数学教育協議会全国大会(1998年8月三沢市)
開会行事における特別講演

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Dynamic Geometryについて

ジャン=ラボルトさん

はじめに

 こんばんは、このように大勢の皆様に歓迎していただけるのはうれしいです。 今日と明日と、幾何学についてたくさん話す機会をいただきました。 昔から日本が幾何に強いということは知られております。私たちの国から来ますと、 この国は大変遠い国ですが、招待していただいた中村先生、 このような機会を設定してくれた宮本さん、最近6年来の友達で 今回もお世話になった小林一路さんに感謝いたします。 年一回の全国大会に招待していただきありがとうございました。 小林さんだけでなく、通訳の野崎先生とも長い間の友達です。 数教協の「AMI」というのはフランス語で「友達」を意味することが大変重要です。

幾何学の新しい方向

 今日、ここで幾何学の新しい技法について、どのように動きを見せるか ということをみなさんにお示ししたいと思います。この機会にご説明したいのは、 「動的幾何」といわれる新しい方向性を示したいのです。 「動的幾何システム」とは、画面に現れた図形に対して直接操作を施して 動かすことができるというシステムです。 「カブリ」はグルノーブルで開発されたシステムです。 グルノーブル大学の応用数学科が中心として作ったのですが、野崎先生も 31年前いらっしゃいました。

Dynamic Geometryの歴史

 最初に「動的幾何」とは何かをお話します。 動的幾何のアイデアはだいぶ昔からありました。 18世紀のころから図形をうごかしかたらどうなるかを考えた数学者がおりました。 クレロー、ロバチェフスキー、グリューノーです。 探せばもっと古い人の中にも先駆者がいたと思います。

Dynamic Geometryを可能にしたシステム

 基本的には、「図形を変形する」ということです。 曲げたり動かしたりすることを「無制限に」行うことです。 そういう概念が少しでも実現されたのは、「マイクロワールド」というシステム からです。私たちのところで開発したカブリもこの「マイクロワールド」 が土台にあります。同じようなシステムは日本にもありました。 アメリカにもありました。その中では、あるレベルに達したものの中では 古いものであり、世界のいろいろなところで使われています。 実際に使って勉強している生徒の数は100万を超えています。 アメリカ、日本、フランスのほかにもアフリカのように十分な科学技術が 普及していない国でも使われています。

 これからコレットさんが、コンピュータのハードウエアだけでなく、 ソフトウエアについても説明しますが、このソフトはこのようなポケットに 入るようなポケットコンピュータにも搭載することができます。これがその実物です。 1992年、本当にポケットに入ってしまうものができました。 このような形のものができますと、このような高度なものでも、 いろいろな国で使われるようになります。 これから、ごく簡単に2つの例を取り上げて、カブリの特徴を説明します。

 今、実際に日本に入ってきて使われているのは、初版のものですが、 ここで紹介するのは第2版のものです。新しい版が日本ですぐに使えないのは漢字の問題があるからです。現在 Win95日本語版が発売になっています。

実演

 円周に内接する直角を作ると、それが円を真っ二つのわけます。 カブリシステムではコマンドを入力するのではなくメニューから選んで操作できます。 今、直径をひとつ書いてみます。円周の上に特定の点を指定します。 (赤く光っているところですね。これからこの点、A点と中心に対して対称点をとって 直径を作るのを実演してみましょう。

 最初、この点を対称点を求めたいのか?という質問がでて、YESと答えます。 つぎに対象の中心を指定しますと、求める点が現れます。 次に、2つの点を結ぶ線分を書いてみます。今、これで、直径が決まりましたが、 もうひとつ円周上の点をとると直角三角形ができます。 各点に名前をつけることもできます。ここで、点Mを動かすと、 AとかBとかは動かないで図形を動かすことができます。 これが「動的幾何」の簡単な例となります。

