「ホークアイ中尉、こんにちは。」
「アルフォンス君こんにちは。」
にこやかに、のどかに挨拶を交わす弟の脇で、少し怪訝そうな顔で自分を見つめる兄に、ホークアイは笑顔をそのまま向ける。
「どうかしたの、エドワード君?」
ちょっと驚いたようにハッとして、言葉を濁す。
何かを隠してるような、そんな顔。
「や、何か…今ふと違和感が・・・。」

でも、何でだろう?
言いながらしみじみと、エドはホークアイを凝視する。
その姿に変化は見出せない。
きちんとまとめられた髪、きちんと身に付けられた軍服、きちんと携帯された銃。

相変わらずの、表情少な目美人。
それでも、自分達には優しい笑みを見せてくれる人。

では、この違和感はどこから?

「なに?」

じろじろ見られて、気持ちが良い筈もなく、先にホークアイが音を上げる。






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あった瞬間、『違和感』と言われ、今に至る。

折角だからと執務室でお茶でもと口実を付けて仕事をサボろうとする上司の提案で人数分のコーヒーを入れる。

「違和感…」

エドの言葉を心の中で繰り返しながら、一人給湯室でため息をつく。

やっぱり、彼は勘の鋭い子なのだわ、と。

基本的にどこか抜けているあの人とは違って…。

ため息をもう一つ。

入れたコーヒーを盆に載せる。
大佐と、エドの分。

砂糖とミルクを添えるべく。

「あのさ、中尉。さっきの違和感の話。」

考えに没頭して、急に掛けられた声に驚いて振り向けば、少しはにかんだ様な顔。
こうしてると子供らしくみえるのに、この子も人間兵器。

「何かしら?」
砂糖とミルクを用意する手を休めて、彼に向き直る。
こうなったら、正面から受けて経つ構え。
この動きにも違和感はあるのかしら?

私は至って普通にしているつもりなのに。

「ちがってたら、ごめん。」
と、前置きして。
あ、なんとなく、バレてるな、と感じる。
この一瞬の間。
「…もしかして…子供…出来たとか……?」

奇妙な沈黙。

「違ってたらごめんなさいっ!!」
黙秘を怒りの否定と取ったのか。
続けるエドの声に被せる様に。
「…分かっちゃう…?」

自分でも情けない顔してると思いつつ。

「…なんか、何となく。」

実に曖昧な、でも確かな勘。
きっと説明できるものではないのね。

「本当に、憎らしい位勘が良いのね。」
ため息をもう一つ。
「でもヒミツよ。まだ誰にも言ってないんだから。」

「…大佐は?」
「……なんで、そこで迷わず大佐が出てくるのかしら…?」
「違った?」
「……御名答よ……。」

思わず寄ってしまった眉間の皺を、強引に作った笑顔で誤魔化して笑おうとする。
この際、笑えてるかどうかなんて、関係ないのだけれど。
笑顔も作れないなんて、大人としての余裕がない様な気がして。


事実、余裕は余りないけど。



短時間の葛藤をする間に、エドは給湯室内へ踏み込んでくる。
顔は、笑顔。
紛れもなく、純粋な笑顔。





「俺たち、子供が生まれるのを見たんだ!」
嬉しそうな光を、その強い意志を放つ瞳に湛えて。

実際はウィンリィが立ち会ったんだけど。
少し照れたように、少し視線を落として続ける。

そして、再び上げた視線に射抜かれる。




「生まれたら見せてね!」




嬉しそうな笑顔。
無邪気な笑顔。


こんな顔に迎えられるのなら、生まれてくる子供達は皆幸せだろう。



生むべきか、迷っていたから誰にも言えなかったなんて言えなくなる。



「何で言わないの?」

「え?」
言葉に詰まる。
胸の奥が苦しくなる。
急激に訪れる居心地の悪さ。

「はずかしい?」 
俺が言おうか?大佐のリアクションが見たいし!
恐らく、俄かに曇ったであろう自分の表情に別段のリアクションをせず。
ややもすると、からかいの気配をすら感じさせる口調で。

「駄目よっ!!」

「何で?」

………答えられない。
思わず荒げた声に、驚いた様子もなく、すぐに聞き返してくる。
予想していたのかと思う位、冷静に。



言葉に詰まったまま固まる自分の眼を真っ直ぐに見詰めて、重ねる。


「言おうよ。折角、俺が気付いちゃったんだし。」
明るい声とは裏腹に、強すぎる眼差し。


気圧される。


思わず、反らしそうになった泳ぐ目線の隅で、エドはホークアイの手を取る。
小さくて、暖かい、そして力強い手。


「俺が言ってみたい!言わせて!!」

言いながら、手を引いたまま、部屋を出ようとする。
有無を言わさぬ行動力。




「今言わないと中尉、言わないままにしそうだから。」
前を向いたまま、ふと立ち止まって呟く。


「なっ!?」

思わず止まってしまった動きと言葉。
これでは肯定。

前を歩いていた少年は、ゆっくりと振り向いてにっと笑う。


本当に、憎らしい位勘の鋭い子。

「行こう、中尉。」

諦めて微笑み、エドの腕に引かれる。
ささやかに、覚悟を決めて。






力強い笑顔を放つ、小さな人間兵器の後に続いて執務室への廊下を歩く。











う〜ん。
大佐出てこねえ。

コーヒー忘れてるよ。

だって、邪魔だったんだもん。持ってったら落としそうだし。


なんでいきなりこんなネタやってみたんだろう私。
職業柄妊婦さんは好きなんですよ(人じゃねえだろう。私)。

あまあま…だとは思うんだが…。



040402







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