またあるときは接弦定理だったりします。
連続変形から近くされた情報が、証明するとなるとまったく利用されなかったということは、少々おかしいことです。図形の連続的な変形を観察し、それまで別々の図として見ていた図形が、実は一つの作図によって得られる図形の変形の一コマであることを理解したかに思えたが、証明となるとそのような視点は忘れ去られ、7つの場面でそれぞれ異なる証明を使って証明されるなんて。
円周角はなるほど、動きに対して不変になっています。しかし、本当に不変に保たれているのはいったいどの角度なのでしょう?円周角は、優弧のときと劣弧のときで 角度が違っています。
ところが、次の図を見ているとどうでしょう?
「太い直線から細い直線へ向かう角度」が、不変に保たれている角です。この角を「円周角」ということにすれば、これまでに円の性質で扱われてきた
1 円周角
2 内接する四角形の対角の和が180°
3 接弦定理
の3つは、この新しい「円周角」に吸収されて、一つの事実として語られることとなります。図を動かしているとこれまでの扱いが正しかったのか再検討しなければならないこともでてくるようです。
上のことは、
「幾何学的思考における図形表象の道具的制約に関する一考察」
梅下 博史 著 認知過程研究1996年度報告集 No.4
東京大学大学院教育学研究科学校教育開発学コース学習開発学研究室
に述べられていることを紹介したものです。
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