せまくら



















屋根に座り込んで、城下に広がる森を見ていた。
面を外した瞬間に、深緑を吹き抜ける風が頬を撫で、髪を揺らす感覚が心地良い。
緑の匂いの風を胸一杯に吸い込んで、非番となった今の全身の緊張感を弛緩させる。



「あ!いたいた。」

直後、背後から掛けられた声に振り返り、反射的に手元の面を手繰り寄せようとするも適わず、それは一足早く主の手に落ちてしまった。

「若!?今はお勉強のお時間では…?」
晒された素顔の羞恥心に耐え切れず、小首を傾げて頬に掛かる髪で表情を隠しながら、おずおずと告げる。
この人はどうせまたきっと逃げ出して来たのだろうと、安易に想像はつく。
皆今頃、逃走した主を探し回っているに違いない。

「いいの、いいの。たまには息抜きもしないとネ。」
その逃走劇はいつもの事じゃないかと、従者は思う。

彼は言いながら、取り上げた面を懐に仕舞い込んでしまう。
これでは、彼がそれを意図的に返却してくれるまで、傍を離れられないと言う事だ。



「さてと。じゃあ、昼寝するから見付かっちゃったら教えてネ。」
困り果てて沈黙するランファンを尻目に、主はその背に体を預け、あっという間に眠りに入ってしまった。

「え!?…あの…っ若!!」
背中越し、表情の見えないリンに慌てて声をかけるが、当然それに返事が返される事はなく。

「おやすみ、ランファン。」
一方的な言葉を投げかけられる。

受け取った言葉を抱き締めて、囚われた面を口実に。
身も心も、鮮やかに囚われたまま、午後の陽射しをなぞる風に、暫し髪を遊ばせる。














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6〜9月の拍手SS。
膝枕シリーズだった筈なのに、リンランは膝枕にならず背中枕…。

でもまあ、それはそれで、その方がらしくて良いと思ったのです。


本誌再登場前に書いてたのか…渋いな…自分。



080923









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