11 授業後の座談会 その3

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ベクトル量とベクトル

伊藤潤: 伊藤潤:「ベクトル量」と「ベクトル」というのがあると思うんですね。ベクトル量というのは,移動だとか力だとか加速度だとか,いわゆる自然界のなかにおける,ベクトル的なもの,宮本先生の今回の授業は,まずベクトル量の例を2つあげて,それらに共通の性質を取り出してベクトルを定義していくと,うまくいくんじゃないかということなんですね。

宮本: ベクトルを「量」から入るということについてですが,まず「量」そのものについての考察が足りないような気がしています。例えば,ベクトルの実数倍というのを,今日の授業では「比較する」という言葉で表しました。そういうセンスが今までの実践には欠けていたのではないかな。
「量」から「数」が抽象される投階で,「比較する」ということが,足したりするなんかよりも前にあるべきなんじゃないかと思うんです。

伊藤潤: 今のわかりました(笑)?

七海: 比較って聞きたいときに,比較っていうと何か長さの差を考えるんですけど,k倍というのを比較と言ったのは素晴らしいことだと思うんです。

小宮山: k倍についての疑問なんだけど,ベクトルのスカラー倍のときに,たし算から整数倍,分数倍,といった連続的にk倍が入るのか,そうでなくてふっと「k倍」するというのに入っていくのがいいのか,どういうもっていき方がいいのかということです。今日の授業の流れからは,たし算から2倍,整数倍…ともっていくのかなという気がしたんだけど。


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量の空間としての「k倍」

宮本: 1次元の線型空間のときには,k倍だけでよくって,和が本当に意味を持ってくるのは次元が上がったときじゃないかと思っています。2つの長さがあったときに,その長さの比をとることが,概念として先に生まれたのじゃないかな。

 和から2倍,3倍…というようにしてk倍を定義するのは,数学の体系を構成していくとさはそうするけれども,現実にはどうなんだろう。移動しても長さが変わらないという保存の概念が出来上がったうえで,正方形の1辺と対角線の長さを比べたときに,その比を長さ1をとって半端を0.1で4つ分とって…つてやるのかな。そんなことやらなくても,現実に対角線の長さと1辺の長さは目の前にあって,どんな数かは分からないけど比は考えられるよね。

伊藤潤: 昔,私が授業でk倍の話をやっていたとき,生徒がすごくよく分かったような顔をしたんですね。大体は分かっていないんですけどね。なぜかというと,そのとき,伸び縮みする指示棒を持っていて,それをひゅっと伸ばしたり縮めたりして見せたら良かったみたいです。和からk倍に入るのは,実数倍のときにイメージが弱くなりますよね。そういう意味でひゆうっと伸びる指示棒は連続的な変形のイメージがあって良かったかもしれませんね。

七海: 私も宮本さんの言うように,和よりも実数倍から入るというのは大賛成です。図形の問題を解くときも,1つのベクトルとそれで張る部分空間で考えていることがほとんどなんです。

伊藤潤: ということで,実数倍からやるということで反論はありますか(笑)?実数倍というのは難しいですね。小中学校では整数倍(和)から入っていきますよね。

七海: 杓分とか,外分とかいうのも,k倍というように翻訳するんです。そうすると何分も外分も同じように考えることができて,つごうがいいんですね。例えば,図のようにABを3:2に外分といったときに,ADはABの何倍かと考えるわけです。


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伊藤潤: 小学校以来やってきた「倍」というのは,「整数倍」つていうことですよね。それが高校に入っても,なおかつ「倍」=「整数倍」のイメージが抜けないというか,分かっていても苦しいというか,そういうこともあるかもしれませんね。小学校では2倍3倍から入って,分数倍や小数倍…ということでいいと思うんですが,それがきちんと理解されていない生徒を目の前にしたときは,高校でいきなり実数倍といってもちょっと苦しいかもしれませんね。

高松: ただ,小さい子供が身長を比べるときなんかでも,整数倍とかそういうんじゃなく、ちょっとかければ大きくなるよっていうようなイメージを持っていると思うんですよね,生まれつきというか…だから,高校でいきなり実数倍という考え方をしても,私はいいのではないかと思っています。

下町: 私がベクトルのk倍で大切にしたい感覚は,例えば というベ クトル方程式があったとき,sとtが変化するのにともなって,すの端点Pの位置が連続的に変わるのですが,このとき,首,すがその方向ににゅーっとと伸び縮みして,それによって張られていく平行四辺形の頂点の動きがスムーズに頭にイメージできることではないかと思うんです。
 例えば,1≦s≦2,2≦t≦3というように個別に変化するときは,Pは,の伸び具合から,図のような平行四辺形になるとか,
あるいは,2s+3t≦2(s≧0,t≧0)というような場合には,図の三角形の内部及び周になるということが,すぐにイメージできる。そのためには,まず,実数倍を2倍3倍という和から定義されたものという感覚から離れていないと,うまくないような気がしています。そして,次の投階で,ベクトルの「和」によって,平面上の点にいくんだという。ここでは実数倍と和はそれぞれ別々に重要な役割があるわけですが,このあたりの使い分けがというか,感覚が,ベクトルが好きになるか,嫌いで「ベクトルって結局何?」になるかの分かれ目じゃないかと思うんです。


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小宮山: いずれ,代数的にみてもね,k倍というのが先にあって,それの足し算というのがあって,ということで世界が広がって作られるわけだから,スカラー倍を先に定義するのはいいと思うんですけど。私が言いたかったのは,今日の授業の流れからいうと,和から実数倍に持っていった方が自然かなと思ったんですね。

下町:暴走ゲームでベクトルの大きさが変化していくとき,特に一定方向に大きくなっているときは,比というより加算のイメージがありますね。

宮本: 今日は,授業としては,スカラー倍が先ということを第一に言いたいことではなかったわけですが,密かに「比較する」という言葉を使ってみただけなのです。次に授業をやるときには,もう少し本格的にどのように組み立てたらいいのか考えてみたいと思います。

伊藤潤: 私は,2次元(平面)のベクトルをやる前に,まず1次元のベクトルをもうちょっとちゃんとやった方がいいという気がするんですね。

七海: ずいぶん昔の話になるんだけど.次元の話で,1次元という時に「トンネル型」と「モノレール型」というのがあるんだと。トンネル型というのは,まさに1次元そのものなんですが,モノレール型というのは,2次元なり3次元なりの部分空間として考えるものなんですね。

 1次元のベクトルを考えるとき,このトンネル型でやるというのは非常に難しいと思うんですよね。むしろ,外側からモノレールみたいにぶら下がっているように見えた方が比較的分かりやすい。実はベクトルを書くとき,図1のようではなく,斜めに図2のように書くときっていうのがそうなんですよ。2次元なり,3次元なりの中の部分空間と考えているわけです。数直線としちゃうと非常に分かりにくい。


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小宮山:  確かに,1次元はベクトル空間としては特殊だから,そういう意味では2次元,3次元の方が理解しやすいっていうのは確かにありますね。

伊藤潤:  k倍に関して議論が集中しているようですが,その他に今日の授業で感じたことなどありませんか。

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