 三角形の3つの角M、A、Bに印をつけます。角Mは90度になりますが、 コンピュータはこれが直角であることを知っているので、このような印ができます。 線分の長さや、角度の大きさを調べることができます。 その結果が数値で画面にでます。今、点Mを動かすと、三角形の形は変わります。 でも、角Mはいつでも90度のはずですが、Mを動かしてみることで、 変化しないことが確認できます。必要があれば、もっと細かく値をだせます。 (今の画面ですと有効数字12桁ぐらいでしょうか)。

条件を保存した動き

 ADというのは、直径という指定はしてない。点Bの定義は、点Aの中心 に対する対称点という指定なのです。点Aを動かすと、この定義にしたがって 自動的に決まってきます。今度は点Bの定義を円周上の勝手な点と変えてみます。 今度は点Aを自由に動かしても点Bは変わりません。今度はMの角度も変わりますね。 円を大きくしたり小さくしたりしても、もちろんできます。 これは大げさに言えば、大きさの変換に関して不変な性質が見られた ということですね。

操作に関して不変なこと

 最後にMを動かしたらどうなるでしょう?どう動かしてもかわりませんね。 これは円周角の定理として知られています。こういう変形のなかでMを動かすとき 制限はありません。自由にうごかすことができます。このようにMをどのように 動かしても角度が変わらないということは、円周角の定理を習っている生徒にとっては 知識の確認になりますが、習っていない生徒にとっては、新しい予想をたてる ということになります。Mという点を円周の外にひっぱたらどうなるでしょう? 生徒が間違えて円周の外に引っ張ろうとすると抵抗がかかっています。 Mは円周上にあるという条件がついているので、これはできないわけです。

 次に円周のなかでMを動かしてみます。点Mが上半分にあると75°ですが、 下半分にくると105°となります。これで非常に簡単ではありますが、 非常に面白い性質です。2つの定数がでます。この例を終わる前に下のほうに も三角形を作って、上半分とした半分の角度を画面に出して、この合計を計算してみましょう。上半分とした半分を個別に動かして見ますと、75度と105度は 変わりません。その和も180度と変わらないはずですが、コンピュータの関係で 変わってしまいました。小数点以下1桁にしますと大丈夫です。

 フランスでは、このような幾何学へのコンピュータシステムの 応用を考えています。コレットさんからそのような応用を紹介してもらいます。

コレット=ラボルトさん

幾何教育への応用

 フランスでは中学生がおもに使われていますが、小学校でも使われます。 小学校の例です。

 残念ながら、フランスでは小学校で教えている多くの先生が幾何学を知りません。そこで主に要求されるのは言葉のうえでの訓練とかしつけとかで、 数学とはあまり関係ありません。

 幾何学で教えることも、「言葉」を教えることが多いのです。 子供たちが習うのは、これが「直角」、これが「正方形」とかというように 言葉を覚えます。子供たちが覚えるのは、図形的なイメージを覚えるのです。 図形にどういう性質があるのか、とか、それが他の図形には成り立たないとか という性質と図形の関係に弱いような状態です。そのような中で、このカブリは、 言葉しか知らない子供たちに言葉と図形の性質のつながりをおしえるよい道具です。

 子供たちに直角が3つしかない四辺形を書けという要求をします。 できないはずなのに、子供たちはどこかをごまかして書いてしまいます。 いんちきをやります。さもなければ3つの線を引いたほかに輪を書いてしまいます。 そこで紙と鉛筆を使わないカブリの登場です。 カブリですと子供たちが自由に点を打って直角を作ることができますが、 いんちきはできません。3つ直角にしますと、4つ目はどうしても直角になります。 そこで四辺形で3つの角が直角だったら、4つめは必ず直角になると気がつきます。

 カブリのいいことは生徒にいろいろなことを示すことができますが、 変形によって変わる性質、変わらない性質を見せることができます。 またカブリは教員養成にも使うことができます。これから教員になろうとする学生が 幾何学を再構成するのに役立っています。 カブリを使うと論理に弱い人も図形の性質を見ることができます。 そしてそれを通して数学を学ぶ良い道具でもあります。

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