ソファ
庶務から預かった追加の書類を手に、塞の最高司令官の執務室の扉を叩く。
いつも通りのぞんざいな返事を受け、いつも通りに扉を開き足を踏み入れ、室内の様子に一瞬動きが止まった。
確かに、執務室の主がいつも通りそこに存在していたのだが…。
平生、横柄且つ尊大な態度でその机に備え付けられた椅子に腰掛けているその人は、珍しくソファに鎮座していた。
実際、その事自体は時折起こり得る事だ。
サボり癖がある訳ではない上官だが、積み上げられる難解な要求に時に辟易し、こうしてソファで難しい顔をして踏ん反り返っている。
確かに今も難しい表情を浮かべ、ソファにいる事に違いはない。
「随分艶めかしい座り方をしておいでで…。」
険しい表情で斜め座りにソファに乗り上げ、足を擦っている少将の姿に、率直な感想を投げかけた。
「うん。足がつって動けんのだ。」
『艶めかしい』と言われた事に怒るかと思いきや、どうやら怒る気力も出ないらしい。
心底困った様な声が返って来た。
「何をなさったんですか?」
机に持参した書類を置き、そのままソファの彼女の元へ向かう。
「いや、ただ落とした書類を拾おうとしただけなんだがな…。」
座り込んだ少将の脇の床に膝を着き、怪訝さに若干眉を寄せて覗き込めば、彼女は若干頬を染めながら気まずそうにそう答えた。
「上手いこと筋に当たった感じだな。少し休んでも余り変化ないし…。」
そして照れ隠しなのだろう、そのまま言葉を紡いだ。
「湿布でもお持ちしますか?」
少し視線を外しながらも大腿を擦り続ける様子に、痛みが本物である事を見て取る。
「……。」
意に染まぬらしく黙ってはいるが、反論の余地がない為に言い返す事も出来ないのだろう。
「動けなくては仕方ないでしょう。」
強情なその強がりの態度にやれやれと溜息を見せて、立ち上がる。
「……。」
見上げてくる涙目は葛藤の証し。
上官を労わるのは十分補佐官の務めだ。
「お持ちします。今暫くそこでお休みになってお待ち下さい。」
今入って来たばかりの扉を押し開け、通路へ出る。
足早に目指すのは医務室。
照れ隠しの何とも言えないあの甘美な表情を、他の誰にも見せる前に消してしまう為に。
****************************
また男目線ばっかりだよ!と気付いた今。
駄目駄目だ。
いや違う!!
あのオリヴィエ様の素敵さを褒め称えたいんだよ!!!
これ、自分が足をつった時に思いついたネタであります。
そしてもう随分経つのに自分は痛みが残ってしまいました…不覚…。
戻る