1999年 9月27日(月)

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新幹線でインテグラル

ことのおこり

 今から9年も前になるが、1990年6月8日、私は午前中に授業を済ませ盛岡駅に急いだ。友人の結婚式に出席するために東京に行くのである。私が乗ったのは盛岡発12:25のやまびこ138号である。

 盛岡を出発してすぐに、車内放送でビュッフェの案内があった。私はコーヒーでも飲もうかとビュッフェに行く。カウンターに向かってコーヒーを注文するとき、壁にあったスピードメーターに目がいった。私は少しの間考え込んで、左手の時計をはずすとカウンターの上に置いた。そして、壁のスピードメーターをじっと見ていた。

 間もなく列車は次の駅、新花巻駅に到着した。私は列車が到着すると、さらに手帳を取り出して発射するのを待っていた。13:09:15に発射すると、時計を見たり壁を見たり壁を見たりしながら、15秒ごとの列車のスピードを手帳に書き込んでいった。上野駅に到着する16:16:45まで3時間7分30秒の間、きっちりと15秒ごとに。

データの使い道

 このデータを使って、冬休みの課題を作った。実は、この話しを聞いた生徒の佐藤君が同じようにして10秒ごとのデータを取ってきてくれ、さらに、その話しを聞いた隣の学校の生徒菊地君が5秒ごとのデータを取ってきてくれたのであった。その3つのデータを用いて次のような課題となった。
   1. 時刻tと速度vのグラフをかく。
   2. 15秒間は速度一定と仮定して、各15秒ごとの列車の走った距離を求める。
   3. 2の結果を用いて、各駅間の距離を求めよ。
   4. 時刻表を調べて上の結果と比較し、その違いについて考えよ。
   5. 細かく区切って加えた和を計算するための一般的な方法を考えよ。

計算結果

 上野〜仙台間の距離について見てみると、
  1. 私のデータ    320.8 km
  2. 佐藤君のデータ 319.0 km
  3. 菊地君のデータ 321.6 km
  4. 営業キロ数    348.2 km

生徒のレポート

 この差にはびっくりした。この差の原因を調べるために時刻表をめくっていく途中で興味深いことに気がついた。それは東北本線の東京からの営業キロ数と東北本線の東京からの営業キロ数が同じ値になっているということである。ある情報によると、営業キロ数を同じにしておいて運賃を統一したということだ。

 ということは、時刻表に載っている新幹線の営業キロ数は東北本線の営業キロをそのまま使っているということだろう。

 もしそうだとすると、この差は当たり前である。なぜならば東北新幹線は東北本線に平行に走っているわけではないからである。東北本線はかなり蛇行して走っているが、東北新幹線のほうはかなりまっすぐに走っている。かなりの差があるはずである。

作業の果てに

 15秒ごとのデータの場合、1分間に4回だから、3時間では、4×60×3=720個の計算をしなければならない。「地獄のような作業2,3がやっと終わって震える手でデータを見てみる。」といっている。本当は、15秒間速度が一定であるという仮定のもとに計算をしているところで発生する誤差の蓄積を評価して欲しかったのであるが・・・。

 ある生徒の父親はJRに勤めていて、生徒がやっているこの課題に興味を示したようである。そして、JRの内部資料を調べてきてくれて、東北新幹線の実測キロ数を教えてくれた。上の、上野〜仙台間の実測距離は 321.8 km である。菊地君のデータとの違いはわずかに200mだけであった。盛岡〜東京でも誤差はわずかに200mである。

 こういうデータが出てしまうと、誤差の評価をしようなんてこともどこかに飛んでいってしまう。なにしろ、事実に非常に近い値が出てしまっているのだから。

 やはり、体を動かして得たものは、信じ易いということだろう。

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